『真菌の中の水溜まり』

『真菌の中の水溜り』

突然、ざぶん、と水を踏み抜き、ギョッとした。


足元に目をやると、ひざ下までの水の中にいた。

靴に生暖かい水が流れ込み、思わず身震いしてしまう。


周りを見渡すが黒々とした水面が続いており

私の身じろぎで生じた波は、静かに消えていった。


森や広場の景色は消え去っていた。

女神像も姿かたちなく、私だけがいつの間にか沼の只中に立っている。


意識して眺めると、汚泥に佇む葦やファンガスの死骸や

あらゆる姿の石像が沼に沈んでいた。


点在する幽霊の様な木は其々ロープで繋がっており、私はソレを辿ることにした。


最初のロープに手をかけた時、怪しげな道しるべに罠という言葉が過り、

最悪の未来を予想してしまう。


しかし、このまま何もせず沈むよりは身体を動かし、息絶えるまで進むのが良い。

怪しげな導きだったとしても、私はその道を歩むしかないのだから。


それが月光と、私を夢へと誘った大意思の思し召しなのだから。

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