第397話 その後のエマとリラエル

新作をはじめました!


異世界転生×スローライフ×いちゃいちゃ!

そして「ざまぁ」も……? 


《無属性魔法って地味ですか? ~有能なのに「派手さがない」という理由で見捨てられた少年は辺境の領地で自由に暮らす~》



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是非、読んでみてください!



…………………………………………………………………………………………………





 エノドア鉱山の落盤事故後、ジャネットの母エマは要塞村に三日ほど滞在。

 その間、エマは他種族との交流を積極的に行った。


「ドワーフ族がいるというだけでも珍しいのに、それに加えてエルフ、銀狼族、王虎族、冥鳥族、モンスター、大地の精霊、人魚族、魔人族、魔虫族、自律型甲冑兵に幽霊少女にドラゴンにユニコーン……『信じられない』の一言だわ」


 感心を通り越して呆れ気味のエマ。

 だが、村民たちは種族の違いなどまったく感じさせず、互いが協力し合い、楽しく暮らしている。三日間の滞在期間で、エマはそれをさまざまな場面で目撃していた。


「噂には聞いていたけど、本当に驚くべき事実だわ」

「そ、そうなの?」

「世界をいろいろ旅してきたけど……ここまでいろんな種族がいる村は他にないわね」

「へぇ~」

 

 エマが滞在している間、ジャネットは母親にベッタリだった。

 ガドゲルの話では、もう三十年ほど帰ってきていなかったようなので、本当に久しぶりの再会となる。そのため、まだまだ話し足りないことはあるだろうし、こうして母に甘えられるのも、次がいつになるか分からないからという理由もある。


「…………」

「何よ、トア。ジャネットがエマさんにベッタリだから寂しいの?」

「っ! い、いや、そういうわけじゃ……」


 クラーラにズバリ核心をつかれて慌てるトア。

 

「まあまあ、トアには私たちがいるじゃない」

「わふっ! そうですよ!」


 トアを心配したエステルとマフレナが後ろから抱きつく。それを見て、クラーラは「しまった! 出遅れた!」と悔しがりながらも、真正面からトアの胸に飛び込んだ。


 そんな三人の大騒ぎを遠目で見ながら、ジャネットはうずうずとしている。


「ふふふ」

「えっ? な、何?」

「いいのよ、ジャネット。あなたも混ざってきなさい」

「!」


 見透かされていた、とジャネットは顔を真っ赤に染める。

 そんなジャネットに、エマは優しく語りかけた。


「私はとても嬉しいのよ、ジャネット」

「? ど、どうして?」

「だって、私が旅に出る前……あなたは部屋に閉じこもりがちだったから」

「あう……」


 トアたちの出会う前――ジャネットは引きこもりだった。

 ゴランと共に鋼の山へとやって来たトアに自分の書いた作品を読まれ、それからお互いに読書が趣味という共通点を見出し、要塞村で過ごし始めた。


 今となっては、この要塞村は、ジャネットにとって欠かすことのできない大切な場所となっている。


「あなたが鋼の山を出て、新しい生活を始めたとガドゲルから聞いた時は……正直、信じられなかったけど」

「お母さん……」

「とても大事な場所と――大事な人を見つけたようね」

「っ!」


 ジャネットの体がピンと伸びる。

 何十年と会っていなかったのに、さすがは母親だとジャネットはため息を漏らす。

 ――同時に、きちんと説明をしておかなければいけないとも思った。


「あの、お母さん」

「何?」

「私は……トア・マクレイグさんを愛しています」


 ハッキリと、言い切った。

 その真剣な眼差しを目の当たりにしたエマは、一瞬、驚きに目を丸くしたが、すぐに小さく笑って、ジャネットの肩へポンと優しく手を置く。


「なら、いってらっしゃい。あの子は人間でしょう?」

「はい」

「私たちと彼とでは寿命に大きな違いがある。……だから、少しでも長く彼といて、たくさんの思い出を作りなさい」

「…………」


 エマからの言葉を受けて、ジャネットは駆けだした。

 

「頑張ってね、ジャネット」


 娘の背中を見つめるエマの表情は、優しくもあり、どこか悲しげにも映った。


  ◇◇◇


 その日の夜。

 要塞村ツリーハウス。


「トア・マクレイグ……ホントとんでもない少年ね……」


 天使リラエルはベッドへ横になりながら、エノドア鉱山で起きた一連の出来事を思い出していた。


 神樹の加護を一身に受けるトア。

 その圧倒的な力――それは、この地上界では、彼に対抗できる人物などいないかもしれないと思うほどであった。


「……その分、危険なのよねぇ」


 寝返りを打ちながら、そう呟いた。


「この村はトア・マクレイグという圧倒的な存在のもとで成立している……もし、彼が死んでしまったら……今あるすべての戦力が暴走することだって……」


 そこまで考えて、


「まっ、地上界がどうなろうが別に関係ないけどね」


 あっけらかんとそう言うと、再び寝返りを打つ――と、その時、部屋の壁にかけたいくつかの絵が目に入った。それは、村の子どもたちが村民になった記念だとして送ってくれたリラエルの似顔絵だった。


「……まあ、あの村長が死ぬまでは見届けてやろうじゃない。それが終わったら、全部上に報告して、私は――だあっ! もう!」


 リラエルは頭まで毛布をかぶり、そのまま寝てしまった。

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