第285話 グウィン族の秘密

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 グウィン族が屍の森へ住むようになって二週間が過ぎようとしていた。


 獣人族の村と要塞村の間に位置するグウィン族の住居であるテント群では、今日も精力的に狩りや家の仕事に励む姿が見られた。


 この日、トアはジャネットを連れてグウィン族の村を訪れた。

 グウィン族の人々とすっかり顔馴染みとなったトアは、挨拶を交わした人から村の様子を聞いたり、子どもたちの相手をしたりと、生活に溶け込んでいたのだった。


 トアたちは長のダルトーに会うため、彼のテントを訪れる。

 すると、ダルトーはテントの外で空を眺めていた。


「ダルトーさん、こんにちは」

「おお、トア村長」


 ダルトーは笑顔でトア、ジャネットと握手を交わし、「さあ、こちらへ」とテントの中へと招き入れた。


「さっき空を見ていたようでしたが、何かあったんですか?」

「いや、ちょっと……あの木を眺めていたのだ」


 ダルトーの言う「あの木」――それは間違いなく、神樹ヴェキラだ。


「神樹ヴェキラについて何か知っているのですか?」


 ジャネットが尋ねると、ダルトーは静かに首を横へ振る。


「あの木については何も知らぬ。――ワシが関心を持っておるのは、どちらかというと村長の腰にある物だな」


 ダルトーが指差す先にあるのは、トアの愛用する聖剣エンディバル。

 

「聖剣が? でもどうし――っ!?」


 話の途中で、トアはダルトーの身に起きた異変に驚き、声を失う。それはクラーラとジャネットも同様だった。三人の視線はダルトーの首元に釘付けとなっていた。

 光り輝くダルトーの首――にかけられた首飾り。

 

「魔力を注ぐとこうして反応するんですよ……ほら」


 トアの腰にある聖剣が、ダルトーの首飾りと同じ光を放っていた。


「な、なんなんですか、この光……」


 聖剣を作った張本人であるジャネットも、初めて見る光景にポカンと口を開けていた。


「まさか……その首飾りに使われているのは……」

「聖鉱石だ」

「「!?」」

 

 トアとジャネットは思わず顔を見合わせた。

 ダルトーは一度大きく息を吐いてから、話しを始める。


「我々グウィン族の中でも、ごく限られた人間だが……聖鉱石が眠っている場所を知ることができるのだ」

「せ、聖鉱石が埋まっている場所を!?」


 これにはトアも驚きを隠せない。

 本来、聖鉱石とは超激レアに属する魔鉱石。存在自体が眉唾物とさえ言われるほど採掘されない、まさに幻の存在だった。それを偶然手に入れた、領主チェイス・ファグナスの妻であるエニスが、サバイバル大会を主催し、優勝賞品としたのだ。

 その大会で優勝したトアが聖鉱石を手に入れ、ジャネットが聖剣を作りあげたのだ。


「感覚的なものなので、ハッキリとどこかという見当がつくわけではないが……限りなく近い場所は把握できる」

「っ! なるほど……どうしてプレストンたちが――フェルネンドがグウィン族を探していたのか、分かったぞ」


 グウィン族の持つ特殊能力。

 激レアの聖鉱石を見つけ出せる力――魔力を増幅させる効果を持つ聖鉱石で作った武器を量産できれば、少数でも大国の騎士団を圧倒する力を持つことができる。窮地に追い込まれたフェルネンドにとって、まさに起死回生の一手であった。


 ――結果としてグウィン族はセリウス王国でもっとも安全と言っていい要塞村の近くに移住することができたため、もう狙われることはない。


「でも、そんな重要な情報を俺たちに教えても大丈夫なんですか?」

「はっはっはっ! 君たちは信頼できるからなぁ!」


 高らかに笑いながら、ダルトーは告げた。

 屍の森で生活を始め、要塞村の人々との交流を経て、孤独な部族だったグウィン族は新たな船出を迎えた。ダルトーだけでなく、ココやサージもそれを喜んでいるのだと、トアとジャネットは伝えられた。


「それにな、トア村長」

「はい?」

「あの神樹という大木だが――あの木のある近くには聖鉱石が眠っているぞ」

「「えっ!?」」


 トアとジャネットは今日一番驚いた。


「神樹の近くに……もしかして、地下古代遺跡?」


 魔界ともつながる謎多き場所――要塞村地下古代遺跡。

 恐らく、ダルトーの言った場所はそこだろう。


 それが分かれば、今後の調査は大きく進展するかもしれない。


「いろいろとありがとうございました、ダルトーさん」

「これからも長い付き合いを望んでいる身としては、これ以上隠し事をしておくわけにはいかないからな」


 トアとダルトーは改めて固く握手を交わす。

 要塞村とグウィン族の絆はより一層深いものとなったのだった。

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