第10話 魔法を斬ってみましょう。初・死に戻りしました。
「ふいぃぃ。狩った狩った」
日が落ちてきてそろそろ夜帯のエネミーが出てくるんじゃなかろうかという感じなのだけど。
「それにしてもスライムが見つからん」
どうやら、エネミー毎にポップ数が違うみたいで、兎さんとのエンカウントが一番多くて次にわんこ。
スライムはノンアクなのかなんなのか全然エンカウントしない。
「もうちょっと奥まで行ってみようかしらん?」
振り返れば町の防壁が微かに見える。
というか、初期街、丘の上だったんだね。
凄く緩い坂道だったんだと見て初めて気がついた。
そんな感想を思い浮かべていて周囲の警戒をおろそかにしていた直後。
「すらー!」
右からなんとも気の抜ける鳴き声と共に、右方から火の玉が跳んで来た。
「!?」
いつものように得物で払おうとしたのでけど、とっさの事過ぎてするりと鞘から抜けなかった。
「ちょっ。日本刀じゃないから! 反り足りてない!!」
結構な速度で迫ってくる火の玉をどうにか斜め後ろに飛び退いて回避。
「あっつ」
躱しきれず掠っただけなのにメッチャ熱い。
「ちくしょ~やってくれたなー」
火の玉が跳んできた方向に向けば赤色のスライムがフヨフヨうごめいていた。
「すらーすらー」
とりあえず深呼吸。安定した精神こそ戦闘の重大事。
「よし。斬り伏せちゃる」
するりと抜刀。今度はちゃんと抜けた。
どんな状態でも抜けるように練習しないとなぁ。
刀を右に。両手で柄を持って、真っ直ぐ刀身を立てる。左足をちょっと前に出して、しっかり地面を踏む。
八相の構えっていうんだっけ?
私の刀使いはゲームで培った我流だから現実の構えとか流派とかはあんまり詳しくないんだけど、たぶんあってるはず。
私は現実の術技より、刀剣そのものへの興味が強くて、そっち方向の知識ばかりで流派とか全然詳しくないのだ。
「すらっすらっすら~」
赤スライムが鳴くと火の玉がひとつ、ふたつ、みっつと上空に現れる。
「最初のマップでマジックユーザーとか、運営優しくないよねぇ。しかも連発できるとかさ」
ぽっ。ぽっ。ぽぽぽぽっ。
幾つも灯っていく火の玉。合計十二個。
「まぢかぁ。でも、まぁ、魔法斬りの練習には丁度良いかな。かかってこいやぁ~」
びゅおんっ。
「!? はっや!!」
顔の横を通過していく火の玉。
どうやら投射速度は自由らしい。
「タイミング合わせるハードル高くなーい?」
「すらっすら~」
なんか笑われてるみたいでムカツク。
「へいへーい。ドンドン撃ってこいやぁ」
「すらー!」
ひゅっ。と飛んでくる火の玉。
「破っ!」
火の玉目掛けて思いっきり刃を振り下ろす。
火の玉に刃が当たった瞬間、火の玉が真っ二つに分かたれた。のだけど、火の玉が消えることはなく、後方へと飛んでいく。
そして地面に着弾したのかどおおぉぉん、と爆発音が耳朶を襲う。
「むぅ、成功なのかわかりづらい。Heyスライム先輩もう一発プリーズ!」
びゅんっ! ザッ! どおおぉぉん!
「んん? 手応えが違う・・・・・・。これは試行回数増やさないとダメっぽいなぁ」
ひゅん。ザンッ。びゅおん! ザッ。ゴゥッ!! 「むり!!」
「すらすら~♪」
「剛速球はないわぁ。避けられるけど斬るのは無理!」
「すらっ!」
「! そこだ!」
スパンッ!
斬られた火の玉がスッと消えた。
「よっし! 今の手応えが正解だね!! じゃんじゃん行こう!」
「すらー」「すらー!」
得物を構え直して火の玉を待っていると、うしろからも鳴き声が。
「あ、待って二匹はだめ」
「「すらー!」」
無慈悲にも前後から襲ってくる火の玉。とりあえず前方のは斬り消せたのだけど、後ろに振り向くと既に目の前に火の玉があった。
「むりだわー」
どぉぉん。と直撃して私のHPは全損した。
―― You Dead ――
―― 選択して下さい 30秒 ――
―― 復活 蘇生 ――
復活は専用アイテムかリアルマネーが必要らしいけどこの場で即時復活。
蘇生は近くの町の神殿にリスポーンするらしい。
まぁ、蘇生でいいか。覚えてろよスライムども。
ぽちっとな。
―― 蘇生します ――
一瞬の暗転。そして明転すると、神殿の椅子に腰掛けている状態だった。
「あ~神殿ってこうなってるんだ~」
前方には白い石像。たぶん神様。
その手前には偉い人がお話するんだろう壇が置かれていて、その手前に長椅子が幾つも綺麗に並んでいる。
現実の教会ってこんなイメージだよねっていう空間作り。
ただ、ステンドガラスじゃなくてただの色ガラスなのがちょっと不思議。
ガラスアートは発展しなかった設定なのだろうか?
「とりあえず、デスペナなんだろう?」
ログを確認するけど、アイテムも所持金も経験値も減ってない。
「おぉ有情」
他の可能性を考えて視界をよく観察すると左上にちっさくアイコンが出ていた。
「デバフかぁ。ステータス半減。ゲーム内で1時間か。まぁ妥当かなぁ」
ちょうどいいし、ログアウトしよっかな。
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