● 第39話 ズット気になってた、例の件が明かされたハナシ……。
その後、コノ不帰の森での『初顔会わせ』の会はカイザールさんが何点か質問をし、ソノ全てに納得の行く回答を得られたのだが、オレ達にとってはココで強力な戦力……というか仲間達が増えた訳で、ソノ事がとても心強く思えた。
一応、補足としてカイザールさんの質問から得られた情報を簡単にまとめておく事にするね。
① 『ナゼ、我々が川の手前で休みを取っているタイミングで鉄砲水を起こせたのか?』
→【解】サシャは妹のリサと旅に出る前から互いに、遠隔念話――所謂、テレパシーって奴だ――で連絡を取り合っており、我々の位置や動向が逐一伝えられていた。
② 『森の中で霧を発生させた、ローマーさんのギフトの能力は何なのか?』
→【解】ローマー・ハンハルトの『ギフト』は、水を思いのままに操る能力。
アノ霧は、空気中の水蒸気を霧に変化させた物であり、リューセック川に架かる吊り橋を押し流した鉄砲水も彼の能力による物だった。
③ 『ナゼ、不帰の森と呼ばれるコノ森だけ他の地域と異なる、赤い木々が生えているのか?』
→【解】コノ世界で指折りの占術師であるサシャが妹であるリサに教えた術により、見た目が変えられている。変装術は顔や身なりを変化させるが、リサはこの辺り一帯にソノ術を使用して一般人や敵が近付かない様にしている。
④ 『ここには、何人ぐらいのギフト能力者とその家族が居るのか?』
→【解】ローマーを含め、ココには十五人程のギフト能力者と彼等の家族が暮らしている。そして、森の番人及び彼等の護衛を緋色狼の一族が担当している。ちなみに、緋色狼の一族は子供も含め全員で四十名弱である。
⑤ 『Gの書回収と、人質に取られているシエナの救出に協力してくれるのか?』
→【解】コノ『不帰の森』に棲む全ての者が、可能な限りの助力を惜しまない。むしろ、最終的な目標であるドゥアーム教団の瓦解のため、尽力したいとの申し出を受けた。
……まぁ、コンナところかな。
オレ個人としては、サシャが『ギフト』能力者なのかどうか? という点が気になり、質問したかったが、ヤッパリ我慢した。いくら仲間であり彼氏といっても、プライバシーは必要なモンだしね。ソレは、一生を添い遂げるって誓い合った仲でも同じだと思う。何よりも、サシャが自発的に話してくれるのを聴きたかったってのが一番の理由だった。
そして、実は程なくしてソノ時が訪れる事を、オレはコノ時点ではまだ知る由も無かった。
『顔合わせ会』及び『質疑応答』の後は、予想通りの歓迎会……というか、普通に宴会だった。
コノ大広間――恐らく、百畳以上の広さだろう――に、コノ森の住人達のほぼ全員が集まり、皆で一緒にカフィールを飲んだり、様々な料理を楽しんだ。
『Gの書回収』と『人質奪還』についての作戦会議は、明日の昼間に開かれる事になっていたので、今夜はユックリ休めそうだ。旅に出てからまだそんなに時間も経っていないのに、次から次に色々な事が起きたせいか、オレは正直チョットばかり疲れていた。今夜は、爆睡しよう……。
そう思っていたのだが、歓迎会という名の宴会はいつ終わるともなく続いた。
オレは、現世でもそうだったけど『飲み会』やら『コンパ』に類するモノが苦手だった。そもそも酒が飲めない訳だし、大人数でワイワイ騒ぐのも好きな方じゃない。
コレは、人混みが嫌いなせいかもしれないな。そして、ソレが初対面の相手となれば尚更である。だって一度に沢山、初対面の人に会うと途中から顔と名前が一致しなくなっちゃうんだよね……困ったもんだ。
そう思っていたら、気配を感じさせずにサシャが隣にやって来た。
「サシャ、凄いのな。コノ森で『ギフト』能力者を守ってたなんて。
それに、妹さんが居たんだね……。オレは、驚かされっぱなしだよ」
「今まで、黙っててゴメンなのサ……。ココは、ボク達の最後の砦だったから話す時期を計っていたんだケド、結局話せないままココに来る事になってしまったんダ。
ソレにね、ユウには話さなきゃいけない、もっとダイジな事があるのサ。
だから……、ココを出て話をしたいんだけどイイかな?
隣の建物に部屋が用意してあるのサ。外で待ってるから、少ししたら来て……」
それだけ囁く様に言うと、戻って行った。
――数分後、オレはさりげなく宴会の場を後にした。
建物の外に出ると、壁際に立っている石造りの柱にもたれてサシャは待っていた。前にも、コンナ風にサシャを待たせた事があった様な……あぁ、ありゃ初デートん時だ。アノ時はギトリッシュさんとバトルする事になっちまったから、自分的にはサクッと終わらせたんだけど、結局待たせちゃったんだよなぁ……アノ日から、まだそんなに経ってないはずなんだけど、オレはもう随分前の事の様に感じていた。
「サシャ、お待たせ!」
「今日は、前回みたいにタクサン待っていないのサ……。
それからネ……、あのネ……ごめん、ユウ! 二人っきりじゃなくなっちゃったのサ」
サシャがそう言うなり、彼女の陰……というより彼女の脇に立っていた石造りの柱の後から一つの人影が飛び出した。
「ユウ兄さま! ……姉さま、二人っきりでナイショ話なんてずるいノさ!」
ありゃま! リサも付いて来てたのね。まぁ、イイか。このままサシャと結婚って事になれば、彼女『リサ・アストラード』は、オレにとっても妹になるわけだし。
「リサ、ボクはユウにとてもダイジな話がアルって言ったじゃないカ……。
ソレに、いくら我が妹でも、ユウとの二人っきりの貴重な時間をジャマするのはよくないのサ」
えぇ~っと、会話の語尾の『~のサ』の方がサシャで、『~ノさ』がリサなんだね……。
しかし、キミタチはどこでその口調を学んだんだい?
おーっと、また脱線しちゃったかな……。
「サシャ、たまにはイイんじゃない? キミさえ良ければ、今夜は三人で話そうよ」
オレがそう言うなり、リサが飛び付いて来てオレの右手は彼女に奪われた。
「……もう。ユウがそう言うなら、ボクはそれでイイのサ」
サシャはそう言って、オレの左手を取った。
それにしても、サシャの『ダイジな話』って何だろうか?
ソレが、スッゴク気になった。
数分後、オレ達三人はさっきまで宴会をやっていた建物の隣の家屋にある一室に落ち着いた。
ココは、サシャがこの森に帰って来た時にいつも使っている部屋だという。
キミの部屋って、何処でもコンナに広くてアンティークでヴィンテージな図書館みたいなのかい?
ソノ部屋は、俺達がしばらくの間一緒に暮らした、アノ山の洞窟の隠れ家の部屋に雰囲気がとてもよく似ていた。所謂図書館って場所は、特に好きじゃないし通う程行った事も無いけど、不思議と居心地がイイんだよな、サシャの部屋って……。
そんな事を考えていたら、リサがカフィールを持ってきてくれた。
サンキュー!
改めてよく見ると、二人は本当によく似ていた。
リサは、将来――あ、モチロン今も凄い美少女なんだけどね――サシャにドンドン似ていって、やっぱり物凄い美人さんになるんだろうなぁ……。
このコが義理の妹になるのかー。
オレは現世には姉さんが居るけど、妹の存在ってのは、とても新鮮だった。
その時、ソファの隣に座っていたサシャが口を開いた。
「どうだい、コノ部屋? あの隠れ家を思い出したカイ?」
「うん。今正に、ソンナ風に思ってたよ。コノ雰囲気、スゴく落ち着くし居心地イイから、オレ好きなんだよね」
「よかっタ! ユウなら、きっとそう言ってくれるっテ思ってたのサ。
今夜から、コノ部屋がユウの部屋でもあるんだから、スキな様に使って欲しいのサ……」
結局、オレはドコに行っても『無料民泊生活』なんだよなぁ……。
いつかは現世に戻る事になるんだろうから、しょうがないか。
「サァ、じゃあ早速だけど本題の、ダイジな話に入るのサ。
リサの事もちゃんと話すから、話の途中で邪魔したりしちゃイケナイのサ」
「わかってるノさ、姉さま」
「今夜ユウに話したかったのは、きっとキミも気になっている事なのサ。
ユウは、ボクが『ギフト』能力者だったら嬉しいって、思ってるんじゃナイのカナ?」
うわ! イキナリその話か! そりゃ、気になって気になってしょうがなかった話題だよ。
「ヤッパリね……。ナニも言わなくても顔に書いてあるのサ。
――ズバリ、言うのサ! このボク『サシャ・ガラード』と、ココに居るボクの妹『リサ・アストラード』は、実のトコロ二人ともギフト能力者なのサ」
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