第49話「ありゃ酷い」
「嘘、なっ、なんでぇ……」
「エス」
こっちを向くガルシア様とお嬢さんみたいな何か。人がちょっと外で仕事してる間に、どうやら城内は大変なことになっていたらしい。
至る所で兵士はぶっ倒れてるし、発情してるし。新手の同人誌かと思った次第だハイ冗談ですー。
王様ぶっ倒れてるしなあ。ツンツンしていいかな。
「ガルシア様、その子は?」
「魔物」
「ふむふむ」
やけに甘ったるい空気が充満している。城中を満たしていた正体は、あの魔物の魔力だったみたいだ。納得〜。
王様はとりあえず後回し。オレは部屋中をぐるりと廻る。汚い空気を綺麗にしないと。
ゆっくり息を吸って、深く吐く。オレを中心に、青い波動が部屋全体を覆った。魔物の魔力は爆ぜ散って、元の空気に戻る。
「それで? 本物のお嬢さんは?」
ガルシア様へ顔を向けると、何やら厳しい顔で睨んでらっしゃる。おー怖い。
魔物はどうやら気が滅入ってしまっているらしい。オレも少しは関係しているのかな? 彼女の顔はいつの間にか真っ青になっている。ブツブツと独り言が止まらないみたいだ。
「……今からこいつに聞く」
「オッケーです」
殺気こそダダ漏れているものの、彼の手つきは非常に優しい。身体自体はお嬢さんのものなのか。
魔物の動きを魔法で封じると、彼女はその場に座り込んだ。オレはその前にしゃがみ込んで、口角を上げて顔を覗き込む。
「お嬢さんはどこ?」
「近寄らないで! 触らないでえ!」
「ありゃ酷い」
「退け」
ガルシア様に退けられて、手持ち無沙汰になっちゃった。それにしても、この状況。王の執務室で部屋の主は気絶したまま、大の男二人組が女の子を脅してる図ってのは……う〜んあんまりよろしくない。
「それじゃ、オレは城中キレイにしますかね。ガルシア様ー、後は任せましたよ」
お偉い黒魔道士様は一瞬こっちに視線をやったが、またすぐに魔物に戻した。何か言いたいことがあるけれど、それは後って感じだ。
オレは頭の後ろで腕を組んで、ぶらりと廊下に去っていった。
ガルシア様ならパパッとお嬢さんを救えるだろうしねー。暴走もするだろうけど。
あっ。
「解決したら、もしかしなくとも給料アップ?」
そう考えると満更でもない。オレは足取り軽やかに、労働に励むことにした。
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