神職と武器

あの後ダンジョンから何とか脱出しようとあのクソ野郎の作った土壁をぶち壊した直後、向こうからやってきた監督役の自衛隊の人達に保護された。

どうやら俺を嵌めやがったクソ野郎こと加藤ナンタラ君はダンジョン脱出直後に逮捕され、そいつに殺されかけた俺を救助する為にやって来たらしい。

俺がジャグラス六匹を一人で倒したと言ったらスゲェ驚かれたが生きているのが何よりの証拠だとあっさり信じてくれた。


「所でどうやって俺が殺されかけたのわかったんですか?」


「ああ、すまないそれについては機密事項でね。私の権限じゃ詳しく話せないんだ。ただ君は今回の被害者だし軽く機密漏洩にならない程度には教えておくよ。」


俺を助けに来てくれた隊のリーダーの人。…確か村田さんが色々教えられる範囲で教えてくれた。


「君は【神職】という物に就いている人達のことは知ってるかい?」


「まあ何と無くなら。確か神社の神主とかお寺のお坊さんなんかのことですよね。」


「ああ、彼等は己が信仰する神に祈ることで一時的にその神の依り代に近しい能力を発揮できるんだ。まあ、【神格】なんかは持たないみたいだけどね。そして、詳しくは言えないがその中でも千里眼に近い能力を持つ人達を使ってダンジョン内を監視していたんだよ。そして君が身代わりに殺されかけたのが発覚したというわけだ。」


「成る程。にしてもよくそんな都合よく見張りなんてしてましたね。」


「そこはまあ色々と事情があるんだよ。私から話せるのはここまでだね。

さて、入り口まで戻ってこれたしこの後は担当の者から事情聴取があるが君が被害者なのはこちらでも確認済みだ。あまり気負わなくても大丈夫だよ。」


「色々とありがとうございます。」


その後、軽く事情聴取が行われたが特にこれと言った事もなく平穏無事に終わった。




〜翌日〜


俺はギルドの紹介を持って鍛冶屋にやって来た。

何言ってんだこいつと言いたくなるかもしれないが都心でマジモンの鍛冶屋が絶賛営業中なのだ。その名も『鍛冶屋』。まんまである。


「すいませーん。ギルドの紹介で武器作ってもらいに来ましたー。」


「あいよ。俺が『鍛冶屋』の店主の叢雲源三郎だ。よろしくな。」


なんで鍛冶屋『叢雲』とかにしなかったんだろ。


「んで、何を作る?」


「近接用の剣をお願いします。」


「剣つってもいくつも種類があるからな。片刃、両刃、逆刃と刃のつけ方だけでも3種類もある。」


「逆刃なんてマジでやる人いるんすか?」


「世の中何処にでも物好きはいるもんだ。」


「成る程。」


「所で材料はどうする。鉄?鋼?合金?」


「ああ、それにはこれ使えますか?」


そう言って俺は空中から・・・・物を取り出した・・・・・・・


「うお!?こいつは驚いた。兄ちゃん《異空庫アイテムボックス》が使えんのか。」


「俺のこれは《亜空庫インベントリ》って言う別物ですけどね。で、これを使って武器作れますか?」


そう言って俺が取り出したのは大量のジャグラスの鱗である。


「おっ!ダンジョン産の素材なら大体なんでも武器に出来るぞ。特にこいつらジャグラスなんかの素材は何故かやたらと親和性が高けぇんだわ。」


多分狩りゲーのモンスターだからじゃないかな。


「つかこいつを素材に近接武器を作るんなら刀なんてどうだ?今なら安くしとくぞ。」


「刀?いやいいですよ。素人が使った所で直ぐにへし折れるのが見えてるので。」


「ところがどっこい!ダンジョンのモンスターの素材で作った武器は素人が使っても異様なまでに折れづらいんだよ。こいつらで作れば繊細な扱いを求められる武器でも割と雑な扱いができる様になるんだ。まあ、鍛冶屋としてはもうちょっと丁寧に扱ってほしいがな。」


刀。それにはとてもロマンを感じるが扱える技量が無いので妄想の中で終わっていた武器。それを使えると言うならば!


「わかった。刀を一本頼む。サブウェポンにサバイバルナイフを使っているからそれだけでいい。つか金が無い。」


「毎度!金額は材料持ち込みで差し引き40万ってところだ。20万先払いで制作開始。完成品を渡す時に残りを貰う。」


「カードで。」


「あいよ。」


そこそこするが買えないほどでは無い。

ジャグラスの鱗の残りとスライムゼリーを売っぱらえば余裕でお釣りがくる。

というか冗談で言ってみたら本当にカードで払えた。俺の鍛冶屋に対するイメージがががが…


「二週間くらいで出来るから出来たら連絡するんで兄ちゃんの電話番号と住所氏名、あと冒険者の識別コードも書いてくれ。」


鍛冶屋に来たら凄いしっかりとした書類を書かされた。現実なんてこんなもんだ。


「そんじゃ出来たらまた来ますんでよろしくお願いします。」


「おう!とびっきりの名刀を拵えてやるよ!」


「程々に期待してます。」


そもそも都心の鍛冶屋は此処だけじゃなくギルドと提携した鍛冶屋が全国から集まっている。此処もその一つに過ぎないがギルドが保証してるってことは腕は確かなんだろう。


こうして俺はちょっとした期待を胸に鍛冶屋を後にした。





…やばい。ワクワクがとまらない!


─────────────────

【TIPS】

ダンジョン産の未知の素材や霊術と言った物の力によって鍛冶などの加工技術及び加工速度はは飛躍的に上昇している。

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