作戦成功のアトで……
● 第72話 色々アリ過ぎて、当初の目的をスッカリ忘れてたオレってどうなのヨ?
オレ達がピエール氏の邸宅に戻った後、オレ個人的にはヤルべき事は全部やったし、今日はこれでお開きかな……ナンテお気楽な考えでいたんだけど、そうは問屋が卸さなかった。
カイザールさんが皆を集め、話を切り出したのだ。
「さて、今回の『Gの書』回収にまつわる我々の行動は、皆の協力のお陰で全てが上手く運び、懸念材料であった『人質救出』も無事に行う事が出来た上に、心強い味方を新たな家族に迎えるという嬉しい結果にも繋がった。
人と人の巡り会わせとは、誠に不思議なものであり
更に、今回の作戦が成功した事により我が『平和的統治』の力が、少なくともこの街マーベルシュタットを含めた周辺地域に、完全な形で復活した。
これは、言い換えるなら……邪教の悪意に染められたこの世界ノヴェラードから、一つの街を取り戻したという事に他ならぬ。
今現在、我らの拠点と言えるべき場所はこの時点を以って『精霊の宿る山』と『不帰の森』そして、今回の一連の動きにより自らの手で掴み取ったこの『マーベルシュタット』の三ヶ所となった訳じゃ。
コノ様な事は、しばらく前……そう、ユウがこの世界に戻って来るまでは予想すらしておらなんだ……。
しかしながら、我々の為すべき事はココが終点ではない。
むしろ今コノ
コノ点に関しては皆、改めて自らの心に刻んで欲しい」
カイザールさんの言葉と思いは熱く、ストレートに皆の心に響いた。
コノ辺りの、仲間のテンションをコントロールする
間違いなく『上司にしたいキャラNo.1』になるんだろうなぁ……。
まぁ、オレは
オレの人生目標は、あくまでも『楽しく、お気楽に』ってのがイチバンなんだし。
「さて、話はここからが更に重要な部分になる。
心して、聴くがよい。
そもそも我々が、此度の『Gの書』回収作戦を発動した理由を今一度思い出して欲しい」
そういえば……、オレ達って『精霊の宿る山』でコノ作戦を実行に移す事になったんだよね。
アレって……、ナンでそうする事になったんだっけ?
ナンか、ものスゴく前の事の様に思えてヨク憶えてないな……。
ここんトコ、ずっと目の前の事だけでイッパイイッパイだったからなぁ。
「ソレなら、今ボクも考えてたし……ユウだって同様だと思うのサ」
いきなり矢が飛んできて、さりげなくカフィールを飲んでいたオレは……吹いた。
すかさず、次の矢が飛んで来て見事に打ち抜かれた。
「アレ? どうしたのサ?
ひょっとしたら、キミは……ボク達の当初の目的を忘れてしまったのカナ?」
「い、いや、アノ……そうじゃなくてネっていうか、アノね……率直に言うとそういう事になるかもしれないんだけどネ。
決して悪気があった訳では無くてデスね……、あのナント申しますか目の前の事で精一杯な状況が続いちゃったと言いますか……」
「コイツぁ、オモシレぇゼ!
どーしたんだよ、ユウ。
オマエさんの、ソンナ顔初めて見るゼ。
イイじゃねぇーかよ、物忘れぐれぇ。忘れネェ人間なんざコノ世にゃ居ねぇヨ」
「アハハハ!
やっぱりユウは、当初の目的を忘れちゃってたんダネ。
でも、それも致し方ナイとおもうのサ……。
初めての旅で、連続でアレだけの経験をしたのダカラ」
ユーリもサシャも呑気に笑ってくれてるけど、肝心のカイザールさんは…………?
慌てて表情を窺うと、オレの予想とは裏腹に朗らかな笑顔を浮かべていた。
てっきり、ココで一喝されるかと思ったのに。
ナンデ笑顔なんだろう?
「ユウよ……。
お主はコノ旅の道中、実に様々な出来事に遭遇しソレに対して的確な対応をしたばかりでなく、己が心の内に棲むという天狼と語り合いソノ実体化にも成功する程に、色々な意味で成長してくれた。
顔には出さなんたが、さぞ様々な苦労を重ねたであろうと思う。
じゃから、仮にアノ山で話した当初の目的を失念しておったとしてもソレは詮無き事じゃ。
サシャやユーリの申した通り、人間は忘れる生き物なのじゃからの。
そして、我々は、ソレを補い合うための仲間であり家族なのじゃ。
気に病むことなど何も無い……ただ、お主の力は今後も絶対に必要じゃ。
その事だけは、絶対に忘れないでおくれ。
今は、それで十分じゃ。
さて、それはさて置き……じゃ。
復習を兼ねて、我々が『Gの書』を目指した目的のおさらいをココでしておこうと思う。
新しい家族も増えておる故、改めて周知してもらうには良い機会であろう。
我々は、何故キケンを冒し旅に出てコノ街に『Gの書』の回収に来たのか?
ソレは、現在の『聖都レーヴェンシュタット』の状況に大きく起因しておる。
アノ街では、我が『平和的統治』の力もヴァレリアの持つ『天候管理』の効力も現在失われておる。そして、サシャの話ではレーヴェンシュタットは恐らく何らかの『ギフト』の力によって歪んだ支配を受けていると言う。
その答えを見つけるために、我々は『Gの書』の回収を決意し、実行に移したのじゃ」
……あぁ、そうだった。
アノ山の隠れ家で話した時は皆『Gの書』をソノ名前から、当たり前のように書物か何かだと思ってた。でも、それが情報の集合体だという事をサシャに聴かされて、形を変えて隠された『Gの書』の情報を引き出しに来たんだったっけ……。
それが、サシャの提案で結果的に最適化された情報をカイザールさんとオレが共有する事になって、ソレがさっき成功し今に至ってるんだ。
あぁ、何か急にスッキリした。よかった、思い出せて。
おさらい、アリガトウねカイザールさん。
「そして、我々の作戦は見事全てにおいて無事に成功し、現在三人の人間が『Gの書』の情報を共有しておる訳じゃ。
そこで、改めて問う!
現在のレーヴェンシュタットの状況を、どう考える?」
オレ、イマイチちゃんと整理出来てないんだよな……、正直ネムいし。
うーん……、考えが全くまとまらないや。
コンナ時は、サシャ頼みがイチバンだよな。
やっぱり、権威中の権威なんだし。
「ボクは、この旅の道中で色々な可能性と仮説を立ててきたのサ。
更に、今夜『Gの書』の全情報をコノ手に入れた。
そして導き出された答えは、コノ一つだったのサ。
――アノ街、聖都レーヴェンシュタットは間違いなく『ギフト』の力によって支配されている。
もう少し、自分なりの考察が必要かもしれないけど答えはこうだと思うのサ。
『ある特定のギフト能力のみを無効化する』力によって、支配を受けているってネ」
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