第38話 七面鳥と猿のいる庭
これで無料とは、なんて贅沢な……!
と、いつも感嘆するのが、田端文士村記念館です。
決して派手な装いではないのですが、抑えるところは抑えていて、気付けば滞在時間が予定オーバーになっています。
こちらは、公益財団法人北区文化振興財団が運営している文学館です。
公益財団法人北区文化振興財団のホームページには、田端文士村記念館について以下のように説明があります。
「田端に暮らし、集った文士や芸術家の功績を通じて「田端文士芸術家村」という歴史を後世に継承していくことを目的に設立。
文士芸術家たちの作品などを展示するとともに、催しなどでその功績や暮らしぶりなどを紹介しています。」
田端には、文学者のみならず芸術家も集っていました。
親睦団体のポプラ倶楽部という団体もありました。
芥川龍之介が結婚披露宴をした天然自笑軒という料亭もありました。
年表を見ると、明治の終わり頃から昭和初期まで、実に多くの芸術家や文学者が住んでいたのがわかります。
さて、今回は、金沢出身の作家室生犀星と、その幼馴染の彫刻家吉田三郎の企画展へ行ってきました。
子どもの頃二人は、夏になると褌一丁になって犀川でゴリとりに夢中になっていたという微笑ましいエピソードから、今回の展示の解説パネルには、ところどころにかわいらしいゴリの絵が描かれていて、ほのぼのとした雰囲気が醸し出されていました。
と、ある一枚の写真の前で、思わず足が止まりました。
その一枚は、犀星の幼馴染の彫刻家吉田三郎の田端の住まいでの家族写真。
草深い庭での一枚です。
なんと、そこには、七面鳥が!
にわとりやひよこ、伝書鳩、うずらではなく、七面鳥が……
その写真には見えなかったのですが、猿も放していたのだそうです。
彫刻のモデルとして。
いつぞや、飲み屋さんにペンギンがいるのは見たことありますが。
七面鳥はさすがにありません。
つつかれたら、痛そうですよね、七面鳥。
実際は、ペンギンの方が傷が深そうですが。
そういう問題ではありません。
当時、クリスマス料理は、チキンより七面鳥がメジャーだったんでしょうか。
七面鳥がクリスマスのごちそうになったのは、イギリスの作家チャールズ・ディケンズ作の『クリスマス・キャロル』からと一説に言われてますが、日本語訳の『クリスマス・カロル』(森田草平訳)の出たのが1926年・昭和元年なので、七面鳥料理の存在は当時知られてはいたのですよね。
そういう問題でもありません。
モデルとして放されていたんですから。
展示品の中に、七面鳥も、猿もいました。
駝鳥もいました。
駝鳥、はさすがに、動物園かどこかで見たものでしょう。
展示を見て、犀星の本を読み返してましたら、金沢に行きたくなりました。
秋の風は、旅心をくすぐります。
金沢の宵の口、ゴリの佃煮で一杯いきたいものです。
田端文士村記念館訪問記
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882605676/episodes/1177354054885487528
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