● 第53話 招待された家って、たぶんソッチ系? ……しかして、主人の正体は?
成り行き上とはいえ、刃物を持った敵三人に対し素手で立ち向かい、いとも簡単にその脅威を退けたオレに、トリシャとドラゴは驚嘆していた。
特に初対面の際、完全にオレの事を敵対視し
「さ、先程は……ぶ、無礼な口をきいてしまヒ……、たいヒェ……タイヘン失礼致しまスた。じぶ、自分はアナタ様の、アマリのつよ……強さに感動いたしまヒた。どうか、どうかお願いでフ。
――
何か所々、日本語がオカシな事になってるけど……。
ソレはともかく、最後の部分は何を言ってるのかな、ドラゴ君?
「ワタシも、ドラゴと同じ事を考えていました。
旅のお方、ワタシ達を救って下さり、ありがとうございました。
心から感謝致します。もしアノ時、貴方とぶつかっていなかったらと思うと……。
貴方は、ワタシ達にとって命の恩人です。
改めて、
ありゃ、なんかドラゴの非礼を詫びたいから招待したい……っていう普通のお客さんから、賓客なんてのにレベルアップしちゃったよ。相手はタカダカ三人で、素人レベルの戦闘力だったし、少し鍛えればドラゴにだって倒せたかもしれない様な相手なんだけどなー。そこまで感謝されると、逆にくすぐったいって言うか、ドウ反応してイイのかわかんないよ。
「いや、アノね二人とも。
特に、ドラゴ……さん。顔を上げて下さい。
アレは、別にオレが特段強かった訳じゃなくてネ、ムコウさんが普通に弱かっただけだから……。
それに、トリシャさん。賓客なんて大した扱いじゃなくて普通でイイので」
コノ後、暫くの間オレの事を完全に『命の恩人』扱いの二人と、巻き込まれただけだから『ソコまで気にする必要は無い』と主張するオレとの、完全に平行線な会話が続いたのにはチョット閉口した。ひとしきりソンナ話が続いた後、やっとトリシャの家に案内された。
彼女の家は、サッキの石段を登ったスグ先だった。
こりゃ、アノ『二人は結ばれる運命にあるのです』とかキザなセリフを吐いたお坊ちゃま、アイツがコノ場所に居たのは恐らく偶然じゃなくて、初めからアワよくば
今後の外出には注意した方がイイと思うよ、マジで。
さて、案内された家の方は、……コレって民家なの?
門扉からして、威風堂々とした巨大な鉄扉で観音開きになっている。
しかも、門番だろうか、厳つい
どこか、純和風建築にも似た意匠を見たオレは、何となくコノ家の職業がナンなのか理解出来た。
お嬢様のお帰りに、当然の様に二人が
「お嬢様、お帰りなせいやし!」
声を揃えて挨拶した。
扉を開けた二人はスグに大扉を閉めそのまま外に、残りの二人はお嬢様をエスコートする形でオレ達に同行した。
前方を見ると……玄関までのアプローチの先に、純和風建築とコノ世界の独特な様式が上手くまとめられたデザインで落ち着いた色調の、超大邸宅が
「コノ旅のお方は、自らの身を呈してワタシ達の命をドゥアーム教団から救ってくれた大恩人なのです。丁重におもてなしナサイ。
皆にも徹底させなさい。くれぐれも、無礼な振る舞いをしない様に命じます!
あと、お父様はドコかしら?」
「かしこまりました、お嬢様!
組長……イヤ
少し前に、別のお客人が到着されまして、今お寛ぎ頂いている所デス。
……時に、お客人には双子のご兄弟はいらっしゃいますでしょうか?」
へ? 双子? オレは一人っ子だけどコレって、……ひょっとして!
「あの、すみません。
その、オレにソックリな双子の瞳の色って?」
「は! ナントモ見た者が惹きこまれそうな神秘的で鮮やかな、アメジストパープルでしたが……お心当たりが?」
なんと! コノ街に着いたトタン皆とはぐれて、はぐれたと思ったらトリシャにぶつかってドラゴに絡まれ、ソノ後あのイケ好かないドキザなお坊ちゃまに攫われそうになった所を成り行きで助け、賓客として案内された先が皆の目的地だったなんて!
コレはもう、偶然の神様に感謝だな。
「よかった! 実は、オレこの街に入ってスグに迷子になっちゃいまして……。
色々あって、トリシャさんとドラゴさんにコチラにご招待されたんですが、今ココに来てるお客さん達、たぶんオレの知り合いです。
知らない場所だし、どうやって探そうかと困ってたんです」
「では、早速ご案内させて頂きます。
お嬢様、お客人コチラへどうぞ……」
板張りの和風な雰囲気漂う長い廊下を抜け、渡り廊下を通り別棟の洋館へと入った。
渡り廊下からは、キレイに手入れされたダダッ広い庭園が広がっているのが見えた。
屋内に入り廊下の角を何度か曲がり、案内された部屋……これまた、入り口から豪華だコト。そのクラシックな装飾が施された重厚な木の大扉は、見た所一枚板の様だった。凄いネ!
案内役が厳かな面持ちでノックをし、失礼しますと言いながら扉を開く。
中から、優しげな声がした。
「おぉ、トリシャ。
戻ったのか。買い物はどうだった?
ドラゴは、チャント護衛の役目を果たせたか?
……ん? ソチラの方は、ドナタかな?」
「お父様!
ワタシ、帰り道にコノ方とぶつかってしまって、果物を落としてしまったの。
拾って下さったコノ方に、ドラゴが無礼を言ったのでお詫びに家に招待しようとしたら……、アノいつもの、ドゥアーム教団支部長のドラ息子がワタシを攫おうとしたのデス」
「ナンだと!
トリシャ、怪我は無いのか? 本当に無事なのか? おぉ、よかった……。
で、ドラゴがコノ方に無礼を言っただと? ソノ件は、後で話すとしよう。
しかし、ドラゴはトリシャ護衛の務めを果たし戻ったのじゃな?」
「違うのデス、お父様!
相手は、刃物を持った三人で……。
ドラゴも頑張ろうとはしてくれたのだけど、あのまま相手をしていればドラゴは殺され、ワタシは連れ去られていたワ。
コノ方が、ワタシ達二人の命を救って下さったのデス!」
「
このドラゴ、お嬢様護衛の任を果たすことが出来ませんでした。
もちろん、どんな罰でもお受け致します。
お嬢様のお言葉通り、旅のお方にコノ命を救われました!」
再び、土下座しているドラゴがソコに居た。
「それは、また……。
旅のお方よ。本当にありがとうございました。
我が娘と、部下の命を救って頂き、心から感謝致します……。
――時に、立ち入ったコトを伺いますがアチラのお客人とは、ご兄弟か何かで?」
ソチラに視線を向けると、いつものイタズラっぽい笑みを浮かべたサシャが居た。
よかった! やっと逢えたヨ! 他の皆も、ちゃんと居る。
アノ人混みで、よく迷わなかったもんだよ。
奥のソファで、コノ街に来たオレ以外の全員が、それぞれに寛いでいた。
「ユウよ、お主ドコに行っておったのじゃ?
街に入った途端、はぐれおって……心配したぞ。
しかしまさか、コノ家の娘と一緒に帰ってくるとはの……、コレは予想外であった。
おぉ、忘れる所じゃった。紹介をせねば……な。
ワシらの、とりあえずの目的地であるコノ街の協力者の住処が、ココなのじゃがの……。
以前、お主に話したであろう。
ビューレンシュタットで、お主とお主の両親達をかくまった隠れリゾート地の主人の事を。
今お主の目の前に
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