仮想都市 OZ


『次のニュースです。先日出現した世界初の『絶淵級ダンジョン』こと【仮想都市 OZ】における被害者の人数は全世界で既に3億・・を超えたという見通しがたっています。事態を重く見た各国は、ダンジョンボス【無限進化AI ラブマシーン】の討伐に向けて動き出していますが、今のところ成果は出ておらず、中東の一部国々では逆に軍隊が壊滅させられ権限アカウントを奪われ、軍の機能が停止するという事態に陥っています。

これに伴い各国の【OZ】攻略も停滞気味となり、現在は【電脳仮想領域 インターネット】を開放した日本に非難が集まる形となっています。これに対して政府は、現在全国から最上級の冒険者達を集め討伐軍を編成していると答えており、この作戦の成否に世界の注目が集まっています。

次のニュースです。先日北海道で行われた英霊召喚によって召喚された……………』


【都内某所・会議室】


日本中の冒険者の猛者達を前に話始めたのは我らが【異界将】こと大神照義その人である。


「ではこれより作戦会議を始める。各員は先程配布した資料を確認してくれ。

まずは奴のステータスについてだ」


────────────────────

【名前】ラブマシーン

【種族】自律思考型AI

【職業】簒奪者

【レベル】100 (6,000,000,000)

【ステータスポイント】0

◆【欲力】

┣知識欲10

┣欲力強化10

┗欲力操作10

▲【肉体】

┗仮想体強化8

▼【技術】

《武器》

┣素手9

┗脚9

●【知力】

┣思考強化-

┣記憶強化-

┗知能強化-

■【固有】

┣混乱6

┣挑戦6

┗吸収6

【称号】

『ダンジョンボス』『システムアクセプター』『権限喰らいアカウントイーター

特殊能力スキル

偽特殊能力イミテーションスキル』『』『』『』『』『』『』『』『』『』『』


固有能力アビリティ

偽固有能力イミテーションアビリティ』『』『』『』『』『』『』『』『』『』『』


加護能力ギフト

偽加護能力イミテーションギフト』『』『』『』『』『』『』『』『』『』『』

────────────────────


「これが奴…【無限進化AI ラブマシーン】のステータスだ。あまりにもデタラメ過ぎて話にならんと言ったところか」


先日発生した世界初の『絶淵級ダンジョン』【仮想都市 OZ】の攻略に向けて全国の指折りの猛者とテレビ通話などを介して会議が行われている。


「まず奴のステータスに関してだが、レベルは100、ただし今迄に奴に殺されてアカウントを奪われた人数が約3億となり、敵の総戦力は実質レベル60億程となる。そして奴はダンジョン内で殺した人間の権限アカウントを奪う能力を持っている。権限アカウントを奪われた人間はステータスの恩恵を失い、全てのダンジョンへの入場が禁止される。奴のステータスにある空白の『』だが、これは奴が奪った権限アカウントの能力を各種10個まで使用できる。更に厄介なことに奴は奪った権限アカウントを元に元の所有者の偽物を生み出し手駒として好きに操ることが出来る。故に我々は奴だけでは無く奪われた3億人の偽物とも戦わなくてはならない」


“ザワザワザワザワ”


ここまでの説明は予めあったと言うのにざわめきは収まらない。それもそうだ。こんな化け物にどうやって勝てと言うのだ。


「奪われたアカウントの中でも特に警戒するべき能力の一覧は添付資料に記載してある。各自で確認してくれ」


そして各々が目を通したリストの中身はこれまた埒外の能力のオンパレード


「防御力完全無視、絶対命中、完全ステルス、連鎖自爆魔術、ってこんなのどうしようもないだろうが!」


そんな理不尽としか言いようの無い能力の一覧を見てとうとう参加者の一人がキレた。


「無理だ!絶対に無理だ!こんなの勝てっこ無い!それとも何か政府には秘策でもあるって言うのかよ!」


激情に身を任せて叫ぶ彼だったが、それを責める者はこの場に誰一人として居なかった。言うまでもなく、それが会議参加者全員の総意だからだ。


「なんとか言ったらどうだよ!ここに集まっているのは精々が数百人。たったそれっぽっちの人数で奪われた3億ものアカウントと戦って勝てる未来ってのを教えてくれよ!」


ラブマシーンの元となった作品であれば対処法はあった。だがここは現実であり、原作のソレとは見た目と能力が酷似しただけの別物には一切通用しなかった。


「無論策はある」


「「「「「「「!?」」」」」」」


「我々と奴、彼我の戦力差を限りなくゼロに近づける一度きりの究極手段を我が国は保有している。その力を使えば例え相手が3億どころか10億であってもなんら問題無くことを成せるだろう」


「な、なんだよその手段ってのは」


「それを説明するには、その前に諸君には資料と一緒に配った契約書にサインしてもらう必要がある」


契約書に書かれていたのはざっくりと言えば

・この作戦を絶対に外部に漏らさないこと

・サインした者は実生活への影響が出るレベルの重篤な問題を抱えていない限り作戦に絶対に参加すること

・能力を悪用しないこと


などなど、要は絶対に作戦に参加しろと言うことだ。


「予め言っておくが、この契約書には《契》属性の霊術が込められている。故に交わされた契約は不正や不平等が無い限り絶対遵守の性質を持ち、実質的に破ることは不可能となる。その事を加味した上で契約にサインするかどうか決めてくれ。サインしないのであらば退出して構わん」


“ザワザワザワザワ”


またもやざわめきが大きくなり、中には「何か罠が仕込まれているかもしれないから」と契約書にサインせずに退出する者達もチラホラと居た。だが、メトロ九傑などの、現在日本でも数える程しかいない国家認定冒険者達が真っ先にサインしたのを見て八から九割程の人々はそのままサインした。


「………契約書へのサイン、感謝する。

それでは説明を始めよう。作戦名は天孫…いや、『天神降臨』だ」




前代未聞の大作戦が遂に動き出す。


─────────────────

【TIPS】

日本国に所属する国家認定冒険者は凡そ20人程で、彼等は東京の「メトロ九傑」や、北海道の「ピリカ・カムイ」、四国の「四つ柱」などの異名で呼ばれている。

彼等はそれぞれが想像を絶する力を持っており、「山一つ溶かした」だとか「モンスターを腹から食い破って殺した」だとか「10km先から狙撃した」だとかと嘘か真か全くわからないような逸話に溢れている。だが、漏れ聞こえてくる彼等の実績や能力を鑑みると、あまり否定出来ないのも事実である。

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