第3話 未知 前編

進み出してからまだ一時間も経っていないが、その人影はすぐに姿を現した。

場所は違うが、さっきと同じ様にこちらに見向きもせずただその場で直立不動のままピクリとも動いていない。


「何か様子が変だ。 今度こそ奴の正体を暴いてやるぞ。」


そう言いながらヘルッコ伍長は俺について来るように合図を出した。

そんなヘルッコ伍長について行きつつも俺はあの人影に不審感を抱いていた。


あの一瞬の間に姿を消した時といい、あいつは何なんだ? それに、何だかあいつはやけに黒っぽい見た目をしているな。 丸焦げになった訳でもないだろうし、ウチにもソ連兵にもあんな真っ黒な迷彩服は見たことが無い……。


身長は平均的な成人男性の身長よりも少し高いぐらいで遠目に見れば人に見えるが、ヘルッコ伍長とは違い、イーヴァリにはその人影が"人ならざるもの"に見えて仕方がなかった。


「どうした? イーヴァリ。」


「いえ……何も。」


やはりヘルッコ伍長は人影の不審さには気付いていないようだ。

そうこうしてるうちにとうとう人影の姿を確認出来る所まで辿り着いた。


「これでようやく奴の正体が分かる……。」


ヘルッコ伍長は目を凝らし、その人影をよく観察しようとした。


「う、うわぁぁっ!!」


突如、人影を見ていたヘルッコ伍長が悲鳴を上げ、尻餅をついた。


「ヘルッコ伍長!?」


ヘルッコ伍長の額には汗がダラダラと垂れ落ち、その顔はまるで"この世のものではない化け物"を見た様な恐怖と絶望に塗れた表情だった。


「ヘルッコ伍長!一体どうしたんです!?」


ガタガタと震えるヘルッコ伍長を揺さぶり、正気を取り戻させようとしたが……身体中が震え、汗を至る所から垂れ流し、目は焦点が合っていない。

ヘルッコ伍長は完全なパニック状態に陥っていた。


「ば、ば、化け物だ!! 早くあそこに居る化け物を撃て!!!」


手を震わせながらヘルッコ伍長が指さした方を見た俺はあの人影の本当の姿に戦慄した。




な……んだ……アレは…………?






それはまさに……………………………………………………










"魔物"と呼ぶに相応しい見た目だった…………。

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