所詮ラノベ主人公のようにチートなんてもらえない~だからラック999で闘います~

風白春音

プロローグ

 今日も14歳の俺はチートじみた人物の偉業をニュースで聞かされ、うんざりした気持ちで一階に行く。一階では父と母がそして姉が俺を無視して朝食を食べている。同じ遺伝子なのに見下される俺と、賞賛される姉。一体俺が何をしたのだろうか。朝食を食べ終え、俺は重い足取りで家を出た。


 俺の名前は羽山夜羽山ナイトこのキラキラネームのせいでも虐めを受けた。今日も学校まで重い足取りで行く途中、一人歩いていたら後ろから誰かに押され赤信号の車が通る中に突っ込んだ。


 「誰か救急車を」


 聞き覚えのある声が救急車を呼ぶ。その聞き覚えのある声の主は俺を虐めていたリーダーだ。俺をわざと押しやがった。俺は運悪く大型トラックに轢かれた為即死であった。運すらも味方しないチートなしの男だ。



 「ここはどこだ? ああ俺は死んだのか?」


 「そうですね死にました」


 俺はびっくりして思わず声を上げた。


 「うぉぉ、誰だあんた?」


 そこにいたのは水色のロングヘアーの美少女だった。瞳の色も綺麗なブルーで今にも吸い込まれそうな程の美しさだった。


 「悲しいですね。あなたは無残にも悲惨な死に方をしました。しかし運良く流行りの異世界転生者に選ばれました」


 は? 意味が分からないんですけど。なにいってんのこいつ?


 「流行りって何?」


 「いやーナイトさんの世界にラノベってありますよね。よく異世界転生物の作品があって人気を集めてるじゃないですか。現実に存在するんですよ」


 「ここあの世だよな?」


 「そうでしたね。でも一応現実です。それでナイトさんは見事異世界転生者に選ばれました。パチパチパチパチ」


 「名前で呼ぶのやめてくれる、恥ずかしい。それとやる気のない拍手どうにかしろよ」


 全く何だこいつ? このまま静かに眠らしてもくれないのか。


 「で? チートでもくれるわけ。だったら異世界でハーレム築くわ」


 「それが残念ながら人並み程度しか与えられません。チートは所詮フィクションですよ」


 「なめてんの? そこは現実でいいだろうが」


 俺は怒鳴った。いや当たり前だけどそこはラノベのテンプレ展開でいいじゃん。何で転生して人並みなんだよ。チートくれや。


 「でもでも前世のナイトさん(笑)に比べたら十分ですよね(笑)だって人並み以下が人並みになるんですから」


 いちいち人を小馬鹿にする態度がめちゃくちゃ腹立つ。死んでも馬鹿にされる人生って俺ぐらいだろ。


 「ああもういいよ静かに寝かせてくれ。転生したくないわ」


 そりゃそうだ。世のラノベはチートがあるからハーレムを築けるし、賞賛を浴びる。そしてそれを読んだ読者も憧れる。しかし読者よ覚えているんだ。これが現実だぞ。チートなんて貰えない。人並みの能力が与えられるだけ、俺だからグレードアップだが、普通の凡人は凡人のまま転生させられるだけだぞ。無駄に退屈で苦痛な人生を二回歩まされるってどんな罰ゲームだよ。


 「取り敢えずあのゲートから異世界転生してください。じゃないとあなたの体を爆破します」


 は? いやいやいや俺に拒否権はないのかよ。それに爆破ってふざけるな。絶対痛いだろうが。


 「走れ走れナイトさん。頑張れー(笑)」


 俺がゲートに向かって懸命に走る中、一人俺を小馬鹿にする女神がいる。いつか絶対ぶん殴ってやる。俺は今日初めて生きる意味を見つけたのかもしれない。


 ゲートを潜るとそこには広い広い大きな綺麗な世界が……なかった。


 俺はこの日意味も分からず転生させられ、異世界冒険最初に起こしたアクションは森の中に落ちて死なないように受け身をとることだった。


 「いつか私を殴るため強くなってくださいね。って無理ですよね(笑)凡人ですから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る