第347話 第3回要塞村収穫祭⑥王子たちとの宴会
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女子陣とのデートを終えたトア。
今度は村長として、この祭りに参加する。
エステル、クラーラ、マフレナ、ジャネットの四人と共に、トアが向かったのはこの日のために用意していたVIPルーム。私服を身にまとう大勢の騎士たちが目を光らせる中、見知った顔がトアたちに話しかけてきた。
「お久しぶりです、トア村長」
「タキマルさん!」
舞踏会以来の再会となる、ヒノモトの武士――クラガ・タキマルだった。
「バーノン王子をはじめ、すでにみなさま揃って宴会を始めていますよ」
「早いですね!?」
要塞村の一室を、トアのリペアとクラフトを駆使して作りあげた豪華仕様の部屋では、早くも収穫祭に訪れた上流階級たちによって大盛り上がりとなっていた。耳を傾ければ、ドア越しに楽しそうな笑い声も聞こえてくる。
その笑い声へ導かれるように、トアは入室。
「お? ようやく来たな」
まず声をかけてきたのは領主チェイス・ファグナスだった。
「だっはっはっ!! 今日はトコトン飲むぞ~!!」
使用人たちも交えて、すでに出来上がっている状態のチェイス。その奥では、ケイスとバーノン、そしてジェフリーの三兄弟が静かに語り合っていた。
「バーノン王子!」
「やあ、トア村長」
「お久しぶりです!」
「お久しぶりです、ジェフリー王子。ヒノモトでの生活はどうですか?」
「いやぁ、毎日が勉強の日々ですよ!」
年齢がもっとも近く、現在はヒノモトで暮らしているため、他の兄弟に比べると会う機会の少ないジェフリー。だが、その様子を見る限り、ヒノモトでツルヒメと仲良くやっているようで安心した。
一方、今では要塞村の村医として働いている元第二王子のケイスは、エステルたちに話しかけていた。
「遅いじゃないの。……その様子だと、女の子たちとのデートは大成功だったみたいね♪」
「はい♪」
「わっふぅ! 時間の流れが凄く速く感じました!」
「ホントね。あっという間に終わっちゃったって思えるくらい楽しかったわ」
「私も同じです」
女子たちから好評を得ているトアの収穫祭デート。
ホッと胸を撫でおろしたトアであったが、次の相手はある意味、女子とデートするより緊張する。
特に、セリウス王国第一王子のバーノン。
順当にいけば、まず間違いなく、彼が次期セリウス王国の国王となる。
要塞村を気に入っており、トアの人間性も高く評価。トアが村絡みのことで城を訪れる際には、事前の約束を延期して話を聞くこともあるくらいだ。
今後の要塞村にとって、もっとも頼りになる存在といえる。
さらに、現在はヒノモト王国で暮らしている三男のジェフリー王子も、トアには「年の近い友人」というだけでなく、後々、セリウス王国を収めることが濃厚となっているため、こちらも頼もしい存在だろう。
王族の暮らしを捨て、要塞村で暮らすケイスも負けていない。
自分らしい生き方を求めて城を出た後、要塞村では医学の知識を生かし、医者として生活している。基本的に自由奔放な性格だが、村民たちからの信頼は厚く、本人も過ごしやすい場所だと、この村を生涯の生活拠点に決めたようだった。
「今日は本当に楽しい時間を過ごせた。感謝するよ、トア村長」
「僕も楽しかったですよ! また来年もお邪魔していいかな?」
「是非!」
「盛り上がっていますなぁ! 私も参加させていただきますぞ!」
楽しげに会話するトア、バーノン、ジェフリーの三人。そこへチェイスも参戦し、さらに盛り上がりを見せる。別の場所では、エステルたち四人にツルヒメとケイスを加えた女子(?)トークが同じように活気づいていた。
しばらくすると、収穫祭に訪れた国内の要人たちがこの部屋を訪れ、村長のトアに言葉をかけていく。誰もが収穫祭を楽しんだ、そのお礼をしに来ていた。
こうして、トアは知らず知らずのうちに、強力なコネクションを手に入れており、要塞村の名は一気に大陸全土へ知れ渡ることとなる。
――この数年後には、全大陸の国々が「ストリア大陸の要塞村」の名を耳にすることとなるのだが、それはもうしばらく先のことである。
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