第24話 文月ふみの日
かつて、手紙をよく書いていていました。
今でも、時おり書いています。
絵はがきやレターセットは、送る相手を思い浮かべて選んでいます。
出先の土産物店では紙ものからのぞきお気に入りを求め、土地おりおりの手漉き和紙などをお土産にいただくと心の中で小躍りしています。
簡便さでは得られないもの、その一つに紙の手ざわりがあります。
手漉き和紙の手ざわり。
紙の厚さ、薄さ、指へのひっかかり。
明かりに透かして何が見えるかつい確認してしまいたくなる透きとおるような一葉の手わざ。
イタリアの旅土産のマーブル模様のレターセットは、眺めるために手元に置いてあります。
いずれ永遠の旅立ちが近づいたら、親しい人たちに一筆したためようかと。
その頃には、縁の黄ばみが、経年を語ることでしょう。
7月23日はふみの日です。
23=ふみ=文、という語呂合わせからだそうです。
陰暦7月が文月とのことから、文月ふみの日とも。
1979(昭和54)年にかつての郵政省が制定した記念日です。
手紙を通して文字文化の継承を、というのが主旨とのことで、記念切手をはじめとしたイベントが開催されています。
さて、レターセットボックスにしまってあった中から、いくつかお気に入りを紹介します。
訪れるたびに立ち寄って、絵はがきを、便せんを、封筒を求めた鎌倉小町通りの社頭。
桜吹雪に、あられ散らし、升目模様の薄手和紙は、写真を包んで同封するのにもよく使います。
湯布院亀の井別荘鍵屋の小ぶりのオリジナルレターセット。
和紙の封筒の裏紙のパステルカラーがかわいらしいです。
文具屋さんではないお店のオリジナルレターセットをもう一品。
京都四条の和装小物井澤屋の「鈴の音」。
和紙に愛らしいころんとした鈴が描かれています。
夏の襟元で汗を受ける、ガーゼ手拭いの鈴の柄とお揃いです。
これらのオリジナルレターセットは定番かと思いきや、いつのまにか店頭から姿を消していることがままあります。
よって、見つけた時に手元に置きたい、欲しい欲しい、の心が疼きます。
大正モダンの時代に創業し、与謝野鉄幹・晶子夫妻が名付け親の銀座の画材屋月光荘。
折りたたみ式の封筒の糊しろ余白にメッセージの遊び心。
こちらは今でも入手できます。
明治・大正・昭和時代の出版物の美術作品や挿絵コレクションで知られる都内文京区の弥生美術館代表は、美少年・美少女画で知られる画家
華宵の描く、なよやなかで物憂げな瞳の美少女をお手元にとお思いの方は、美術館を訪れた際に、ミュージアムショップをのぞいてみてください。
いただきものからは、絵はがきと便せんをご紹介。
一点は、大阪市北区中之島の大阪ビルヂング本館通称ダイビルの絵はがきです。
大阪名品喫茶「大大阪」オリジナルです。
大正モダニズムとネオロマネスクの融合した、威容を誇るビル建築が画面いっぱいに描かれています。
ダイビルは一度解体されましたが、現在は復元再建されています。
もう一点は、北海道函館市の天使の聖母トラピスチヌ修道院の便せんです。
「幸せを託して」と題された便せんには、教会の尖塔、鈴蘭やコスモス、白鳥などの可憐なイラストと聖句が描かれています。
そういえば、寺社仏閣では、絵はがきはあってもレターセットはなかったような気がします。
見かけたことのある方ご一報を。
以前見かけた和菓子屋とらやの絵はがきには、和菓子のデザインが描かれていました。
さて、そろそろ梅雨明けでしょうか。
―― 玉づさを 結ぶ常夏 こぼれ露 ――
暑中見舞を送るのも届くのも、待ち遠しい文月です。
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