魔法少女は歩き出す
《生霊召喚》
術者その物を触媒として霊力等をリソースに術者の可能性の存在を具現化する術。召喚された生霊は術者とほぼ同等の性能を誇り、単純計算で戦力を二倍にする事が出来る術式である。
「要はもう一人の自分を召喚する術式ってのはわかった。だがなんで《英霊召喚》の陣を使って《生霊召喚》を行える?祝詞が別なのはわかるが…」
「何言ってるんですか鈴木さん。あれは
「は?」
「知らなかったんですか?」
「寧ろお前は何でそんなこと知ってるんだよ」
「さあ?何故か知ってました」
「お前も大概意味のわからない存在だな…」
「失敬な。私は何処にでもいる魔法少女ですよ」
「魔法少女はそこら中にいるようなもんじゃ無い」
「細かいことは気にしない。兎も角あの巨大ベイブレードを止めますよ?」
「おう、やっちまってくれ」
すると二人の赤月が手を組み詠唱を開始した。
「
「朝を告げる輝きと」「夜を告げる輝きと」
「「右天と左天が交わりて、大いなる輝きを成す」」
「「全天満ちて輝き墜ちろ!《
途端、闘技場の上空に巨大な光り輝く物体が出現する。それは輝きを強めながらゆっくりと、だが確実に加速しながら此処へ目掛けて落ちてくる。
「お、おい。名前から薄々感づいてはいるがあれってまさか…」
「はい。擬似的な
「あれが俺たちに対してはダメージが発生しないなんて事は…」
「やだなぁ鈴木さん。幾ら何でもこの世界にフレンドリーファイア無効なんて都合の良いものありませんよ」
「でよねー」
「と言うわけで私達は守りを固めます」
「俺の霊術は強力だが、面を守る物だからあれは防げないぞ?」
「任せてください」
そして赤月は更に二つの霊術を発動する
「《
二人の赤月が別々の言葉を発するのは聞いてて割と気味が悪いが我慢だ。
というかこいつ一体いくつの霊術が使えるんだよ。系統も全くのバラバラだし意味がわからん。
すると今まさに高速落下中の擬似金星の輝きが黒く濁り金星と言うよりは凶星と言った色合いへと変じた。
それと時を同じくして俺と赤月の身体を覆う様に青白い光が纏わり付いた。
「【イヅノメ】の厄祓いの加護と金星に穢れを付加したことで一時的にあの
「非道いマッチポンプを見た」
「人間生きてなんぼですよ」
「そりゃそうだなっ!」
だがまだ穢れた金星が落ちてくるまで少し間がある。その間の改造ベイブレードの対象はどうするか。
「アレの足止めなら任せてください。鈴木さんは回復に専念しといてくださいね。これで終わりとも限りませんし」
「おう。了解だ」
赤月は更に次なる術を詠唱する。
「火生土為して土生金、金生水より水生木、終に至りて木生火。されど相成巡りて廻る。無窮の流転の仮の果て、我が身が保つ限界点、辿り着きしは木生火。
幾たびの流転の果てにて成せ!《
赤月の手の内に生み出された火を土が呑み込み、更にそれを金属が、更に更にそれを水がと順々に生み出されたものを呑み込み続け膨れ上がっていく。最終的に生み出されたのは超巨大な火球。だがそれも一瞬のことで瞬時に手のひらサイズまで圧縮され、今はもう青白い輝きを撒き散らしながら静かに浮遊している。
そしてそれを赤月は“ぽいっと”ゴミでも捨てるかの様な気軽さで改造ベイブレード目掛けて投げ捨てた。
“ジイィィィィィッ!!!”
今まで生きてきた中で一度たりとも聞いたことのない様な異音が闘技場全域に響き渡る。
《
削り合う両者の奏でる不協和音は次第に片方の音のみが強まりだし、終には改造ベイブレードが《
《
だが
「一歩遅かったな」
「潰れちゃってください」
白光
衝撃
大振動
《
…というかそのあまりの衝撃に即座に壁に叩きつけられて意識を失ったのでその間の事を知らないのもある。赤月の発動した《
〜しばらくして〜
「…うっ」
「あっ起きましたか?」
「赤月か。…どうなった?」
「私達が生きている時点で結果は明白ですけど、まああちらをご覧ください」
赤月の示す先を見ればなんとまあ酷い事になっていた。
「うわぁ…」
闘技場自体は破壊不可オブジェクトにでもなっているのか傷一つないが、問題の《
俺の第四階梯霊術を完全に弾くレベルの霊術耐性は容易にぶち抜かれた様で、原型を留めていないレベルでグジュグジュに熔け落ちている。半開きとなっている内部にはコアらしき物があり、そこから霊力らしき物が全体へ張り巡らされており、恐らくあれが動力源だったのであろう。あれがある限り速度がおちなかったと考えると時間経過を待たなかったのは正解といえる。
とはいえ肝心の動力源らしき物も今は半壊、いや半融解しているので意味は無いのだが…
だが、そんな状況でも改造ベイブレードはまだ止まっていなかった。余裕で目で追える程に速度が落ちてるが、流石と言うか何というか、まだ完全には停止していない。
「んじゃトドメと行くか」
「ですね」
《
“ドオン”
本当に極限状態まで弱っていた様で、たったそれだけの攻撃で改造ベイブレードは、ゆっくりと地に伏した。
《【言霊弾幕方形 ニコニコ】内小ダンジョン【創意混沌匠域 技術部】をクリアしました》
《称号【名誉技術部員】【死線越え】を獲得しました》
《初回踏破報酬として【
《小ダンジョン踏破報酬としてステータスポイント10が贈られます》
「まさかこれ一個で終わりだってのか?」
「みたいですね。どうも初見殺し特化型ダンジョンだったみたいです」
「お前多分【神格】持ちじゃ無いのになんでそんな事わかるんだよ?」
「さあ?そんな事より鈴木さんも【
「そんなことって…まあいい。【
【
「鈴木さんは何回くらい開けたことがあるんです?」
「確か三回だな。そのどれもで結構いい物が出たしレアガチャみたいなもんだと思ってる」
「三回もあるんですか。流石は国家認定冒険者ですね。…では早速開けましょうか!」
「おう。じゃあいくぞ。…いっせーのせっ!」
オープン!
《【非表示ボタン】を獲得しました》
【
「こっちは良さげなものが出たぞ。そっちはどうだ?」
「…ハズレです」
「ハズレ?」
そう言って赤月が見せて来たのは正方形の四つ角を丸く削り取った形をしたアイテム。何というかスマホアプリのアイコンの外形そっくりである。
「これは【アプリケーションアイコン】と言って、【電脳仮想領域 インターネット】の未開放ダンジョンをアンロックするアイテムです。開放されたダンジョンは誰でも挑めますし、条件達成なんかでもいつか解禁される物で、私には何の価値もありません」
「それは…」
ご愁傷様としか言いようがない。
「んでそれ何のダンジョンを開放するんだ?まだ未開放な物って言うとあんまり思いつかないんだが」
「これ自体もガチャみたいなもので、こうやって霊力を込めると確定します」
そう言いながら赤月が【アプリケーションアイコン】とやらに霊力を込めると徐々に色や線が浮き出てアイコンを浮き彫りにしていく。
「…おい、ちょっと待て。
「どうしました?」
赤月はアイテムの正面をこちらに向けてるから見えてないのだろう。そして俺が見た
霊力が満たされて完全状態となったアイコンから0と1で構成された線が広がり、丸で根をはる様にダンジョンへと浸透して行く様を見ながら俺は唖然として棒立ちになった。
ピンク色の鍵穴に真っ白な新円の差込口。
そして差込口と鍵穴の隙間を埋める様に描かれた巨大なZの文字。
その名は
《絶淵級ダンジョン【仮想都市 OZ】が開放されました》
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