第9話 研修所長コンちゃんの話

 研修所の所長コンちゃん視点の話です。

 悠里の妹エリナが登場します。


 ☆ ▼ 〇


 コミケ友達のヤマちゃんから大きな荷物が届いた。

 同封されてた手紙には、こう書かれている。


「コンちゃんお久しぶりです、元気ですか?

 この荷物は、僕が日本を去る事に成った時に、君に届くようにと頼んでおいた物です。

 だから君に届いた時には、僕はもう、この世界に居ないはずです。


 中に入ってる物は、【異世界転移門】の魔道術式と魔石と魔石インクです。


 それと緊急用異世界転移魔道具も一つ有りますが、1回使うと壊れてしまいますから慎重に使って下さい。

 その他の物も使用限度と寿命が有りますので、必ず異世界で補充と充填をして下さいね。さもないと役に立たなく成ってしまいますよ。


 魔道術式は魔石インクで書いて下さい。

 魔石インクは、インクの中に魔石をすり潰した粉を入れて作るのです。


 魔石は採取した魔物によって質が違い、蓄えられるMPマナの上限も違います。

 基本的に強い魔物ほど良い魔石を持っています。

 異世界で沢山魔石を集めて、十分にMPマナを充填して持って帰って下さい。


 現世には異世界の10%ほどの魔力濃度しか有りません。

 魔力濃度が低いためMPマナが溜まり難く、その為に魔法もスキルも発動しにくいのです。

 結果的に経験地も得られませんから、スキルも覚える事ができません。


 現世のほとんどの人間は、MPが10から30程度しか有りませんが、【異世界転移門】を開くにはMP500以上が必要とされます。

 さらに転移門を開いたまま維持するには、1秒あたりMP50以上が必要です。


 魔道術式の上に十分なMPマナを溜め込んだ魔石を載せ、「開け異世界転移門」と、唱えてください。

 その時に、転移先に居る人物を強く意識すれば、その人のいる場所に門が繋がります。


 転移先には、妖精族の巨人オログ=ハイ、『オゥちゃん』をお勧めします。

 彼はとてもやさしく親切で、1人で妖精の森に住んでいます。

 彼の家から近くの町までは、歩いて1時間ほどで着くと思います。

 怪しまれないように、町から離れている所で準備を整えてから、現地人と交わった方が良いでしょう。


 オゥちゃんは、たまに薪を町に売りに行くので、連れていって貰うと良いと思います。

 それに彼はとても強いので、魔物や獣から守ってくれることでしょう。


 コンちゃんの幸運を祈ります、良い異世界体験が出来ます様に。

 ヤマちゃんより」






 異世界転移はうまくいった。

 オゥちゃんと出会い、異世界で数週間暮らした。

 オゥちゃんに手伝って貰いながら、魔石を溜めて魔石インクを作り魔道術式を書いた。

 又、町の生活習慣を見て歩き、準備するべき必要な物を調べた。


 そして現世に帰ってきた。

 再び異世界に行き、うまく冒険する為に色々準備しよう。

 そうだ、一緒に異世界へ行く有能な仲間を育てる異世界生活研修所を開設しよう。




 開設したばかりで、いきなり有能な人物の悠里君が、研修所にやって来た。

 異世界でやっと得たスキル【鑑定】LV1で悠里くんのステータスを見たら、MPマナが何と500も有る。

 異世界への行き来が容易く成るだろう。

 スキルも一つ持っているようだが、内容は解らなかった。きっと、私の鑑定スキルが低い為だろう。


 研修後に彼を呼んで、現地実習を説得する。

 彼は、なぜかポヤポヤしながらも異世界行きを了承してくれた。


 ボンネットの裏に、魔石インクで異次元転移の魔道術式を書いたタクシー魔道具で、長山さんと一緒に転移してもらう。

 私の好きな映画と同じように、かっこよく転移できるはずだ。

 長山さんのMPは50有る。

 スタッフの中でMPが1番多いから、タクシー魔道具の運転手に選ばれたのだ。




 出発してから30分程で、長山さんが1人で帰ってきた!

 大きな獣に襲われ、魔道具タクシーも魔石も無くなってしまったと言うことだ。


 長山さんは、緊急用のブレスレット型異世界転移魔道具で現世に戻ってきたという。

 そのブレスレットは魔石にヒビが入ってしまっていて、もう使えないだろう。

 こちらには十分なマナを充填してある魔石は残ってなく、新しく魔石インクも作れない。

 異世界転移門の魔道術式を、1回書くぐらいの魔石インクしか残ってないのだ。


 もう異世界へ行くことは、出来ないのだろうか?

 悠里君は、大丈夫だろうか?




 そんな時に、可愛い女子高生が1人で研修所を尋ねてきた。


 悠里くんの妹のエリナちゃんだ。


 彼女のMPも500有る! なんて兄弟だ。

 しかも魔法少女のコスプレイヤーだっ! 

 もちろん今日は、私服で来たが……。


 ふぅ、萌えるぅぅ。

 マジで本物の魔法少女に成るかもしれないぞ!

 色々妄想してしまった私は、女性スタッフにボコられたが、これ以上の人材は無いはずだろう。


 我々は、彼女に特別研修を受けて貰い、出来る限りの必需品を持たせる事にした。



 残ってた魔石を異世界転移門の魔道術式の上に置き、異世界転移門を開き彼女を送り出す。

 彼女が飛び込むと転移門は一瞬で閉じてしまった。


 はたして2人は、無事に戻って来れるだろうか?

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