第32話 「アンティーク着物万華鏡 大正~昭和の乙女に学ぶ着こなし」展

 遠出を控えざるを得なかった猛暑の夏。

 お久しぶりの知人から連絡をもらい、会おうということになり、街へ。

 訪れたのは、弥生美術館で開催中の「アンティーク着物万華鏡 大正~昭和の乙女に学ぶ着こなし」展です。


 弥生美術館は、面白いテーマの展覧会をやるので、以前から時おり訪れています。

 アンティーク着物の展覧会では、三年前に「谷崎潤一郎文学の着物を見る」展もとてもよかったです。

 モダニズムおしゃれと文学と、アンティーク着物と挿絵と。

 異世界に転生しなくてもいいので、大正浪漫、昭和モダンの世界にはいってみたいです。

 もちろん、政治経済的な世情はおいといての、イメージとしての浪漫モダン世界です。


 展示は工夫がこらされていて、見応えがありました。

 スタイリストさんが、抒情画に描かれているアンティーク着物を、そのまま再現したものと、着物は同じで、帯や半襟、帽子にバッグ、靴などの小物の取り合わせを変えて、洋服のような着こなしの変化を楽しませてくれました。


 美術館では、写真撮影NGのことが多いのですが、弥生美術館では、毎回、撮影スポットが用意されています。

 今回も、階段を上がって二階の踊り場に、等身大パネルが置かれていました。

 記念撮影スポットです。


 今回のパネルは、高畠華宵画の「ニューファッション」でした。

 再現マネキンも展示されていました。


 断髪に薔薇の花を挿し、タンクトップのようなものを着物の襟もとにのぞかせて、真珠のネックレスが半襟の代わりに首まわりを飾ります。

 からだの前でゆるっとしめた帯締めは、片リボンで端を長く垂らし、袖の先端にはフリンジが揺れて、着物の丈はつんつるてんの浴衣のようなひざ下丈、足元にはハイヒール、手には日傘代わりの唐傘と、ミスマッチもここまでくれば新しいのかもしれません。

 

 これはぜひにと、自撮りをしようとしたところ、知人が撮ってくれました。

 二人で行くと、撮影スポットで撮ってもらえるのがいいですね。

 自撮だと腕の長さ分しか画面におさまらないので、全身が撮れないんですよね。


 二階には着物を触って生地の感触を較べられるコーナーがありました。

 「これは、しゃり感がある」「こっちのは湿気を吸ったような重みがある」「セルかな、ウールかな」「絹かな、麻かな」などと言い合いながら、二次元の資料だけではわからない触感の世界を楽しみました。


 途中、見覚えのあるインバネスコートがあったのですが、それは金沢の徳田秋聲記念館で見たものでした。

 特別貸出で展示されていたようです。


 三階では「長襦袢の魅力」展が同時開催中で、長襦袢をはおって記念撮影ができるようになっていました。

 海外映画でガウンのようにはおってるのを見かけますよね。

 長襦袢は、カラフルで大胆な柄だったりするので、背の高い人がはおると映えます。


 建物の中でつながっている竹久夢二美術館の展示では、大正浪漫時代がアールデコの時代に重なることもあり、幾何学模様やストライプ、格子縞などの着物を着こなした夢二美人が多く描かれていました。


 さて、観覧の後は、併設されている夢二カフェ港やへ。

 展覧会にちなんだメニューをいただくことに。

 一目見て、これでしょう! と今回選んだのは、「ニューファッション」です。

 当時の最先端着物コーディネートをイメージしたドリンクです。


 このドリンクには、ちょっとした仕掛けがあります。

 ロンググラスの下方にはカルピスホワイト、そこから、しゅわしゅわっとサイダーのさわやかさとともに、ハーブティーのバタフライピーのブルーへと色合いが移り変わってゆく様には、元の着物の色彩が見事に表現されています。

 そこに、添えられたレモン果汁を垂らしますと、さぁーっとブルーからピンクへと変化します。

 マジカルドリンク、ニューファッション、さわやかで不思議なドリンクでした。


 弥生美術館の次回展覧会は「創刊65周年なかよし展」、竹久夢二美術館は「レトロかわいい楽譜表紙イラストレーションズ」です。


 展覧会のチラシに『なかよし』の表紙が掲載されているのですが、同じ月刊少女マンガ誌でも『リボン』とは雰囲気が違うなとの印象を受けました。


 「リボンの騎士」「美少女戦士セーラームーン」「魔法騎士レイアース」「カードキャプターさくら」、みんな『なかよし』だったんですね。

 キラキラしてますね。

 頑張る女子主人公?!

 元気もらえそうです。



 





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