第36話 あのお菓子の家
「ヨハンさん、これからこの4人で妖精の森に入ります。子供達が見付かったら、すぐに連れて帰りますからね」
「有難うございます、どうかよろしくお願い致します」
「ちょっと後ろを向いて!」
ルミナがヨハンを半回転させた。
「【完全回復】パーフェクトヒール!」
シュィイイイイインッ!
「あんっ! 気持ちいいぃぃっ」
思わずヨハンから声が漏れた。
「これでもう腰は大丈夫。大人しく町で待っているのよ!」
「はい」
「さすがルミナさんっ! 光属性の上級回復魔法が使えるのですね」
ユングが感動していた。
俺達4人は町の外の木陰にやって来ると、
「妖精の森の家に、【転移門】テレポゲートオープン!」
ブゥウウウウウンッ!
4人で次々とゲートを潜り、妖精の森の玄関前に出た。
「ここがユウリさんの家なのですね?」
「はい、そうです。あまりここには居ませんけどね」
「可愛いデザインですね」
「ありがとう、それでは子供達を捜してみましょう。
【レーダーマップ】を展開、ハンツとグレンダを【探索】……見付かりました! ここからは歩いて行きましょう」
俺達は森の中を30分程歩いて行く。
「あれ!
先頭を歩く俺が、真っ先に気が付いた。
「右にも左にも、泣いてる顔、怒ってる顔、困ってる顔……笑ってる顔は無いんだね」
「ちょっと~、気持ち悪いわね~」
「ルミちゃん、案山子を知ってるの~?」
「オゼの魔法使いに出てくるヤツよね」
「正解だけど、元々は畑の
「へ~っ、私は知りませんでした」
「ユングさんが知らないのは、お城で育ったからですね」
「はい……手に本物の鎌や鍬を持ってるものなんですね」
「えっ!」
そう言った途端、案山子達が一斉に襲い掛かってきた!
「キャッ!」
「イヤ~ン!」
俺とユングは、女子2人に襲い掛かる案山子を優先的に剣で薙ぎ払い、女子を挟むようにして何とか防御体制を整えた。
「エリナ、ルミナ! 俺達が剣で防いでる間に魔法で反撃を!」
「「オッケー……【火弾】ファイヤーボール!」」
ボワワッ、ドドォオオオンッ!
メラメラメラメラ……!
「火に弱いぞ! 続けて【火弾】を撃って!」
俺も2人と一緒に魔法を撃つ。
「「「【火弾】ファイヤーボール!」」」
ボワワワッ、ドドォオオオオオンッ!
メラメラメラメラメラメラ……!
ユングさんは俺の反対側で、剣で案山子を切り払っていた。
「ふぅぅっ、全部倒したみたいだね。山火事にならないように、燃えてる案山子に水を掛けておこうよ」
「「「【水弾】」」」
ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……
「ふぅぅ、結構驚いたね~」
「今までで、一番
「ワルキューレの私に『キャッ!』って言わせるなんて!」
「魔女の魔法で動いてたのでしょうか?」
ユングが首を傾げる。
「まだまだ知らない魔法があるんだね~」
エリナがルミナを見つめて言った。
「闇属性の中級魔法を使うハイウイザードかしらね」
暫く行くと、2メートルぐらいの高さの
入口らしき所に立て看板がある。
『生垣の跳び越え、破壊禁止。破った者はクエスト失敗と
「生け垣が高くて先が全然見えないね」
「ここは私が先頭を行きましょう」
「え~と、王子を危険な目に会わす事は出来ません」
「私は騎士ですし、活躍する所も皆さんに見て貰いたいのです」
「そうですね、分かりました。お願いします」
(王子が怪我をしないようにフォローしないとなぁ)
俺は【レーダーマップ】と【探知】スキルをコッソリと展開した。
「ウワッ!」
先頭のユングがワナに掛かった!
浅い穴に泥水が溜まっていて、それを枯葉で隠してあったのだ。
「地味に嫌なワナですね、子供のイタズラみたいだな」
ユングがぼやいた。
「ユングさんを【洗浄】【乾燥】!」
シュィイイイイインッ、ふぁっさぁあああああっ!
ルミナがすぐに魔法で綺麗にした。
「ワ~ォ、ユングさん、ルミちゃんに綺麗にして貰って良かったね~」
「ワナがあってもルミナさんが居れば安心ですね」
「そう……大した事じゃ無いから別に良いけど。あんまり甘えないでよねっ!」
ルミナはプイッと横を向くが、言葉とは裏腹に頬が赤くなっていた。
(ごちそうさまです!!)
角を曲がる度にワナや魔物に襲われる。
魔物は半人間化したカラスで、日本のカラス天狗を小さく黒くした感じだ。
子供サイズの体に
強くなく、ワナ同様に驚かすのが役割なのだろうか? 簡単にファイヤーボールの餌食になった。
ワナも変だ!
木の棒で支えられた丸いカゴの中にペロペロキャンディーが置いて有ったり、
『押すな!』と書いてあるボタンの上に、
透明のバスタブに熱湯が入っていたりした。
「こんなワナに引っ掛ると思ってるのかしら?」……ウズウズ!
「そうよね~。『押すなよ押すなよ!』ってなると、思ってるのかな~?」……ウズウズ!
「2人供、もうちょっと罠から離れようね。だんだんと近づいて行ってるよ!」
リアクション芸人かっ!
ちょっと不安を感じながらも、何とか無事にお菓子の家にたどり着いた。
ドアが開き、魔女らしき老婆が現われる。
いよいよ決戦だ!
「ナゾナゾだよ……」
ボソッと魔女が喋った。
「「「はぁ!?」」」
「魔女と龍がムキムキのプロレスラーを見て叫んだのじゃ! 何と言ったか?」
「そんなの知らないよ~!」
「エリナ、ナゾナゾは何処かにヒントがあるんだよ!
まじょとりゅう、ムキムキプロレスラー。
マジョとどらごん、プロレスラー。
…………マッチョドラゴン!」
「正解じゃああぁぁぁっ!」
魔女は煙と共に地面に消えていく。
「まさか、この難問を一発で解ける者がいるなんてぇぇぇ……!」
森に老婆の声が響き、後には『銀の靴』がドロップしていた。
(高難度のクエストって……ダジャレナゾナゾかよっ!)
家の中に入り、スープを作っているグレンダと、檻に閉じ込められてるハンツを助けだす。
「お兄ちゃん達は、君達のお父さんに頼まれて探しに来たんだよ」
「「ありがとう」」
「これが魔法の鍋だよね? 他に見当たらないし」
タラリラリラリラリンッ!
ユウリはレアアイテムの『魔法の鍋』を手に入れた!
「リリーメルへ【転移門】テレポゲートオープン!」
ブゥウウウウウンッ!
「「おとうさんっ!」」
「ハンツ!グレンダ!」
町の広場まで来ると、子供達は父ヨハンを見つけて走り出し、抱き合って無事を喜び合うのだった。
「「よかったよかったぁ!」」
俺とエリナがシンクロして言った。
ところで、そのヨハンに研修所側の雑貨店の店主をして貰う事にした。
ハンツとグレンダも一緒で、研修所に住み込みで働いてもらう。
ヨハンの家は、借金のカタに取られてしまうと言うので、家を処分して足りない分を肩代わりして借金を清算した。
本人達の希望で、ハンツとグレンダは犬人族と一緒に文字と算数を勉強する事になり。武術と料理も覚えたいと言っている。
従業員用装備セットを3人にも支給した。
【後書き】
ナゾナゾに付いてはマッチョドラゴンとプロレスラーで検索してみて下さい。
残念な姉女神のダジャレと言う設定です。
『魔法の鍋』……
『従業員用装備セット』
マジックバッグ……50種類の道具収納。
緊急転移リング……危険時に研修所に転移。
無線ブローチ……スターとレックみたいな物。
犯罪者撃退ボール……犯罪者に麻痺目潰し。
魔物除けネックレス……魔物を寄せ付ない。
オウム型トーチ……肩乗せライト。
着替ワンタッチテント……キャンプ用品。
魔法の水袋……10リットル水が入る。
シャベル・マグカップ・スプーン・歯磨きセット・ヘアブラシ・寝袋・折り畳みマット
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