初めてのお友達

勝利だギューちゃん

第1話

今、僕は家にいる。


僕は、病気らしい。

今の医学では、治らないらしい。


なので、学校というものを知らない。

なので、友達はいない。


病院にいれば、少しは延命できるようだが、

僕は、在宅療法を選んだ。

病院にいるよりも、家を自分の死に場所に選んだ。


後悔はしていない。


日に日に、体が衰弱していっている。


両親は仕事で忙しい。

僕のために働いてくれている。

なので、わがままは言えない。


そんな僕に、両親はお世話係雇ってくれた。

メイドさんっていうんだっけ?

20歳のお姉さんだ。


「私は、芽衣。君は?拓真くんだっけ?」

「うん」

「いい名前だね」

「お父さんがね、たくましく育ってほしいと願いを込めたんだ」

「いいお父さんだね」

「でも、そうならなかったけどね・・・」

僕は、頭をかいた。


病気の事は、嘆かないようにしている。

嘆いても、神様もだれも、治すことが出来ない。


なので、明るく振る舞っている。


芽衣お姉ちゃんとは、すぐに仲良くなれた。

お姉ちゃんの欲しかった僕は、とても嬉しかった。


いつしか、お姉ちゃんと、呼ぶようになり、

お姉ちゃんも、実の弟のように可愛がってくれて。


「拓真くんは、強いね」

「どうして?」

「わからない?」

「うん」


お姉ちゃんは、笑っている。

この笑顔を見ると元気が出る。


お姉ちゃんにとっては、仕事の上なのはわかっている。

でも、それでもよかった。


僕に、お姉ちゃんが出来たのだから。


「私ね、拓真くんと、話していると楽しいよ」

「ぼくも」

「今日は、何が食べたい?何でも作ってあげる」

「じゃあ、オムライス」

「OK.ケチャップで似顔絵描いてあげるね」

「ありがとー」


お姉ちゃんの料理は、とても美味しい。

お母さんのよりも、美味しい。

ていったら、怒られるかな。


しかし、楽しい時間は続かない。


ある日僕は、ベットから起きようとして、倒れた。

物音が大きかったのか、すぐにお姉ちゃんが来てくれた。


「拓真くん、大丈夫?」

「・・・へい・・き・・・」

平気ではなかった。


でも、お姉ちゃんを心配させてくなかった。


すぐにお医者さんが来てくれた。

病院に搬送しようとしたが、僕は拒んだ。


僕の死に場所は、ここなんだ。


でも、もうじきクリスマスだ。

それまでは、生きていたい。


神様、ぼくの最後のわがままをきいて下さい。


「拓真くん、君の願い叶えてあげる」

「お姉ちゃん?」

「一緒に過ごそう。クリスマス。でも、少し早いけどね」

「お姉ちゃん」


お姉ちゃんの体が光り出した。

その格好は、サンタさん?


「拓真くん、実は私は人間じゃないんだ」

「どういうこと?」

「君たちの言葉でいう、天使になるわ」

「天使・・・さん」

絵本で見た事のある、天使とはかけ離れていた。


「この格好は、サービス」

「えっ、」

「さっ、行きましょう。サンタの国へ」

お姉ちゃんに連れられて、僕はサンタの国へ行った。


サンタさんの国では、僕を歓迎してくれた。

でも、僕意外にも、たくさんの子供たちがいた。


「拓真くん」

「何?」

「この子たちはね、君と同じ」

「僕と?」

「うん。病気で苦しんでいる子」

「病気で?」

お姉ちゃんは、続けた。


「もうひとつね、それを他人に見せない心の強い子」

「ぼくは、そんなに・・・」

「ううん。君を見ていてはっきりしたわ。君は強い」

照れくさかった。


「でも、君の命を助ける事はできない」

「いいよ、お姉ちゃん」

「どうして?」

「僕、後悔はないから」

「やはり強いね」

お姉ちゃんは、僕をハグしてくれた。


すると、我慢してきた物があふれてきた。


「いいんだよ。泣いていいんだよ。よくがんばったね」

僕は、こらえる事が出来なかった。


気がついたら、僕は家のベットに寝ていた。

お姉ちゃんは、いなかった・・・


でも、なんだか心地よさがあった。


翌日、僕は両親に見守られて、天国へと行った。

寂しくなかった。

なぜなら、天国ではお姉ちゃんが迎えてくれる。

そう信じていた。


天国では、あの時の子供たちがたくさんいた。


でも、お姉ちゃんはいなかった・・・

僕は、とても寂しかった。


「拓真くん、ここにいるよ」

「えっ、お姉ちゃん?」

そこには、絵本で見たことのあるような、天使がいた。


「これが私の本当の姿だよ」

「お姉ちゃん?」

お姉ちゃんは、首を横に振る。


「もう、お姉ちゃんじゃないよ。君の大切なお友達」

「友達?」

「うん、だからこれからは、芽衣ちゃんと呼んでね」

「芽衣ちゃん?」

「うん、よろしく拓真くん」

僕に初めての友達が出来た。

とても、素敵なお友達が・・・


「ねえ、何かしてほしいことある?」

「芽衣ちゃんの、オムライスが食べたい」

「ここでは、食べなくても平気なんだけど、すぐ作るね」

「わーい」

「ケチャップで、似顔絵かいてあげるね」


芽衣ちゃんの、オムライスはやはり美味しいや。

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初めてのお友達 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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