第5話 古の神具と弁当箱

「安心して1人暮らしできるように、護身用に『ミルニル』を貸してやるだぁ」


 どこの乳酸菌飲料ですかっ?


『ミルニル』は猫の手くらいの大きさで、西洋版打出の小槌みたいだった。



「襲われたらそれを振れぇ。使う時は大きくなるぞぉ」


「大きくっ……熱っ!」


 ゴトンッ!


 『ミルニル』は大きく成ると急激に熱くなり。思わず、手から床に落としてしまった。

 するとまた、スグに小さく成った。



「そういえばトールちゃんも手袋して『ミルニル』を使ってたなぁ、探してみるだぁ……」


 そう言って奥に入ると、スグに手袋を持って戻ってきた。



「これを着けて持ってみろぉ」


「大きくな~れ。 あっ、大きくなったけど全然熱さを感じ無い。

 もぐら叩きのハンマーよりちょっと大きいけど、これで護身用に成るかなぁ?」



「巨人族のほとんどが、トールちゃんの『ミルニル』で倒されたんだぞぅ」


「……それって、雷の神にして最強の戦神「トール」様の『ミョルニル』と『ヤールングレイプル』では?」


「んだぁ、その『ミルニル』と『ヤール……』の手袋だぁ」


 あっ、今、途中で諦めましたね。



『ミョルニル』

 俺は唇を突き出してオゥちゃんに教えて上げる。


『ミルニル』

 オゥちゃんも唇を突き出してくる。


『ミョ・ル・ニ・ルッ!』

『ミー・ル・ニ・ルッ』



「ふぅっ、もう『ミルニル』でもいいです」


「だなぁ」



「ふぅっ、はいはい。……それで、何でオゥちゃんが『ミルニル』を持ってるんですか?」


「戦場を片付けてて拾ったんだぁ。他にも沢山有るぞぉ」


「この家の中に? 沢山有る?」


「お弁当箱に入ってるぞぉ。見たいかぁ?」



 そう言って奥に入って、お弁当箱を持ってきた。

 可愛らしいピンクのお弁当箱だ。


『ワッツアップ キティ』(子猫ちゃん、最近どうヨ?)の、絵が描いてある。



「これに全部入ってるだぁ、まだ沢山入るぞぉ」


 そう言って中から大きな槍を取り出した。


「『ゲーボーグ』だぁ」

 どやぁ、と俺に顔を向けた。



「はいはい、『ゲイ・ボルグ』でしょっ!」


 神々の忘れ物センターですかっ?



「すごいだろぉ? お弁当箱。」


「おべんとーばこ、おべんとりーばこ、いべんとりーばこ……」


「インベントリーボックス!? 無限収納箱ですかっ! ……はあ、ダジャレが酷いっ!

 どうして薪を運ぶのにお弁当箱を使わないんですか?」


「町長が「薪を荷馬車一杯に積んで売りに来てくれ」って、言ったからだぁ」



「どうして車を運ぶのに、お弁当箱を使わなかったんですか?」


「ユウちゃんが、荷馬車に乗せて欲しそうに見てたからぁ? かっこいい変身も見せたかったからぁ?」


「ふぅっ、はいはい」



「もう1個お弁当箱を持ってるから、ユウちゃんにやるだぁ」


 また奥に入って行った。



「ほら、これをユウちゃんにやるぞぉ」


 同じ大きさの灰色のお弁当箱で『シット バツ助』の絵が描いてある。



 ピンク色のキティお弁当箱の方が、断然可愛いな……。

 そう思って見ていると、オゥちゃんの顔が徐々に寂しげに成っていくのが判った。


「有難う御座います、大事にしますね」


 オゥちゃんが、晴れやかにニマアッと笑った。



「判りやすいなぁ、オゥちゃんって。あははははっ……ところでこれ、2つとも拾ったんですか?」


「ドーナツ買ったら、くれたんだぁ」


「ミツドの販促ですかっ!」



 勇者じゃないし、まだ魔物に会ってもいないのに、最強の武器と無限収納箱をゲットしたらしい?

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