命を燃やす蛮賊の竜 その一
あれから一週間経った。
ひたすらに霊術を使い続けていたが中々霊術強化の項目が4に上がらない。感覚的にはそろそろ上がりそうなものなのだが。
そして今日は遂に武器受け取りの日である!
◆◇鍛冶屋『鍛冶屋』◇◆
「来たか兄ちゃん!依頼品出来てるぜ!」
「早速見せてくれ。」
「おう、こいつだ!」
そうして鍛冶屋の親父は一振りの太刀を手渡してきた。
刀身の長さは約1メートル程、刃は僅かに黄身がかっておりしっかりとそりもある。
「そいつの名前は【賊竜刀 ダツ】。ドスジャグラス の牙を使った影響でか知らんが何度も強化していける成長出来る武器になったぞ。」
「まじかよすげーな。(強制開示)」
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【賊竜刀 ダツ】
【所有者】鈴木亮一郎
【強化スロット】◆◇◇◇◇◇◇◇
【説明】ジャグラスとドスジャグラスの素材を元に作られた太刀。従来の金属より霊力、法力、聖力への親和性が高い。
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「いい刀…いや太刀だな。ありがとう。あとこれ後払い分の20万。」
「おう毎度あり。んじゃ頑張れよボス戦!」
「おう!次に来るのはボス素材で強化して貰いに来る時だ!」
「楽しみに待ってるぜぇ!」
◆◇C01ボス部屋前◇◆
「遂にきたぞ。」
部屋の中に入らないと中が確認出来ないせいでまだ姿は見れないがおそらくそこにはドスジャグラスとその取り巻きが10匹ばかしいることだろう。
「最終確認だ。」
持ち物
【賊竜刀 ダツ】
【サバイバルナイフ】
ポーション×沢山
煙玉×10
超ねっとり餅×30
火霊術式爆弾石×3
水(約10L)
激ウマ兵糧丸×50
投擲用短剣×20
この一週間で貯めた金と素材を全て使い切って揃えた一品達だ。ここまでして負けたら泣くしかない。
「いざ尋常に勝負!」
勢いよく部屋へと駆け込んだ俺は取り巻きのジャグラス達を倒そうと短剣を構えた。
だが部屋の中には誰もいなかった。
「は?」
ボス部屋の中は多重並行世界とやらになっているらしく別々にグループが入っても中でかち合うことはない。その上仮にボスを倒してももう一度入れば再挑戦が出来るはずだ。なのに部屋の中には何もいなかった。
「どうなっている?」
“ジュッ”
「!?」
部屋の中央部に一筋の光が走った。
“ジュッ、ジュッ、ジュッ!”
やがてそれが大量に発生し一つの塊となって具現化した。
「き、『強制開示』ぃっ!」
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【蛮賊竜 ドスアングラス】(ユニークダンジョンボス)
C01のボスドスジャグラスが突然変異したモンスター。火を吐きあらゆる物を噛み砕く【蛮顎竜 アンジャナフ】の因子を取り込んでいる。
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「なんだよ…それ。」
ユニークダンジョンボスなんて聞いたこともない。
ドスアングラスとやらは大きく息を吸い込む嘔吐投擲と同じ構えをとった。
「ビビるな。やばくなったらいつものやり方で逃げ出せば良い。」
俺は奴が口を開きこちらに向けるタイミングで横に飛んだ。
このまま投擲攻撃を躱して一撃を見舞うために一気に距離を詰める。
だがそんな考えは奴が吐き出そうと構えた口の端からチラリと炎が漏れ出たのを見て何処かへ行った。
「っ!?」
背筋に悪寒が走り全力で勢いよく俺が横へ飛んだその時
「ガアアアアアアッ!」
“ボオオオオオオオオォ”
俺の真横を直径2メートル以上はある炎の竜巻が通り過ぎた。
炎の通り道は
「まじかよ…おい」
頭が混乱している。
どうしたら良いのかわからない。
だが一つ確信がある。
こいつには勝てないという確信が
『無限思考』のお陰で大分落ち着いてきた俺は逃げると決め出口を目指そうとした。だが
「ガアアアアアアッ!」
“ボオオオオオオオオォ”
ドスアングラスが入り口周りを焼き尽くした。
「は?」
入り口付近はボウボウと炎が燃え盛り火の勢いは弱まりそうもない。もし仮に突っ切ろうとすれば途中で焼死体になるのが関の山だろう。
「グシャシャシャ!」
ドスアングラスが気持ち悪い笑い声のような何かを上げる。
「畜生!」
退路は断たれた。このまま行けば俺はドスアングラスに食われて人生終了だろう。
どうする?ここで俺は死ぬのか?こんな意味も分からない様なやつ相手に?
そんなのは嫌だ。まだ生きていたい。もっと強くなりたい。
「良いぜやってやる。モンスターの餌なんざ真っ平御免だ。」
“キイィィィン”
俺は静かに【賊竜刀 ダツ】を抜きはなった。
「テメェをぶっ殺して生きて帰ってやる!」
絶体絶命な戦いが幕を開けた。
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【TIPS】
ダンジョンでは極々稀にユニークボスが発生する。ユニークボスは倒されない限り幾度と無く現れ運悪く引き当てた冒険者達を皆殺しにしている。
現在討伐されたことは世界全体で一度も無くそれ故にその存在は誰も知らない。
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