第86話、ヤシャ城の囚われ姫

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 ライトとマリアは、夜のヤシャ王国城下町を歩いていた。

 街灯が明るく、異国風の服を着た住人や冒険者が、居酒屋ののれんを潜る光景や、夕食を取ろうと提灯の掛けられた建物に入っていく姿などが見られる。

 大きな赤い紙傘の下では、若く化粧を施した女性が、着物を着崩して流し目を使ってライトを見ていた。


「お兄さん、今晩どう?」

「…………?」

「行きますわよ」

「ん、ああ」


 怪訝な表情をするライトを促すマリア。ライトは、今のが娼婦だとは気付いていない。マリアは気付いたが、敢えてライトに教える事は無かった。そこまでの義理はない。


「ヤシャ王城……大きいですわね」

「ああ。どうする、真正面から行くか?」

「それしかないでしょう。別に悪さをしに行くわけではありませんもの」

「そうだな」


 目的が同じだと、この二人は意外と相性がいい。

 ライトは、リンに救われた借りを返すため。マリアは、愛するリンを取り戻すため。いなくなったリンを探すため、ヤシャ王城へ向かう。

 

 目的は一つ、リンを探すことだけ。


 ◇◇◇◇◇◇


「それでさ、兄さんと一緒に遊んだときに……あれ、もうこんな時間だ」

「あ、ほんとだ。真っ暗……」


 イエヤスとリンは、イエヤスの自室でお喋りをしていた。

 イエヤスの昔話から、リンの勇者パーティーとしての旅の話まで、話題は尽きることなく口から出る。

 リンは、この時間を楽しんでいた。そして、帰りたくないとも感じていた。


「リン、せっかくだし、今日は泊まっていかない?」

「え……あー、でも、ライトたちが待ってるし……」

「ライト?……あぁ、きみの仲間だね」

「うん。私も帰りたくないけど、やっぱり今日は帰らないと……」


 そう言って、リンは立ち上がり―――イエヤスに手を掴まれた。


「ダメだよリン、今日は帰らないでくれ」

「え……」

「お願い、きみと一緒に過ごしたいんだ……小生以外の男の元へ帰るなんて、言わないでくれ」

「あ――――」


 リンは、イエヤスの視線を真っ直ぐ受け止めた・・・・・・・・・

 同時に、心臓が高鳴る。イエヤスから目が離せず、二人は見つめ合う。


「ここにいてくれるかい?」

「……う、うん。今日は泊まっていくよ」

「ありがとう!」


 イエヤスは、とても明るい笑顔で微笑んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ヤシャ王城の前に来たライトとマリアは、門兵に食ってかかる。


「だから、仲間が来てるかもしれないんだ。リンっていう黒髪黒目の女の子だよ」

「知らん。こんな夜更けに無礼だぞ、さっさと帰れ!」

「何か知ってるのでしょう? 教えて下さいな!」

「知らんと言っているだろう! いい加減にしろ!」


 門兵は2名。ライトとマリアの質問に答えようとせず、ただ二人を追い返そうとしている。

 すると、マリアの眼がスゥーっと細くなる。なにかやるつもりだとライトは止めようとするが、遅かった。


「わかりました。もうけっこうですわ……」

「わかればいい、さっさと帰……っつ!?」

「あら、どうしました?」

「……いや、なんでもない」


 門兵2名は、なぜか首筋を押さえてキョロキョロする。

 ライトは、マリアのスカート下から伸びている、ロープほどの太さの『百足鱗』を見た。先端には歪な刃の羽が一つ付いており、死角から伸びて門兵二人の首を僅かに切りつけたのを目撃していた。


「最後に聞かせて下さいな。あなたたち、わたしをどう思います?」

「は? 何言ってるんだ?」

「いいから、さっさと帰れ!」

「ふふ、『無関心』ですわね……捕まえた♪」

「「っ!?」」


 突如、門兵二人の身体がビクンと跳ねる。

 

「ふふ、久しぶりに使いましたわ。第二階梯、『情上支配キス・オブ・ジ・アミティーエ』」


 精神支配。

 傷を付けた相手の精神を支配する技。正確には支配ではなく、感情を増減させる技である。

 今は、門兵二人にある『マリアへの下心』を上昇させ、『敵意』の感情を極限まで下降させた。


「……おっかねぇ技」

「お褒めいただき光栄ですわ。では、いくつか質問をします。ちゃんと答えたら……ご褒美をあげますわ」

「ご、ご褒美……な、なんでも答えます!」

「お、オレも答えます!」

「ふふ、いい子ね」


 門兵二人を完全に手なずけたマリアは、いくつかの質問をする。


「リンはどこ?」

「勇者リンか……イエヤス様のお気に入り少女だろう? 一緒にここを通って行ったぞ」

「ああ、なんだか楽しそうだった。こりゃ二十人目が決まったようなモンだ」

「……どういうことですか?」

「イエヤス様、愛人がいっぱいいるんだよ」

「…………」


 ライトは、門兵二人に質問して情報を引き出すマリアに感心していた。能力がハマればこうも恐ろしいとは……。

 だが、これでリンに近付いた。


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