第177話・作戦会議

『で、どーすんだ? ギルルダージュをぶっ殺すのは賛成だけどよ』

「大罪神器が全部揃わないと女神を殺せないわけじゃねぇだろ。カドゥケウス、お前が知ってる限りの女神の名前は?」

『あー……祝福の女神フリアエ、愛の女神リリティア、魔の女神ラスラヌフ、戦の女神キルシュ、希望の女神パティオン、白銀の女神ブリザラ。んで、全ての始まりの女神って言われてる母なる女神テレサ。有名どころはこんなもんか』

「……けっこういるな」

『そりゃそうだ。人間に名の知られていない女神もわんさといるぜ』


 ライトは、岩場を拠点として作戦を立てていた。

 作戦目標はストライガーを殺してリンたちを解放すること。

 もちろん、女神と勇者レイジの討伐も忘れない。


「【強欲】の大罪神器か……つまり、もう俺はストライガーを殺せないってことか?」

『ああ。相棒はギルルダージュに楔を打ち込まれちまった。あいつが解除しない限り、『ストライガーを殺す』って行動はできねぇ……『奪われちまった』からな』

「めんどくせぇ……」


 ライトは、近くで拾ってきた薪に火を付け、海中を泳いでいた魚を適当に撃って殺し、捌いて焼いて食べた。

 岩と岩の間にあるこの場所は、空を飛ばない限り入る事はできない。絶好の隠れ家だった……が。


「くそ……金もねぇし、冒険者登録して稼ぐのも手だけど」

『リンの嬢ちゃんたちに鉢合わせしちまうかもな』

「……ちっ」


 ライトは、乾いた服を着て砂浜に寝転ぶ。

 こういうときに頭が冷静になるのはライトの長所だった。


「俺はストライガーを攻撃できない。しかも今はリンたちがアイツを守ってる……つまり、あいつを殺すにはリンたちと戦う可能性もあるってことか」

『ま、そーだな。ぶっちゃけ、今の相棒じゃ無理だ。リンの嬢ちゃんならともかく、マリアの嬢ちゃんとシンクの嬢ちゃんを同時に相手はできねぇ』

「わかってる……なら、考え方を変える」


 ライトは少し考え、起き上がる。


「俺自身がストライガーを攻撃できない。なら、岩場とかに誘い出して落石で押しつぶすとかは? そうだ、事故死なら……」

『お、いいね。でもよ、落石とかならリンの嬢ちゃんたちが防いじまうぞ』

「……なら、俺が足止めすればいい」

『アホ。死ぬに決まってる』

「……やるしかないだろ」

『んー……』


 カドゥケウスは難色を示す。

 だが、直接戦えない以上、ライトにはこの手しかなかった。というか、ストライガーを殺す事に何の躊躇もなかった。


「……はぁ」


 気が付くと、すっかり暗くなっていた。

 星の光が瞬き、美しい夜空が広がっている。

 テントも何もない。水位も変わらないし、溺れるということにはならないだろう。

 ライトは、再び砂浜に寝転び、そのまま眼を閉じる。


『相棒。少し休みな……』

「ああ……」

『それと、今のうちに言っておく。ストライガーを殺す算段はあるぜ』

「え……っ?…………はぁ!?」

『ケケケケケッ。正直、やりたくねぇけどよ、相棒が望むなら一度だけ奇跡を起こせる。間違いなく、ギルルダージュの野郎にひと泡吹かせることができるはずだ』

「お、おい。そんな方法が」

『でも、リスクも超デカい。今までやったことがない方法だ……相棒もどうなるかわかんねぇ。死ぬかもな』

「…………」

『ま、オレらの切り札だ。覚えておけ』


 そう言って、カドゥケウスは黙った。

 ライトも眼を閉じ、睡魔に身を委ねる。


 眠気は、すぐにやってきた。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌朝。ライトは信じられない光景を目にする。


「………………」

「…………zzz」


 砂浜で眠ったライトの隣に、可愛らしい寝息を立てるメリーがいた。

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