第3話 初恋の少女が悪女になってた
およそ十年後。
たくましく成長したフェイは、同じように年月を経てすっかり女性らしくなたホムラ・エルミアを前にして絶句していた。
「……」
フェイは、彼女の巫女の任務の途中に起きたトラブルの影響で倒れてしまった者達を目の当たりにし、その場からすぐに離れたいと言い出した少女を見つめる。
信じられないと言う表情で。
「本気で言ってるんですか……エルミア様」
「ええ、そうよ。貴方は私を、私だけを守っていればいいのよ。他の人なんて、どうなったって関係ないわ。死んだって別に関係ない」
少年の知る少女はいなくなってしまった。
時を経て再会しホムラ・エルミアは、性格のねじ曲がった悪女へと変貌してしまっていたからだ。
ホムラ・エルミア
彼女は世界の平和を担う巫女であった。
混沌も恐怖も存在しないようにと、この世界エヴェリアースから不純物を取り除く役目……浄化巫女だ。
巫女の力は代えが効かない。
先代が亡くなれば、その力は数年後に最も適任である一人だけに受け番えるのだから。
だから、彼女の命は誰よりも重く、尊かった。
ホムラ・エルミアは幼い頃にその才能を見出され、そして巫女である為の教育を受け続けた。
来る日も、来る日も。
そうして巫女たらんと努力し続けた彼女が十代半ばの歳まで成長した頃には、純真だった彼女の姿はなくなり、代わりに残ったのは我が儘放題で育った、増長しきった悪女だった。
彼女は、任務でさまざな地方を訪れ、通常の浄化の仕事と並行して、厳しい環境にいる者へ姿を見せ、声をかけ、励ましていく。
だが、その任の最中、十数年前まで敵対していた隣国の兵士の攻撃を受けてしまった。
その際に彼女を守ろうとした多くの護衛が倒れる事になったのだが。
「彼らの手当てより、この私を避難させる方が先ではなくって?」
「本気でおっしゃってるんですか?」
その時、護衛の騎士として傍にいたフェイはその言葉を聞いて、大きなショックを受けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます