こちら、幸福安心委員会です。女王様とHappinessな春休み

亜夕@宙姫

〜・プロローグ・〜 女王様は道化師の相手に忙しい。

【サイレン女王】中央電波塔・最上階


私はみずべの公園市国の絶対女王サイレン、幸福と安心だけが義務なんです。

そんな全てを管理する絶対女王の私は、今瞼を伏せて少し休憩しつつ、予定の時間まで待っているんです…。今の季節は桜の花が咲き誇りこのみずべの公園市国が湖のシアン色だけの世界から、薄ピンク色の花化粧をした木が輝く華のある美しい理想郷に変わっているんです、それもあってかどこの学校も卒業式というお祝いの日を迎えている…私はそんな卒業式と言うものが始まるのを待っていたんです…。


「長い待ち時間ね…。」

「指定時間は、学校側の問題であり、そこまで私たちが監視する必要は無いのです。」


いきなり自分の後方から聞こえた声にピクリとしてしまう、目をゆっくりと開き振り向こうとしたけれど動くことが出来なかった…理由は振り向けぬよう誰かに抱きしめられたから、…青と黒の燕尾服の袖が通っている腕が私の体と腕の自由を奪っている、この青と黒の燕尾服の袖を見れば誰が後ろにいるのかは分かる、道化師キューレボルンだ…。


「ど、道化師キューレボルン…な、何をするよ…。」

「このようにされた女王陛下はどんな反応をするのか少しばかり気になりましたもので…驚かせてしまったのでしたら申し訳ございません。」


情報体とリンクしてなら何度かこんな展開があったかもしれないけれど実際に体感するのは初めてで少しだけ身を震わせた、まだキューレボルンが抱きしめてきている為温かさや香りなどが直に感じられる、良くも悪くもあるこの現状に私は少しだけ混乱してしまいそうなんです……。


「あ、あなた…ね、私を誰だと思っているのかしら?……私の権限で処刑してあげてもいいのだけれど??」


私は、旋回していた浮遊モニタを伸ばせるだけ手を伸ばし手に取り処刑用アイコンを素早くタップして処刑アイコン「絞首」に触れようとするといつも通りにわざとらしく慌てて私からさっと腕を離し離れるとアイコンを触れようとしている私の目の前に回り込みストップとでも言うように手のひらをこちらに向けてくる。


「大変申し訳ございません!1ミリ程度の出来心でありまして……そんなことより!我らが女王陛下、お楽しみの最中でしたのでは??」

「あら、そうだったわね?と言うか、道化師キューレボルンいつから此処にいたのかしら?この私が気付かないなんて珍しいわね……。」

「女王陛下のことですからお気づきになられているのかと思いました。」

「いいえ?全然気づかなかったわ…だから余計に気に食わないのだけれど?」

「本当に申し訳ございません、何度お詫びを申し上げても足りないほどです……私は女王陛下の道化師でございます故何卒ご慈悲を…。」

「もういいわ、気にしないことにするもの。」


私は、少しだけ冷たく見据えつつ呆れたように溜息をひとつついて、翠川初音オンディーヌ〈01-39 〉を使っての監視に戻る、キューレボルンはどこかへ行ってしまった?でも私には関係の無いことだろう、私は好きなことをしつつもみずべの公園市国の全市国民の幸福と安心の管理もしているんですから、問題など1ミリもないんです。

それにしても最近少しだけキューレボルンの様子がが変なんです、さっきの事もそう私にあんな事をしたらどうなるのかキューレボルンなら分かるはずなのだけれども…何故キューレボルンはあんな事をして来たのだろうか、それが何故なのかこの私が、分からないんです…彼は掴みどころがないし思ったことを正直に言うことも素直な一面なんて期待出来ないはず、だけれど少し気になるんです…。

もし、私があのイエローマーカー黄波 漣に向けている寄せている、気持ちや思い、感情をキューレボルンが私に向けているのだとしたら…?どちらかに絞らなくてはならないかも?選択肢を迫られる場面なんて私にはあまりないと言うかあるわけもない、選択肢を与えるのは私の方だもの、でもこればかりは、私が選択をしなくてはならないのかも、どちらを選べばいいのだろう?でも今私は情報体とイエローマーカーの方に集中したいんです、ただ、その為にキューレボルンの気持ちを探ることも彼の思いを尊重することが出来なくなってしまう、それは、私の幸福義務が許さないはず!私の選択がキューレボルンにとっての不幸になってしまったら?不安になってしまったら??そんな事になったら私自身が私の存在理由である義務を破ることになるのでは?それはありえないんです、だからこそ幸福義務そのものである私はキューレボルンの事も気にかけるんです。

みずべの公園市国全体が完璧に幸福で安心できる理想郷であるのは、私が全てを管理しているから、だからこそこのみずべの公園市国全体が幸福で安心出来なくてはいけないのです、私にはそれがよくわかっているんです、1人でも不幸で不遜で不満な者を放置するべきではない、1人でも小さな不幸を持つ人を増やしてはいけない!

だからこそ私は存在する、1ミリの不幸すら見逃さない、そして見つけたら即摘み取るそれが義務。


でも、不幸分子も不幸分子でひとつの必要性があるんです、ただそれを知っているのは、私だけでいいんです、私以外には分かるはずもないし知る必要もないんです。







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