● 閑 話 敵と三角関係、ホントに怖いのはドッチかな?
アノ話をカイザールさんから聴いたのは、何時の事だったろう……?
もう随分昔の様に感じている、自分が居た。
オレと、両親達を自分の
確か、秘密の地下水路から逃げたと聴いていたが、無事だったんだ。よかった!
「その節は、自分を含め両親達を助けて頂きありがとうございました。
今、オレがこの場所に居られるのは、ご主人のお陰です。
心から、感謝します……」
オレは言いながら、カイザールさんの聴かせてくれた両親の死に際の選択を思い出し、自然と涙していた。
「いや! むしろ礼を言わねばならんのは、コチラの方です。
お気持ちは痛い程に伝わりました。さぁ、涙を拭きなされ。
貴方のご両親が、私の妻と娘を離れ家から逃がしてくれた事で、我々の家族は救われたのです。
貴方は……、いえユウ様は我々家族にとって命の恩人なのです。
そして時は巡り、再び我が娘と部下の命を救って下さった……。
いくら感謝してもし足りぬとは、コノ事でございます。
先程、改めて貴方のご両親が最期に下された決断に関してのお話を伺いました。
本当にお辛い事であったと、お察し致します。今は、その際の記憶も失われておられるとか……。
しかし、失礼を承知で厳しい事を言いますが、今は貴方が生きておられる事がコノ世界にとって本当に重要なのだと、くれぐれもご自覚下さい。
あぁ……、長々と話してしまい、申し訳ありません。
奥で、存分にお寛ぎ下さい。すぐにカフィールを用意させます。
我が家に居られる限りは、この私『ピエール・エラン』の名に懸けて安全を保証致します。ココに居る私の部下達は、ソノ全員が皆それぞれの事情でドゥアーム教団を憎んでおります故、全員信用できますのでお安心下さい……。
ドラゴよ、状況が状況とは言え、お前は自分の責務を全う出来なかった。
よって、罰を下すが……よいな!」
オレは、土下座したままの彼が返事をする前に思わず口を開いていた。
「あの、ピエール・エラン……さん。
ドラゴさんの件でお願いなんですが、罰するのだけはヤメていただけませんか?
あの場合、仮に他の護衛の方が付いていたとしても結果は同じだったと思います。
それに見た所、彼は鍛えさえすれば必ず期待に沿える働きをしてくれると思います」
「い、いや……それは……確かに、貴方様がそう言われるのでしたらそうなのかも知れませんが、他の者に示しが付きませぬ故……」
「では、ソノ示しって奴、コチラで用意します。
そこに居る二人、イリアさんとギトリッシュさんは名うての剣士と二つ名を持つ戦士です。彼等に、鍛えてもらうという事では如何でしょうか?」
イリアさんとギトリッシュさんに、丸投げゴメン……ってウインクすると、二人は笑顔と共に頷いてくれた。オレが安心していると、
「……そのお話、あい解かりました。
このドラゴ、お二人にお任せします。その代わり、トコトン厳しくお願い致します!
ドラゴよ、お前をこのお二人に託す事とする。
その結果にてコノ件、判断させてもらう」
「お館様、そして旅のお方!
ありがとうございます!
このドラゴ、命懸けで励ませて頂きます。
イリア様、ギトリッシュ様、何卒よろしくお願い致します!」
土下座のままだったが、心からの感謝が伝わって来た。
とりあえず、一通り片付いたな。
コレでやっと寛げるか……。
オレは迷わずサシャの隣に座り、言った。
「久しぶり。
しかし、皆よくアノ人混みの中はぐれなかったもんだね」
「実はボクも人の波に流されそうになった所を、ギトリッシュに腕を掴まえてもらったのサ。でもユウの居た方を見たら、もうソコにはキミの姿が無くてネ……。
ボクがモット気をつけていて、すぐ側に居ればよかったのサ。
初めての街でイキナリ独りきりにしてしまって、ゴメン……」
「いや……俺の方こそ、心配かけて悪かった。
しかしまぁ、あの状況から色々あったとは言えヨクこの場所まで辿り付けたって、自分でも思うヨ……。もうココは偶然の神様に感謝するしかないネ。
偶然ぶつかった相手が、コノ家のお嬢さんだったとはねぇ……」
「そうなのデス!
このワタシにぶつかったのは、モウ運命としか言えないのデス。
そういえば、お名前を伺うのマダでしたネ……、ナンとおっしゃるのカシラ?
ソレに、こちらのお方は双子だと伺いましたが、ホントにそうなのデスカ?」
オレ達の話を聴いた……と、いうかオレの後を付いて来たトリシャさんが、突然会話に乱入して来た。
この場合、どう説明するのが正解なんだろーか?
あのカイザールさんでさえ、未だに変装術を解いてナイ……。サシャ達も同様だ。
何か理由がアルのだろうが、作戦が無事に終わるまでは念には念を入れて……という事だと予想した。となると、ココは双子で通すしかナイ訳か。
「あぁ、これは失礼しました。
まだ名乗ってなかったですね。オレは、ユウ・カミハラといいます」
「ボクは、サーシャ。
ユウの双子の姉にして、人生の師匠なのサ……。
だからヨロシクなのサ、トリシャお嬢様」
二人で自己紹介をすると、トリシャお嬢様は、
「ホントに双子でいらしたノネ……安心致しました。
ワタシ、ユウ様とぶつかったソノ事自体に運命を感じていますノ。
ですから、今回のご用事が終わった後もズットこの家に居て頂いて、ゆくゆくはこのワタシ『トリシャ・マルティーニ』の夫として、お父様の後を継いで頂きたいと思っていまス!」
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