第21話 ミューズ・コーラス・ウォール

 「クリムト展 ウィーンと日本 1900」へ行ってきました。


 ウィーン世紀末を彩った画家として知られるクリムト。

 クリムトといえば「ダナエ」が思い浮かびます。

 黄金の雨に化身したゼウスと、人の子の交感。

 ギリシア神話をモチーフにした官能的な作品です。


 今回の展示作品の中では、「ベートーヴェン・フリーズ」という壁画作品が印象的でした。

 この作品は、1902年に開催された音楽家のベートーヴェンを称える展覧会「第14回分離派展」で展示されました。

 この分離派とは、クリムトが座長となって当時の画壇から独立して立ち上げた実験的な芸術家集団ウィーン分離派のことです。

 ベートーヴェン作曲の交響曲第9番が響き渡る中、黄金の甲冑をまとった騎士が、困難を乗り越えて楽園へと到達する旅路が、絵巻物として展開されています。


 本展では全長34メートルを超える作品の原寸大複製が展示されていました。

 実際に展示されている分離派会館と同じ構造の空間を作り、同じように展示されていました。


 左側の第1面は「幸福への憧れ」、正面中央の第2面は「敵対する勢力」、右側の第3面は「歓喜の歌」。

 この第3面に、騎士の旅路の終着点として、男女の抱擁が描かれています。

 そして、その左側に居並んで、声高らかに歓喜の歌を合唱しているのは、詩の女神――ミューズ——たちです。

 居並ぶさまは、女神の壁のようです。


 ミューズの合唱団の壁。


 その壁は、外界の夾雑物を遮断し、その壁の向こうで、あらゆる創造が行われるのです。

 

 ミューズの合唱団の壁――ミューズ・コーラス・ウォール、ファンタジーやカードゲームの守備魔法でありそうですね。

 


 展覧会の概要についてはホームページでご覧いただけます。

 巡回展として、次回は、7月23日(火)から豊田市美術館で開催されます。


 「クリムト展 ウィーンと日本 1900」

 https://klimt2019.jp/





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