第33話 討伐の褒美
数日後、ホクオー国の勅使が研修所を訪れた。
「オークキングとオークの群れ、オーガロードとオーガの群れを討伐したユウリとそのパーティに、国王陛下より褒章を
俺達は
「ははぁっ、有り難き幸せで御座います」
勅使を豪華料理で歓待して、満足して(たぶん)貰いお帰り頂いた。
褒美の内容は以下の通りだった。
パーティ全員に金貨10枚、合計50枚
宿泊業の税金を3年間免除
牛10頭 馬4頭
羊10匹 山羊10匹
鶏10羽 鴨10羽
「うん、落し所としては結構良いかなぁ?」
「そうね、ユウリがバレバレで、ヤラカシタけど、国王陛下も良く考えて妥協してくれたみたいね」
「ルミちゃんは結構容赦なく言うよね」
「ユウリも変装すれば良いんじゃないかしら、口の周りを黒く塗るとか?」
空き巣じゃないですかっ!
「叙爵や領地を貰わなくて良かったよ。……返礼は、魔法付与した貴金属にでもしようか?」
「家に有る1番大きなサファイヤで、ネックレスでもどうかしら?」
とユキが意見を答えた。
「そうだね。……今度ボアズさんかユングさんに、問題ないか聞いてみようね」
「う~んっ。私達が、いよいよフェアリークレストとして活躍しなきゃね~!」
「そうよエリナ! 私達の活躍を皆待ってるわ!」
「そうね、ルミちゃん! コスとダンスを決めましょ~!」
「はいはいっ。エリナの春休みは、もうすぐ終わりだからね」
「お兄ちゃんにもシルクハットマスクの衣装を作るからっ! 私達のピンチに颯爽と助けに来るのよっ!」
それって、普通の燕尾服でしょっ!
「……お願いだから、そう言う状況には、ならないでね」
異世界での収入源を、確認してみよう。
研修所の宿泊費とレストランの売り上げ。
採掘した鉱物資源で、魔道具・武具・アイテムを作り、採取した薬草でポーションを作り、新設の雑貨店で販売する。
冒険者のガイド・要人や商隊の護衛等をして、クエスト成功報酬をギルドで受け取る。
ドロップアイテムや妖精の森で採取した薬草・木の実・蜂蜜をリリーメルのギルドと雑貨店で売る。
リリーメルの雑貨店の注文に答えて、品物を卸す。商売敵にならずに、仲良くして行きたいから。
商品の販売価格もリリーメルの雑貨店と同じにする。
雑貨店は、コンビニぐらいの大きさの物を研修所の街道よりに建設する。
研修所への街道口には、『冒険者の宿・雑貨店』の看板を立てた。民の識字率が低いから、分かり易くする為に木彫りの彫刻を入れて、カラフルに色付けした。
オゥちゃんと俺のスキルをフル活用して、雑貨店を新築して既存の施設の改善もする。
侍従達が畑と家畜の世話をして、家事もしてくれるので、空き時間が増えている。社畜の様には働かないで、物作りを楽しませてもらおう。
珠に訪れる病人や怪我人の回復・治療は、無料で行ってる。
翌日、商業ギルドの職員3人が研修所を訪れた。
「お早う御座います、私は商業ギルドハーマル支部長のマルケル。こちらは、ポーラとアーセルです」
中年男性と若手女子と若手男子だ。
「支配人のユウリです、お早う御座います」
研修所長は現世に居る事が多いので、俺が異世界の研修所支配人となっていた。
「新しく宿泊所を始めたと聞いて、訪ねて参りました。商業ギルドへの加入登録をお願い致します」
「はい」
「商業ギルドは冒険者ギルドと同じく、国々に
加入した組合員には、商品輸送の保護、売掛金の仲介・入出金の管理、税金の申告・納税の代行、新商品の開発者登録、特許料金の収受、特許権利の調査、店舗と商品の保険等を行っています」
「はい」
「本日は、登録業務の他にも店舗規模・販売商品・食堂のメニューを調べさせて頂きたいと思います」
「はい、結構です」
「ご協力有難う御座います。それでは私が加入契約書を作らせて戴きます。その間に、こちらの2人は営業調査をさせて戴きますね」
「はい」
「有難う御座いました。これで今日の手続きと調査を終わりますが、調査中に見付けた新商品と新メニューの登録調査を、商業ギルドに戻ってから行います。
たぶん幾つかの開発者登録と特許権の手続きが発生すると思いますが、その時はギルドで手続きをして頂く事になると思います」
「はい」
「最後に、魔道具に関しては、商業ギルドの管轄外となってます。
通常の魔道具製作は秘密主義であり、覚えて無い魔法や魔道術式は付与が出来ない等、製作者が限られる為です。
魔道具製作のレシピは御自身で管理して、販売も自己責任で行って下さい」
「はい、ご苦労様でした。……どうぞお食事をなさって、
宜しければ、幌馬車で御送りしますね」
「はい、有難う御座います」
「「有難う御座います」」
マルケルに続いて、ポーラとアーセルがお礼を言った。
「ふ~っ、こちらから商業ギルドに登録しに行こうと思ってたけど、来てくれて良かったです」
「ユウリ君は討伐クエストを受けて、雑貨店の新設もして、忙しかったからね」
「所長もヤマちゃんとコミケ関連で忙しそうでしたからね」
「はははっ、趣味に没頭して申し訳ない」
「いえいえ、俺も充実した日々を楽しませて貰ってますから」
「そう言ってくれると助かるよ」
「そろそろエリナの春休みは終わりますけど、所長は一緒に帰るのですか?」
「そうしようかと思ってるんだ」
「異世界転移門は、オゥちゃん
「その方が効率的だよね?」
「そうですね。……それでは、魔道術式の発動チェックをしておきますね」
「うん、お願いするね」
レストランに行くと、商業ギルドの職員達が食事を楽しんでいる。
その隣では、オーディン様とフレイヤ様がお茶をしていた。
「
「こんにちは、ユウリ。……チョコレートケーキとやらは、まだ出来ないのですか?」
「はい、
「うん? カカオならタルーク帝国の市場で売っておるぞ」
「本当ですか
「ふむ、良かろう。ケバブにバナナにマンゴーも買って帰ろうぞ」
「はい、お願いします」
あっ、ギルド職員達の耳がこっちを向いてる。
支部長のマルケルが、こっちをふり向いた。
「ユウリ様、アシアン地方のタルーク帝国には、商業ギルドがまだ進出していないのです。南国の果物を輸入して販売したら、大きな利益が出るでしょう」
「はははっ、帰って来たら情報を御教え致しましょう」
新商品を作った時は、商業ギルドで必ず実用新案登録をしなければならない。
それを判断し管理するのも商業ギルドの仕事である。
既に登録されてる物を作って販売すれば、特許使用料を支払わなければならない。
特許は国際問題が起こらない様に商業ギルドが管理している。
転生者にとっては早い者勝ちで、誰かが特許を取得する事になる。
特許料は販売価格の4%、ギルド手数料が1%と定められている。
商業ギルドとしては、この1%は結構な収入らしく、特許管理に力を入れている。
(この話の中の設定です)
オーディン様と2人だけでタルーク帝国に転移した。
カカオは見付かったが、熱帯地方のガルナ(現世のアフリカ赤道付近)という所から、輸入してるらしい。
船便で1ヶ月以上かかると言う事だった。
「お義父様、折角だからケバブを食べましょうか?」
「そうじゃな、シェルベトと言うジュースも飲んでみよう」
「う~ん、ケバブは日本で食べるのと変わらんな。いや、むしろ日本の方が美味いな!」
「お義父様は、世界中を旅して、舌が肥えてしまったんじゃないですか?」
「そうかも知れぬが、日本は世界中の料理が集まる
「そうですね、日本は食材とスパイスも豊富ですしね。……でも、このシェルベトは初めて飲む美味しい味です」
甘味とシナモンが香る赤い果物ジュースだった。
バナナにマンゴー、パイナップルも売っているが、やはり輸入品が多いらしい。
「もっと南の国に行かないと、カカオも熱帯のフルーツも作ってないのですね」
「そうじゃな、ミスルム国(現世のエジプト付近)から南は未開地で、国家は無く文化も低い、わしも行った事が無いのじゃ」
「う~ん、美味しい御菓子を作る為に、熱帯の無人島で果物の栽培でもしましようか? チョコレートケーキやフルーツケーキを作れば、フレイヤ様も喜ばれると思います」
「ほう、それは良い考えじゃ。スレイプニルで南方に飛んで探して見るか!」
「はい。そういえばグラーニも飛べると言ってました」
「じゃあ、わしのスレイプニルとユキのグラーニに乗って熱帯の無人島を探しに行こうぞ」
「はい」
俺は研修所へのお土産に、果物とシェケリ・ロクム・キュネフェという菓子を沢山買って帰った。
異国の珍しいお菓子に、皆、興味津々だった。
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