第13話 ゴメンね。

僕はさおちゃんの言葉を遮るように言った。

「いいよいいよ。こちらこそ…ゴメンね。

俺さ、こういうデートに慣れてなくって。疲れたでしょ。さおちゃんが行きたいトコあったら付き合うから、それで今日は解散しよ。」

「違うの。謝るのは私の方なの。」


予想外の言葉に僕は驚いた。

「えっ?さおちゃん。どういうこと?」

「私、陽くんを少し前から知ってるの。」

「えっ?」僕はバスターミナルのことを思い浮かべたが…


「私、実はあそこでバイトしているの。」

さおちゃんは僕と真莉が以前、入ったファスト・フード店を指差した。

「私がバイトで接客していると、店中に聞こえるクラクションが鳴ったの。私から道路の方が全部見えたんだ。足が悪いおばあちゃんが横断歩道を渡りきれずに困ってた。クラクションを鳴らされて…」

「さおちゃん…」


「私、バイトを放ったらかしても助けに行ってあげたかった。そしたらね、前を歩いていた男の人がわざわざおばあちゃんの手を引きに戻ってくれたの。私、本当に嬉しかった。」「……」


「私は聞こえなかったけど、その人おばあちゃんのために何かを言われてた。でも渡りきってみんなから拍手されてて…私もあそこで拍手してたんだ。その優しい男の人に。」

「そんな大したことじゃないよ。」「私にとっては大したことだよ。それからあの優しい人が目の前に現れた時はホントにビックリしたよ。私、陽くんにまた会えたことが本当に嬉しかった。それから段々と気になっちゃって…私から涼ちゃんにまた会いたいって言っちゃったよ…さっき、女の子に優しくしてあげるあなたを見て本当だと思った。私、陽くんのことが好きです。陽くんは私の事、どう思っていますか?」


想像を超える展開に僕の胸の鼓動は付いてこれていないようだった…




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