第8話「裏切り者の末路」
「あ、あ、どうして……」
すすり泣く少女の視線の先には小刀で貫かれた魔王の姿があった。
「ば、バカなおじさん。その娘を守ろうとしなければ死なずに済んだのに」
魔王を刺し返り血で血まみれのサリーは声を荒げながら笑う。しかし魔王は冷静に小刀を身体から引き抜きサリーに告げる。
「心配には及ばん、この程度我の『自己再生』の力ですぐに癒すことができる」
その言葉を聞いた全員が刺されたところを見ると魔王の言う通り既に刺された箇所には傷一つついていなかった。
「貴様の気の済むまでやると良い」
そう言って魔王はサリーに小刀を手渡す。
「ば、バカにするんじゃないわよ! 」
そう言ってサリーは何度も何度も魔王を刺す。村長も娘も言葉を失いその光景をみつめていた。
サリーは何回刺しただろうか、その場の誰もが数えきれないほど彼女は魔王をめった刺しにした。しかし、何度刺しても魔王は倒れるどころか膝もつかないので遂にはサリーの方が崩れ落ちる。
「な、なんで……何で死なないのよ。皆して私を馬鹿にして」
「サリー……」
「サリーさん……」
ようやく村長とアリスは口を開くもその後に続く言葉が見つからないようだ。村を売った上に滅多刺しという狂気ともとれる行動を咎めるべきか崩れ落ちている彼女を慰めるべきか判断をしかねているのであろう。
そんな二人を置いて魔王はサリーに声をかけた。
「気は済んだか? 」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 」
その言葉が引き金になったのだろう。サリーは声を振り絞り叫ぶとこれまで以上にナイフを勢いよく振り自らの心臓に突き刺した。
「あ……あっ…………」
サリーはその場に倒れ伏した。
「サリー! 」
「サリーさん! 」
二人が慌てて駆け寄る。二人は何度も彼女の名前を呼ぶが返事はない。
「何とか……なりませんか? 」
アリスは涙ながらに魔王に尋ねる。魔王はかぶりを振って答える。
「無理だな、他者への回復魔法も心得てはいるが即死ではどうしようもない」
真実を告げる。魔王でさえも死者を蘇らせることは不可能なのだ。
「サリイイイイイイイイイイイイさあああああああああああん! 」
アリスの叫びが辺りにこだました。
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