第610話 収穫祭の変化
毎年秋に行われている要塞村の収穫祭。
年々規模が拡大し、特に近年は魔導鉄道の開通によって規模がさらに拡大。来訪する人の数もさらに増えることが予想されていた。
これに対し、要塞村だけでなくセリウス王国のバーノン王自身が直接動き出す。
国王からの伝言を届けに要塞村にやってきたのは魔導鉄道の件で長らくトアたちと付き合いのあるスタンレーだった。
魔導鉄道の責任者であった彼は完成後に現場を離れ、今は外交大臣秘書として忙しい毎日を送っているという。
「まさかこのような形で再び要塞村を訪れることになるとは……分からないものですね」
「こちらとしてはいつでも大歓迎ですよ」
久しぶりの再会を喜びつつ、村長室で話し合うこととなった内容とは――今年の収穫祭を要塞村だけに任せるのではなく、セリウス王国としても協力をしたいという申し出であった。
「バーノン王はトア村長の負担をとても気にされています。なかなかおひとりですべてをフォローするのは難しいでしょう?」
「それは確かにありますね……」
実は昨年からそういう懸念はあった。
そのため、今年はローザやケイスの提案もあって村でも実行委員会を設置し、全員で運営をしていこうとなったのだ。
しかし、それでもやはり不安は拭えなかった。
なのでバーノン王が協力をしてくれるというのはとてもありがたい。
それがトアの本音だった。
「昨年の収穫祭は他国からも評判がよくて、今年はさらに来場者が増えそうですからね。こちらとしてもすぐに対策チームを結成し、要塞村の実行委員と連携を取っていきます」
「分かりました。よろしくお願いします」
これにて交渉成立。
他国からも人が来るとなれば、ここは信頼できるセリウス王国の人々に頼もう。
トアは素直にそう思い、バーノン王からの伝言を受け取った。
「今年の収穫祭は例年以上に賑やかとなりそうね」
「世界中からいろんな人が集まるんだから、こっちもおもてなしの準備をしなくちゃ!」
「わふっ! クラーラちゃんの言う通りです!」
「ふふふ、頑張りましょうね」
エステル、クラーラ、マフレナ、ジャネットの四人も気合十分。
もちろん村長であるトアも実行委員長として盛り上げていくつもりだ。
「さあ、これから忙しくなるぞ」
暑さが和らぎつつある要塞村だが、収穫祭にかける村民の熱意はおさまることがなさそうだ
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