第5話 初恋を忘れて頑張る事にした



 衝撃的な再会を果たして、数日。


 初恋を引きずったまま護衛騎士となったフェイは、同僚少女の励ましもあって少しづつ意気を取り戻し、日々の任務に精を出していた。


 その仕事内容は様々だ。


 浄化巫女の護衛や、付近で起こる事件の解決、彼等がいる街で行われる催し物の参加などもそれにあたる。


 だが、こなす任務がどれも大掛かりなものかと言えば、そうでもないものもあった。






「だからって迷い犬の飼い主探しをする事になるとは思わなかったが」

「驚くな。私もだ」


 フェイとリシアの今回の任務は、間近に迫っている街での祭りに備えていた。

 その際の警備シフトを詰めるために、コースを練るために街へと出ていた。そこでフェイ達は、迷い犬を見つけて飼い主を探す事になっていたのだ。


 彼らは護衛騎士であるが、公務でホムラが外に出ない時は、通常の仕事をこなしている。


 一般の騎士の任務にも危険はつきものだ。

 急な欠員が出る事が多いので、護衛といっても小さな任務に駆り出される事も少なくはなかった。


 だが、迷子の捜索や、犬の飼い主の捜索も立派な仕事の一つだとフェイは考えている。


 予想外ではあるものの、困っている人間がいればそれがどんな大きな事でも、そんな些細な事でも分け隔てなく手を差し伸べるのが、騎士という存在だと考えていた。


「わんわん!」


 フェイ達が連れている犬に首輪はついている。

 人に慣れている気配もあり、飼い主がいないはずはなかったが、二人がどれだけ捜してもそれらしい人には巡り合えなかった。


「正直言えば、騎士らしくない仕事だけどな」


 フェイがため息と共に愚痴をこぼせば、それについてリシアが言葉を返す。


「でもだからって放っておくなんて、できない。だろ?」

「まあ」


 リシアの言葉に同意するフェイ。

 そんな騎士二人は他人から評すれば、かなりのお人よしであった。


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