第382話 新天地へ⑧ 八極
森を抜けて、遺跡を発見したトアたちはそこを目指して進んでいた。
凶悪なモンスターに出会うこともなく、順調に近づいていったが、遺跡との距離が縮まるたびに遺跡から異様な気配を感じ取っていた。
そして、遺跡へとたどり着いたトアが見た光景は――
白い羽が生えた女性と話をする茶髪の男。
暴れるローザとそれをなだめるジャネット。
その横では行方をくらましていたシャウナが必死に笑いをこらえている。
「な、何? この状況……」
「さ、さあ……」
「僕にもサッパリ理解できませんね」
まったくもって意味不明な状況に、トアたちは困惑。
だが、もうひとりの同行者――赤鼻のアバランチは違った。
「どうやら、お目当ての人物は見つかったようだな、ヴィクトール」
静かに語ったアバランチだが、トアたちには衝撃が走った。
そのうち、
「ああっ!?」
エステルが叫ぶ。
それもそのはず。
エステルはパーベルの港でクラーラとヴィクトールが戦っている場面を目撃している。だから、彼の顔を知っているのだ。
「まさか要塞村の村長くんと一緒だったとは驚きだな」
「吾輩としては、後ろで暴れておるローザの方が驚きだ。どうやってここまで来たのだ?」
いきなり話を振られたローザはビクッと体を強張らせるも、すぐに落ち着き、話を始めた。
「ワシらの住んでおる要塞村の地下に、古代遺跡があるんじゃ」
「あっ、もしかして、私が魔界に行った時と同じか?」
以前、シャウナはトアたちと共に魔界へ飛ばされた経験があるため、すぐにそれを思いついた。
「そうじゃ」
「だとすると……カーミラのやった転移魔法が影響した可能性があるな」
「ちょっと待て! カーミラも絡んでおるのか!」
「あっ」
「だから言っただろう、シャウナ。カーミラの名前を出すとややこしくなるって」
「すまない、ヴィクトール。私としたことが……とんだうっかりだ」
と、言いつつ、嬉しそうにしているところを見るとわざとカーミラの名前を出したんだろうなぁと思うトアたちだった。
「って、なんかもういろいろありすぎてよく分からなくなってきたな……」
「よく分からないのはこっちのセリフよぉぉぉ!」
完全に蚊帳の外状態となった天使リラエルが叫ぶ。
「なんなのよぉ! なんでここに天界人以外の存在がこんなわんさか出てくるのよ! ていうかどうやって来たのよ!」
「俺たちは魔界からだが?」
「魔界!?」
ヴィクトールがサラッと言い放った魔界という単語に、リラエルは激しく動揺する。
「聖域に何してくれてんのよ、あんた! 汚らわしい魔人族どもの魔力が紛れ込んじゃうじゃない!」
「慣れればそう悪くないところだぞ、魔界」
「そういう問題じゃないのよ!」
ギャーギャーと喚き散らすリラエル。
だが、彼女をさらに混乱させる存在が現れた。
「急に賑やかになったと思ったら……到着していたのね、ヴィクトール」
大鎌を抱えるダークエルフ――死境のテスタロッサだ。
「お主までここにおったのか!」
「えっ? ローザ? どうしてここに? ……まさか、シャウナ?」
「いやいや、私はまったく無関係だ。とても驚いているよ」
「あら、そうなの?」
「しっかし、八極がここまで一度に揃うことなんて、帝国との戦争以来じゃないか?」
「うむ。懐かしいなぁ。ローザよ、ガドゲルとイズモも元気にやっておるか?」
「昔と何も変わっとらん。……いや、ガドゲルについては親バカがひどくなっておるな」
「今からあいつらも呼べねぇかな。テスタロッサ、カーミラに連絡をしてくれ」
「了解」
「こらぁ! これ以上人を増やすな!」
「安心しなよ、天使さん。呼ぶのは人じゃなくてドワーフと妖人族と魔人族だ」
「あ、なら安心ね♪ ――って、なるわけないでしょ! しかも最後のヤツが最悪すぎるわよ!」
さらに収拾がつかなくなってきた。
しかし、さらに場を混乱させる存在が姿を現す。
「ほら! 私の言った通り、トアたちがいたわ!」
「わふっ! さすがはクラーラちゃん! ……って、なんだか他にもたくさん人がいるみたいですよ?」
「えっ? あっ!?」
やってきたのはクラーラとマフレナ。
リラエルは「また変なのが来たぁ!」と膝から崩れ落ちたが、クラーラの視線はそのさらに奥へと向けられていた。
「テ、テスタロッサさん……?」
「クラーラ……」
クラーラは剣の師匠であるテスタロッサとの再会を果たした。
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