EP22 Beautiful World

古くび付いた廃城。


辺りには何もなく広々とした草原の中にポツンと建っていた。


城壁には茨がまとわり付き、城はいびつな雰囲気をはなっていた。


そこに少女は居た。


ちた城に似合わぬ純白のドレスは神々こうごうしく、割れた窓を伝ってきた風に全身をでられた姿は一層いっそう美しかった。


少女は両手で護る様に蒼色の鍵を握っている。


居たのは少女だけではない。


目の前に居る鎧姿の男は少女へと迫る。


「頼む......渡してくれ」


「どうなっても構わないの?...この世界が無くなってもいいの?」


優しい声とは裏腹なその言葉に男は躊躇ちゅうちょした。


「......この世界は綺麗かな?」


男は悲しい表情で言う。


その問いに少女はうなずく。


「もちろん綺麗だわ、空も大地も自然も人も全てが美しいもの、本質を見ようともしない貴方に何がわかるのかしら」


「本質を見抜いたからこその決断だとなぜわからないか」


「いいえ見抜いてないから言えるのよ......この鍵を使って、あれを開いてしまえば、この世界はどうなると?」


男は間もなく言った。


「きっと秩序ちつじょたもたれる世界が誕生するだろう」


そう言った男はボロボロと両眼から涙を流していた。

何を悟ったのか少女は鍵を男へと差し出す。


「ありがとう、本当に...ありがとう。次こそこの城もそのドレスの様に、そして世界は君の心の様に美しくある事を......願うよ」


男は手のひらに収まる程の箱に鍵を挿す。


箱からはまばゆい蒼光が放たれ辺りを飲み込む。








光の中から少女の声が微かに聴こえた気がした。


「十分この世界だって美しかったのよ......」






でもまた私を見つけ出して____

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