チュートリアル

6月26日、この日を世界中の人々は戦々恐々としながら待っていた。

これから起こることに恐れ慄いている者、何かに期待する者、好奇心を抑えられない者、憤りを感じている者、などなど多くの感情を抱く人がいたが誰一人として無関心でいる者は居なかった。


〜午後12時〜


“ゴーン、ゴーン、ゴーン”


その瞬間世界中に大きな鐘の音が響き渡った。


そして各国の上空に巨大なスクリーンが浮かび上がった。


そしてそこに絶世の美青年とよんで差し支えない黒髪黒目の青年が映し出された。


『やあ、人類諸君。ついにこの日が来たね。早速始めたいところだけど私にも仕事があるので先に説明するとしよう。まあわかりやすくいえばチュートリアルという奴だ。』


『さて、先ずはこれを見てくれ。』


すると青年を映すスクリーンの横にタイマーの様なものが現れた。


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『このタイマーは左から順に年、月、日、時間、分、秒を示している。そしてこれが0になった時にこれから生成されるダンジョンからモンスターが一斉に湧いて出る。そしてその数に限界は設けていない。私はこれを終焉の宴エンドレススタンピートと呼んでいる。』


『さて、カウントダウンをするということは諸君らには制限時間内にやるべきことがある。それを今から説明しよう。』


『私は世界中に生成されるダンジョンに100の神器ゴッズアイテムを配置した。この神器ゴッズアイテムを制限時間内に全て見つけ出せば君達の勝ちだ。君達はモンスターの溢れることの無いダンジョンという無限の資源と神器ゴッズアイテムというたったひとつで世界のバランスを塗り替える物を100も手に入れることが出来るのだ。どうだい素晴らしいだろう?』


『ところで一部の賢い者たちなら思ったことだろう。「たった一年で危険度も仕組みも生態系も一切わかっていないダンジョンの中から100ものアイテムを見つけ出すのは不可能だ。」と。』


『そこで私から餞別と説明を兼ねて一つ神器ゴッズアイテムを渡そう。』


すると青年の左手に恐らく未知の金属で作られていると思われるマイクの様なものが現れた。


『今回は説明も兼ねているので鑑定系統のスキルを持っていなくても全人類に見えるようにしておこう。』


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【No.100 全言語理解柱 バベル】

《所有効果》所有者は全ての言語及び文字を理解し、使いこなせる。

《奉納効果》全人類が凡ゆる言語を完璧に扱えるようになる。

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『この通り神器ゴッズアイテムには1〜100までの番号が振られており、一部例外を抜けばこの数字が若い程強力な効果を有している。』


『そして神器には《所有効果》と《奉納効果》の二つの能力が存在する。

《所有効果》は発見者が現れた時点で神器ゴッズアイテムが所有者登録を行い所有者のみに永続的に効果を発揮する。そして《奉納効果》は各国の神殿に捧げることにより人類全体の共有物となり全人類に効果を発揮する。但し捧げられた神器ゴッズアイテムを回収する事は出来ない。どちらを選ぶかは君達の自由だ。ああ、但し神器ゴッズアイテムを発見しても神殿に奉納しなければ見つけたとは認められない。』


この時多くの人々は最も効果の低い100番目の神器ゴッズアイテムですら言語の壁を永続的に消失させるという圧倒的な力に驚いて言葉を忘れていた。


『最後に時間制限についてたがこれは伸ばすことが可能だ。方法は単純、この様に神器ゴッズアイテムを神殿に収める事で神器ゴッズアイテム一つにつきタイムリミットが一年伸びる。』


すると青年の持っていたマイク…【No.100 全言語理解柱 バベル】は青年の手から消失した。


“ゴーン、ゴーン、ゴーン”


すると先程と同じ様な壮大な鐘の音が響き渡る。


神器ゴッズアイテム【No.100 全言語理解柱 バベル】が奉納されました。》

《全人類に《奉納効果》を適用します。》

《言語制限が消失しました。》

《タイムリミットが一年延長されました。》


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神器ゴッズアイテムの残りは99本です。》


『では最後に先程から私が口にしている神殿について説明しよう。』


“パチン”


青年が指を一度鳴らした。


次の瞬間


“ギチッ…、ギチギチッ…、ギチギチギチッ…”


歪んだ。


比喩でもなんでもなく世界中の国の首都に相当する場所の上空の空間が歪み始めた。

そしてそこから巨大な建造物が現れた。それは国によって千差万別で近い形をした物はあっても全く同じものは一つもなかった。


ここに日本の物を例にとって説明するならそれは巨大な神社であった。だがこれはあまり的確な表現では無い。何というか神社とお寺の建物を綺麗にミックスして頂点に十字架を突き刺した様な姿をしている。それは周囲12方向に100段以上はある階段を延ばしておりその終点にはこれまた立派な鳥居がそれぞれの方向に聳え立っている。各鳥居はしめ縄で隣り合う物が結ばれておりの上部2箇所には青い狐火が燃えておりとても幻想的だ。


ある意味多方面に喧嘩を売っている様な様相はまさしく神の御技だと何故か納得してしまう。


『これが神殿だ。見た目は各国の宗教分布上位3つから構築する様にしてみたのだが…。

うん…、日本だけ割と妙なことになったな。流石は神格連中がアレな国…』


激しく気になる言葉が聞こえたが神にこちらの言葉は届かないので皆黙るしか無い。


『おっと忘れるところだった。君たちもも気づいているであろう【神格】について説明しよう。私はこの世界の再編にあたって各国のあらゆる神話や伝説を現実のものとした。これにより各国に伝わる有名な神話の神々達が実体化したのだ。神々は地上との繋がりは薄いので私は彼らにいくつかの権限を与えた。その一つが一柱につき一人依り代を選ぶ権限だ。こうすれば人類が即座に滅びるということもなく暇を持て余した神々達も依り代を通して地上を見れて満足だろう。』


『最後にこれが神々に与えた権限の一部だ。全て明かしてはつまらないのでね。』


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・一柱につき一人まで依り代を選ぶことが出来る。

・各国に生成されるダンジョンはその国の文化や風習・・・・・、神話や伝説に基づきその国の最大の宗教神々が決定する。

・神々は依り代と神眼の二つの方法で地上を見ることが出来る。

・神々は自らの依り代に【神託】や【啓示】を行える。

・【神託】又は【啓示】の方法は神毎に決めることが出来る。

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『以上だ諸君。それではゲームを始めよう。ジャンルはRPG、舞台は地球、プレイヤーは全人類、そして目標は全ての神器ゴッズアイテムの奉納。

これを成し遂げ君達がさらなる進化を遂げる日を心より待ち望んでいる。それでは諸君、また会おう。』


“ヴォン”とも音を立てて世界中に現れたスクリーンは一斉に消えた。


そして───


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┃01:11:29:23:59:59┃

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……………


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………


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静かにゆっくりと、だが確実に終焉までを数えるカウントダウンは進み出した。


こうして世界の存亡を賭けたゲームの幕が開けた。


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【TIPS】

どの様な世界に変化させるかで神々の間で大議論となり、最終的に現在のものとなった。因みに没案となった全界定理君アマツサダメノキミのアイディアは「人類が口にした言葉が全て実現する」という世界の崩壊を超加速させるものであった。

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