天神降臨
各地で大規模な戦闘が繰り広げられること約二十分。こちら側の戦線は一度として崩れる事なく着々と時間を稼ぐ事に成功していた。そして遂にその時は来た。
「伝令!儀式の準備が完了。戦場に投下されている
「来たか」
「急ぐぜ大神さん。彼方さんも痺れを切らしたのか明らかにやべぇ奴らが出てきてる」
「こちらも確認している。恐らくあれが各国の投入した主戦力級の冒険者達だろう」
その通り。ラブマシーンが新たに召喚した偽物達は今までの偽物達とは格が違った。単騎で戦線に乗り込んで来たかと思えばあっという間にこちらの防衛戦が切り崩され戦線がありえない速度で下がっている。こちらの加護持ちが引いた事を差し引いても異常である。
「“絶対命中”のウィリアムに“要塞”のハリー、おっとよく見りゃ“蜂針”のマリーまでいるじゃねぇか。最近話に出ないと思ったらそう言う事だったのか」
「鈴木、考察するのもいいがさっさと行くぞ。あのレベルの冒険者が出張ってきたのなら戦線は十分と持たないぞ。ラブマシーンの持つ【固有】項目にある混乱、挑戦、吸収の影響で奴は我々の行動を妨害する事はあっても阻害はしない。だからこそそこにつけ入る隙がある。この好機は絶対に逃せんのだ」
「へいへい。んじゃ飛ばしますんでしっかり捕まっててくださいよっ!『
◆◇ 【
「では、儀式の最終段階を実行します。大神さま」
「ああ」
儀式場の中央には陰陽のマークと五芒星、更に複雑な文字と紋様を幾つも組み合わせた巨大な陣が描かれている。そしてその中央には三つの見るからに高級感漂う木箱が並べられ、それらを囲むように神職の巫女や神官が十重二十重に並んでいる。
その中央に歩み出た大神は三つの木箱を開け、中身を取り出した。
先ず初めに取り出されたのは薄緑色の剣。
それは以前亮一郎が仮契約として貸し出された日本国が保有する最高峰のアイテム【神器】が一つ【No.003 神蛇尾神剣 ムラクモ】である。
「予め行われた契約により大神様を所有者として本契約が行われます」
《神器【No.003 神蛇尾神剣 ムラクモ】の本契約を確認しました》
《真名開放【No.003 覇國神剣 アメノムラクモ】》
《所有者に【
《『剣神・覇』の効果により所有者と同一領域内に存在する全ての味方の剣系統に2の補正が掛かります》
「は?」
計画の全容は聞いている。大神が日本国の所有する三つの神器の所有者となり儀式を完遂する。そう言う手筈だ。だが神器にこんな機能があるなんて聞いていない。
「おい大神さん。なんだよこれ」
「わからん。だが、儀式に支障は無い。続行する」
鈴木の疑問はこの場の誰もが抱いた物であったが大神の言う事も正しいので儀式は続けられた。
次に開かれた木箱に納められていたのは鏡。
碧みがかった本体に炎の如き模様を随所に張り巡らされており、見ているとその炎の紋様がまるで陽炎の様に揺らめいて見えるなんとも摩訶不思議な新円の鏡であった。日本国が保有する第二の神器【No.008 真経津神鏡 ヤタ】である。
《神器【No.008 真経津神鏡 ヤタ】の本契約を確認しました》
《真名開放【No.008 万象反転鏡 ヤタカガミ】》
《所有者に【
《『返鏡・全』の効果により所有者と同一領域内に存在する全ての味方に『術式反射Ⅱ』が一時的に付与されます》
こうなれば流石に理解出来る。神器とは本来の所有者が使わない限り真の力を発揮しないのだ。
そして真の力を発揮した神器は所有者に留まらず周囲にすら多大な影響を与える。各国が神器を秘匿するのも納得の理由だ。それだけの力が神器にはある。
最後に開かれた木箱に納められていたのは一つの勾玉。ここまで来ればもうお分かりの通りだが敢えてしっかりと説明しよう。
それは透き通る碧を持った勾玉だ。如何なる物質で構成されているのか半透明なその内側では薄緑色の光が風に舞う木の葉の様に弾けては消えていた。
これこそが日本国の保有する最後の神器【No.033 神飾勾玉 シンジ】である。
《神器【No.033 神飾勾玉 シンジ】の本契約を確認しました》
《真名開放【No.033 四魂調伏勾玉 ヤサカニ】》
《所有者に【
《『御魂・完』の効果により所有者と同一領域内に存在する全ての味方のに『和魂』が一時的に付与されます》
「全ての本契約が完了しました。これより大儀式を執り行ないます。加護持ちの方々は速やかに陣の内部に入ってください!」
陣の内に集った加護持ち達と神職達の声が重なり祝詞を紡ぐ。
「「「「「今は遙か遠き座に住う我らが神々に奉る」」」」」
「「「「「太古の昔に授けられし至宝は今不要なれば」」」」」
「「「「「ここに泰平と平定を誓い、終の謁見を願う」」」」」
「《神器奉納》
【No.003 覇國神剣 アメノムラクモ】
【No.008 万象反転鏡 ヤタカガミ】
【No.033 四魂調伏勾玉 ヤサカニ】」
────────────────────
“ゴーン、ゴーン、ゴーン”
その
《
《全人類に《奉納効果》を適用します》
《全人類の剣系統への適性が上昇しました》
《全人類の剣系統の項目全てを1上昇さました》
《タイムリミットが一年延長されました。》
《
《全人類に《奉納効果》を適用します》
《全人類の術系統への適性が上昇しました》
《属性に由来する【耐性】項目を解禁します》
《タイムリミットが一年延長されました。》
《
《全人類に《奉納効果》を適用します》
《全人類の精神許容段階を上昇します》
《精神に由来する【耐性】項目を解禁します》
《タイムリミットが一年延長されました。》
┏━━━━━━━━━┓
┃03:05:13:11:04:32┃
┗━━━━━━━━━┛
この時世界に伝えられたのはこれだけだ。だが、絶望の淵に立たされていた人々を狂喜の渦に叩き込むには余りにも充分過ぎる出来事であり、世界中でこの降って湧いた奇跡へ感謝が捧げられた。
────────────────────
《タイムリミットが一年延長されました。》
《特殊条件確認》
《Ⅰ:三種の神器の同時奉納…認証》
《Ⅱ:【天照大神】又は【瓊瓊杵尊】の依り代による奉納である…認証》
《Ⅲ:【神格】2以上の依り代が10人以上見届けている…認証》
《Ⅳ:50以上の依り代が見届けている…認証》
《Ⅴ:繁栄に値する成果を成している…認証》
《全条件クリアを確認》
《超例外措置を認証します》
世界中に届いた言葉に加え、それが起きた場所ではまだシステムの言葉が続く
《Code:Advent》
《Type: Theophany》
《Restriction:World Collapse》
「大願はここに為された」
《Advent Gods》
「今こそここに我らが祖神を迎え入れよう」
《天神降臨》
そして戦場は光に包まれる
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