第26話
女子寮の入口の受付で呼び出しを頼む。当たり前だが男子は入れない。とは言え、個人的な事も学園の公的な用事があった時も受付の寮員に頼めば呼び出してくれる。もちろん、拒否する権利や居留守を使う事も寮員が融通を利かせる。
大会の翌日は休日だ。騎士科は大会後体力を回復させるため三連休を貰うが他の科の生徒も今日は休みだ。寮員に頼み、コーデリアを呼び出して貰う。
「準優勝、おめでとうございます!ランダード様!」
「お、おう」
いきなりだな?でも優勝してやる、とか言って負けたのに普通に祝ってくれて嬉しい。いや、そうだな、コーデリアはそう言う奴だ。
「でもでも、優勝出来なかったからぁ、賭けは私の勝ちだね!!何して貰おっかなあ?」
「…」
そうだ…コーデリアはこう言う奴だ…。
兄貴のやった事、アルン様に謝りたい。そりゃ、オレがやった訳じゃない。アルン様もマリアも許すも何もそう言うだろう。でも、ケジメだ。やはりオレからもキチンと謝りたい。でもそれ自体がオレの我儘だ。単に、オレが気持ちよくないから謝る。でもまあ、それが良い事かどうかイマイチわからない。だからこそどうしたら良いかコーデリアに相談しようと思ったのだが。
「んーとね、じゃあ、ランダード様が私にランチ奢るって事で!もちろん、ちょっといい所ね!ところで、何の用事ですか?ランダード様?」
「…やれやれ」
だがまあ、ちょうどいいかも知れないな。
昼にはちょっと早いが二人で街に出る。ついでに買い物でもして行こう。
「そう言えばお怪我は大丈夫なんですか?」
「ん、ああ、普通に歩く分には問題ない」
ふらっと街を歩く。そう言えばいつもマリアかアルン様がいるのでコーデリアと二人きりになるのは初めてな気がするな。ん?これ、実質デートじゃないのか?
「お昼何たべようかなあ?」
「何でもいいよ、付き合う」
街を歩き商店街に入る。
「あ、ちょっとこのお店寄っていい?」
何やら女性が好きそうな小物が並ぶ雑貨屋を指差す。そう言えば修道院でも雑貨屋を覗いてたな。
女性向けの雑貨屋なんだろな、可愛い系?の便箋やら小箱やら小物の類いが多い。ちょっとオレが買うような物はないな。
「うーん、どうしようかなあ」
「なんだ、どうしたんだ?」
何やら小物コーナー?でウンウン悩んでる。
「この髪留め、可愛くない?でもこっちのヤツも気になるんだよねぇ…」
なるほど、いつもちょこんと髪を留めてポニーにしてるもんな、新しい髪留めが欲しいのか。
「どっちが似合うと思う?」
「いいよ、買ってやるよ、両方」
「えっ」
可愛さはどっちが良いとかかわからない。でも両方ともコーデリアに似合うと思う。そんな高い物でもないしな。
「いやいやいや!おかしいでしょ、どっちが似合うか聞いてるんだから似合う方選んでよ!それを買って?」
思わず吹き出す。買わせるのは買わせるんだ…それなら両方ともでよくないか?オレが買うんだから。こういう所がホント面白いな、コーデリア。
とは言え、女性の物には本当疎い。どっちが可愛いかと言われてもだなあ、値段もほぼ一緒だし…ん?
「こっちにするか」
「お?こっちが似合う?」
「んー、そうだなあ。何となくだけど」
選んだのは黒いゴムで留める小さな青い星が付いた物だ。栗色の髪になら似合うだろう。多分。
「じゃあ、コレ、お願いしようかな…」
カウンターで包んで貰い、支払いを済ませる。時間もちょうどいい、昼を食べに行くか。
「なるほど〜それはランダード様も複雑だよね…」
昼食のランチを食べながら兄貴の事、オレからも謝りたい事を話す。
「まあ、マリアもアルン様もランダード様の事を怒ったり嫌いにはならないし、それこそ気にしないでって言いそうだね」
「だよなあ。でもなんか、オレ自身が気持ち悪いんだよ…ケジメと言うか…こう、知らなかったからって言うのはな」
「真面目だよね〜マリアに聞いてみたら?多分気にするなって笑い飛ばすよ?」
マリアはそうだろなあ。
「アルン様だって、一緒に修道院行ったりした仲じゃない、多分ランダード様を責めたりしないよ」
「でも、オレと居て嫌な事を思い出させてしまわないか?」
「今更〜?クリュート様が殿下の側近として居たのもランダード様が弟なのも知ってる事じゃない」
…確かに。
「でも、自分で伝えるのは良いと思うよ。誰か、他の人から聞くよりは」
「…そうだな」
「後は、マリアに任せちゃお?私達は、アルン様を楽しくする係って事で!」
何だそれ?そんな事言ってマリア怒らないか?『そんなのズルい!』とか言いだしそうたな…想像したら思わず笑ってしまう。
「フフ、そうだな、そうするか。後は、マリアに任せよう。アイツなら、上手い事まとめてくれる」
少し気持ちが楽になったな。
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