26日目 Amazon Blue Waltz

 アマゾンでは、数多くの生き物たちが住み、その中では独自の生態系が生まれている。

 アマゾンという場所にのみ生息する植物などは、基本的にその特異な気候の中で育ってはいるが、別の土地に移ると一変し、その生態を変えることも多いと言われていいる。その場所であるからこその生物としての神秘を無視した高い順応性もまた、このアマゾンならでは、と言える。

 アマゾンと言えば、やはり最も目を引くのは、広く、そして長いアマゾン川である。

 全長、川幅共に計測不能というこの情報は雨季と乾季によって変化してしまうこともさることながら、川が枝分かれすることも多く、そもそも川の計測自体の正当性をどの点で証明するか、という部分こそ問題であるとも言える。

 アマゾンの天気は常に変わりやすく、その中でも、雨季では大量の雨が短時間で降ったり止んだりを繰り返すため、昆虫や鳥など数多くの生物がその気候の移り変わりに付いていくことができずに、溺死や圧死するなどの姿が数多くみられる。しかし、その反面、乾季後の雨季によって恵の雨であることは間違いがなく、川が撹拌されることによって、微生物が活発に動き回り水棲生物たちにとっては必要不可欠な期間ともなりうる。このことから菱模のキラントゥクールから東に位置するこのアマゾン川の上流、ヘンセイの民は口をそろえて、カエントラ。神々の処刑台と表現する。

 なるほど、生物は死に絶える様は神々が多くの罪深き命を処刑台に送るために水で洗い流しているように見えるようである。ただ、このカエントラという単語、アジアの小国である百父群では、微妙に発音が変化しツァエントラスという形で残っている。意味はここでは不思議と翻り、大熊の花、となる。百父群ではただの熊では暴君の意味となるが、大熊となると人との対話を可能とし、生贄を捧げることで神との交信を助ける存在と信じられている。このことから、この大熊の花は、アマゾンの雨季によって死に絶えた生き物たちの命によって交信を行い、人々に恩恵をもたらす、実りある川を作り出す宗教的意味合いの儀式としての形がかなり強い。これは、アマゾンの下流であるアジアにとっては、アマゾンの雨季は自国の土を肥沃なものとしてくれる存在としてむしろありがたいものであることに起因する。

 さて、この雨季だが期間は余りにも短く、二週間とされている。一年の中でもたった二週間と言うこの短い期間にアマゾンの研究をしようとする研究者が詰めかけたり、観光客が集まったりと、アマゾン界隈はこの期間、観光地としてごった返す訳だが、筆者としては、むしろこの雨季の終わった後こそ見ものであると考える。

 雨季の最中は常に川の中は撹拌されるわけであり、それは水流自体に大きく影響を与えてしまうため、雨が止んだ後も激しい流れは続いてしまう。およそ、雨季が明けてから五日は続くと言われているが、その水流が落ち着いた瞬間、アマゾンの川の水流がほぼ一定の速度になることがある。これだけでも十分奇跡に近いのだが、次に、撹拌されていた土がほぼ同じ地層のものであるという偶然も重なると、土や砂利などが水流の速度の丁度四分の三の速度で水底に落下する。

 これはタンブラスとされ、川を覗くとまるで水底が実際に深さよりも遥か手前にできているかのように錯覚する。つまり、足がついてしまうほどの浅瀬に見えてしまうという現象が引き起こされる。これによって勘違いをした観光客がアマゾン川に入り込み、おぼれて亡くなるという事件が数多く発生している。

 そして、このタンブラス現象だが、ごくごく稀にその水面を亡くなった生き物たちの体液や飛蝗などの昆虫たちの油などが覆うことがある。そこに天気が晴れであれば、ある神秘的な光景が生まれる。

 アマゾン川の水面に、青空がそのままそっくり映り込むのである。

 それが。

 Amazon Blue



 僕はそんな記事を思い出して、いつかその光景を生で目に焼き付けるために必要な資金の計算を何度も繰り返し。

 あるヤグトニアという国の旅行会社が企画するツアーに参加するのが得策だそうだ。お金もかからないし、かなり満喫することができる。ゆとりのある旅ができるそうだ。

 けれど。

 そのツアーに参加するための最低年齢は、高校生以上。

 僕は高校生にならなければいけない。

 そして。

 僕は四日後に絶対死ぬ。

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