第395話 ジャネット母登場!④ 鉄腕の実力
フォルの打ち上げた「モンスター討伐完了」を知らせる花火は、すぐさまエノドア鉱山で待機している救出部隊へと伝わった。
「よし! これでモンスターはいない! すぐに岩を取り崩すぞ!」
鉱夫長シュルツの掛け声で、すぐさま作業は開始された。
――が、次の瞬間、鉱山一帯に地鳴りのような声が響き渡る。
「な、何なの!?」
「これは……」
動揺するクラーラとエステル。
「おいおい! まさか他にモンスターが潜んでいたっていうのか!?」
「そ、そんなはずは……」
「フォルのサーチ機能は万全」と、エドガーの言葉を否定しようとするジャネット――その時だった。
「エマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
どこからともなく響いてくる雄叫び。
その正体はすぐに姿を現した。
「お父さん!?」
真っ先に気づいたのは娘のジャネット。
直後、その場にいた全員が、その男の姿を捉える。
そう。
エノドア鉱山に、八極のひとりである鉄腕のガドゲルが、多くのドワーフたちを連れてかけつけたのだ。
「ローザ! エマはどこだ!」
「む? エマじゃと?」
「落盤事故に巻き込まれたらしい!」
「じゃったら、そこにある崩れた岩々の向こう側じゃ。ワシらはこれから撤去作業に――」
「分かった! 俺に任せろ!」
「……相変わらず、エマが絡むと人の話を聞かんヤツじゃな」
ローザの真横を駆け抜けていったガドゲルは右腕――鉄腕を大きく振りかぶる。
「ちょ、ちょっと! いくらなんでもガドゲルさんひとりじゃ無理よ!」
「そうだ! 俺たちも手を貸すぜ!」
「うむ!」
クラーラ、エドガー、クレイブが後を追うが、
「その必要はない」
「「「へっ?」」」
ローザがそれを止めた。
「お主たちは巻き込まれぬよう、少し離れた位置におった方がよかろう。――ガドゲルの邪魔になる」
「邪魔になるって――あっ!?」
どういう意味なのか尋ねようとしたクラーラだが、ガドゲルの鉄腕に起きた異変を目の当たりにして思わず叫ぶ。
「ど、どういうこと!? 腕の形が変わっているじゃない!?」
ガドゲルの鉄腕。
その正体は特殊合金による義手。
その義手は、まるで意思を持った生物のようにうねうねと動きながら形を変えていき、最終的には巨大なハンマーとなった。そのハンマーで、道をふさぐ巨岩を粉砕していく。
「す、すげぇな……」
「右腕の形状を自由に変えられる……あれも魔鉱石の一種ですか?」
あんぐりと口を開けているエドガーの横で冷静にローザへ尋ねたのはクレイブだった。
「厳密に言うと、それは違う。あれはヤツが独自に編み出した合金じゃよ。他の誰にもマネできん、ヤツのオリジナルじゃ」
「へぇ……さすがはガドゲルさんね」
同じく話を聞いていたクラーラが感心したように呟く。
「あの鉄腕を見ても分かる通り、ヤツが八極に名を連ねる最大の理由は、その武器開発能力にある。センスも技術も、間違いなく歴代のどのドワーフより上じゃろう。ワシの杖も、テスタロッサの大鎌も、イズモの刀も、すべてガドゲルの作品じゃしな」
ローザが手放しに誉めるものだから、周りの関心は全部そちらへ向けられていた。
ここで、エステルがある疑問を抱き、それを口にする。
「ところで……さっきからガドゲルさんが叫んでいる、『エマ』って誰なんですか?」
「ガドゲルの嫁の名じゃ」
「ああ、そうだったのね」
「んじゃあ、そのエマって人はジャネットの母親ってわけか」
「うむ。そうなるな」
「「「「…………」」」」
少し間があいて、
「「「「ええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?」」」」
ジャネット以外の全員が叫んだ。
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