最終章:夢が生まれた日

僕は……

 永遠銀盤エターナル・シルバボードの技術をつぎはぎに、財団が用意していたのはともいうべき機動人間だった。なぜその姿がカシヒトに似ていたか? それは、先行して水間夫妻が動作させたカシヒトの動作を4Dスキャニングすることによって『コピー&ペースト』したからだった。


 しかし財団は機動人間の技術を、人類や世界の調和のために利用しない--カシヒトたちは財団が所持している永遠銀盤の回収ができなければ、破壊することも考えていた。それはカシヒトがもとの寿命をまっとうして、延命もアンドロナイズもしないという選択でもあった。


 カシヒトと「造られた」カシヒトの戦いは、熾烈しれつを極める。「造られた」カシヒトの一言一言は、カシヒトの存在を揺らがせる。

「僕は君だ」

「しょせん君も僕も、永遠銀盤という設計図から生み出された機械だ」




 そうだ。



 でも。



 違う。



 僕は……




 僕、、は--





 貯蔵エネルギーも限界となり、リモートからの通信も届かなくなる。つながりのない世界、電波技術暗室空間に引き込んだ「造られた」カシヒトは、カシヒトへセルフkillall、kill -9、init 0、rm -Rf を発動させる。それは財団から「生き延びるため」と間違ってプログラミングだった。



「僕たちはだまされていたんだな」

「造られた」カシヒトの、最後の発言は、後ろ半分がノイズでひずんだ。

「違う、僕たちは……」



 最後の力をふりしぼって、カシヒトは彼を連れて重いドアを開く。外から扉を破壊しようとした、アイカ、リウノリ、仲間ともだちの機動人間と通信がリンクする。


 救い出されたカシヒトは、両親や皆に囲まれながら、……目を閉じた。







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