売価幾何

思い出を詰め込んで売りに出した。

私の中で何年も息づいてきた生命だ、ずいぶん重くて運ぶのには骨が折れた。

どんな器物にも値がつく悲しい世界だ。

私が思うよりも彼らは高く売れた。

別に値段で私の気持ちが変わるわけではないが、とは言え財布は膨らんだようだ。

別に嬉しくもないんだが。


こうして私たちは日々を切り取って売り払う。

虚しいと笑うなかれ、金は血だ。

そこに気づけば少しは楽になる。

寂しいなどと思うわけじゃない。

妙に部屋が広くなって落ち着かないだけだ。


軽くなった鞄を抱え、私は歩を速める。

後悔は無い。遺恨も無い。身体の一部が無くなっただけの話だ。

いつか四肢のすべてを捨てる日が来る、そんな予感を胸に潜めて。

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