命を燃やす蛮賊の竜 その三
傷口は全て塞いだが深い傷もいくつかありポーションもかなりの数を消耗してしまった。所詮下級ポーションでは回復量も高が知れている。
霊力の残りは全体の半分程で先程と同じ攻防を繰り広げれば空っぽになる。自然回復も微々たるものなのであまりあてにはできない。
残された霊力で武器に《虚空纏》をかけ直しドスアングラスに向き直る。
あの鱗を逆だたせる攻撃のことを考えると下手に先程と同じ様に飛び乗って斬るという選択肢は取れない。かと言って遠距離攻撃は鱗の所為で掻き消される。
俺が攻撃を決めるには接近した上で鱗を逆だたせる攻撃をさせない様になってしないといけない。だがあれはモーションは短く速いので構えられた時点で止めるのは不可能だ。
ならば鱗を動かさなくは無いだろうか?
そして俺は妙案を一つ思い付いた。
(いけるか?いややってもどっちみち積む気が…いやああすればいける…のか?)
取り敢えずの解決策を浮かべた俺は勢いよく駆け出した。
奴は爪を使った引っかき攻撃の構え、ジャンプしてもあれは避けられない。なら!
「おらっ!」
「ジャッ!」
俺は勢いよく
そこに奴は獲物が来たとばかりに爪の角度を変え俺の胴体に当たる様に腕を振り上げる。
「最初から狙いはそっちなんだよ!」
兜割の容量で真上に振り上げた太刀を下から掬い上げる様に払われる爪にぶつける。
“キイィィィィィン”
鋭い物同士がぶつかり合い澄んだ音が響き渡る。
だが重力の力を借りたとはいえ力の差は歴然。一瞬の均衡の後に俺は真上へ吹っ飛ばされた。
だがこれで終わりじゃあない。俺は知っている。この変わってしまった世界ではステータスさえ足りていれば大抵の無茶はやれるってことを。
吹き飛ばされながら空中で体の向きを調整し勢いよく
衝撃が体にのしかかり悲鳴をあげたくなる。
だがそれを堪えて膝を曲げ一気に伸ばす。
“ブチッ”
足の筋肉が中で切れた様な嫌な音がしたがそんなもんは後でポーション掛ければどうにでもなる。
「オオッラアッ!」
“斬”
今日一番の一撃(合計二発中)が決まった。
「ジャア!?ジャアアアッ!?」
奴も直前で躱そうとしたが間に合わずその尻尾を見事に斬り飛ばした。
飛び散る大量の血液、鱗や最初の一発の傷同様に修復を試みている様だがどうやら部位欠損クラスのダメージを負うと傷口を塞ぐだけに止まる様だ。いや、もしかして修復するのにエネルギーが足りないのか?
「あー痛ってぇなぁもう!」
両脚にポーションをぶっ掛け何とか動かせる様にして一旦距離を取る様に走る。
「ジャアアアアアッ!ジャアアアアアッ!」
「もうこれ以上の新モーションは望んでねぇよ畜生がっ!」
何だあれは?いつもみたいに空気を吸い込んでブレスを吐いてくるのかと思いきやそのまま口を閉じてじっとし始める。
赤みがかかっていた紫の鱗が紅く輝き始める。
「おいおい嘘だろ?」
ドスアングラスの体内で荒れ狂っていた炎が身体全体に染み渡っていく。染み渡った炎は鱗の温度を急激に上昇させて紅く輝かせる。
「触れたら突き刺さるを受ける鮫肌の次は触れたら燃える鱗だと?巫山戯んな!」
一体こいつは何個能力を隠してやがる!
紅く輝くドスアングラスがかなりのスピード突っ込んでくる。
(速っ!?血液循環速度を上げて身体能力を向上させてんのか!?漫画じゃねぇんだぞ
文句を垂れても超高速で突っ込んでくる奴が遅くなったりはしない。
この戦闘開始時から発動しっぱなしにしている瞬刻思考で捉えるのがやっとのスピード。これに加えて燃え盛る鱗の所為で下手に近づけない。
そこで俺は咄嗟に《亜空庫》に入れておいた大量の水を放出した。
(あっやっべ)
この時俺は大量の水をばら撒いた後に気付いたことが一つあった。
一つ化学の問題をだそう。大量の水をどう見ても超高温の鱗にぶちまけたら何が起こるのかという問題を。
“ジュッ”
鱗に触れた水が蒸発する。水は気体に変化する時その体積は1700倍にもなるというつまり
“ドオォォォォォン!”
水蒸気爆破が起きる。
「がっ!はっ!ぐふっ!」
「ジャアアア………」
部屋のほぼど真ん中で起きた爆発は俺と奴を部屋の両端へと吹き飛ばした。
「ゲホッゲホッオエッ。」
爆発による衝撃で外傷より内臓がかなりダメージを負ったので底が見え始めたポーションをガブ飲みする。
残りはざっくり数えて20本程だ。
見れば奴もかなりのダメージを受けた様で全身のあちこちがひび割れており鱗の紅い輝きも大分弱まっている。恐らくあのくらいなら触った瞬間に燃えるほどの熱量は無いだろう。いつもの様に傷の修復を行わないのでエネルギーが尽きたかあの状態だと回復できないみたいな制約があるのだろう。
互いにダメージはかなり溜まっている。俺のポーションも霊力も底を尽きそうだ。
そろそろ決着だな。
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【TIPS】
ダンジョン内のモンスターはボスを含めてモチーフとなった物はあるがあくまでモチーフなので元となった物が絶対にしない様な動きや行動をとることはよくある。
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