明かされた両親の死と、異世界無料民泊生活の始まり

● 第6話 両親が、オレを救うために……死んだなんて。

 どれぐらいの時間外に居たのかはわからなかったが、オレが再び洞窟の棲み家に戻った時カイザールさんもエルネストさんも、ホッとした様な表情を浮かべていた。

 

 オレが現実を受け止め切れず、外に出たまま戻って来ないっていう可能性も

考慮してたのかもしれない。


 確かに普通なら今回の出来事は、訳の分からないままの状態で逃げ出しちゃっても、ちっともおかしくないぐらいのレべルだと思うし、人によっては本当にそうしちゃうかもしれない。


 でも、オレはまだまだ色々な話が聞きたかったし、この世界についてとにかく

もっと沢山の事を知りたくなっていたんだ。

 それに、オレの本当の両親の事……。

 コレは絶対に知りたいし、知る権利があると思うんだよね。


 そんなオレの顔を見て、カイザールさんは嬉しそうに、

 「うむ。どうやら、少しは腹をくくったみたいじゃの。

 さっきまでとは、顔色も表情も別人の様じゃて」


 確かに、オレは思った事がすぐに顔に出るタイプだとよく言われるけど、そんな

に変わるもんかねー。どうりで、ポーカーやババ抜きが弱いわけだ……。

 まぁ、少し腹をくくったって言う部分についてはあながち間違ってなかったから、ここは素直にニッコリ笑っておいた。


 「さてさて、そうとなれば続けるとするかの。

 約束通り、お主の両親の話から始めるとしようか……」

 いよいよか。オレの両親ってどんな人達なんだろう? 

 早く会ってみたいな!


 「結論から言うと、。お主の様に違う世界に行っておるわけではない。のじゃ……。本当に気の毒な事だと思うが、コレが真実じゃ」




 気付けば、ただ沈黙だけがこの場所を支配していた……。




オレはその静けさに耐えられなくなり、頭で考えるより先に声をあげていた。

 「な、何だよそりゃ? ナンデ、なんでだよ? どういう事だよ? 一体何でソンナ事になってんだよぉおおお~?」

 最後の方は言葉というより、もはや叫びに近かった……。


 やっと会えると思って期待してたのに、もう二度と会う事も声を聴く事も出来ないなんて……。

 本当の両親に会えると思って浮かれていた気持ちが、一瞬にして打ち砕かれたのだ。


 そもそも、今日は一体ナンテ一日だ! 

 目が覚めたと思ったら異世界に来てて、呼ばれたんだと思ったらコノ異世界生まれだって事を知らされ、トドメの一撃がよりにもよって両親はオレを助けるために死にましたって……。


 怒涛の展開に、もう付いて行けなくなりそうだった。


 カイザールさんが口を開こうとしたが、オレはそれを遮る様に言った。

「悪いんだけど……ホント悪いんだけどさぁ。今日は、もう……今日だけでいい

から、オレを独りにしておいてくれませんか……」



 しばしの静寂の後、



 「好きにせぇ……。


 しかし、気持ちの整理が出来たら戻って来なさい。

 今話した事は、どうしてもお前が知らねばならぬ事だったのじゃ。


 そして、この後の話はお前は聞きたくないかもしれんが、今後のためにどうしても聞いてもらうぞ。


 でなければ、後々必ず後悔する事になると知れ!」


 コレを言ったのはカイザールさんではなく、何故かエルネストさんだった。

 優しい様で厳しくもあり、そしてやっぱり重々しい口調だった。

 カイザールさんの方を見ると……彼は目を閉じ腕組みをして、しきりに何かを考えている様子だった。


 オレは返事も返さず、洞窟を出ながら考えていた。

 エルネストさんは『』と言ってたっけ。

 コレって、一体どういう事だろう? 

 両親の死と関係しているのは確定だとしても、何で聞かないと後悔する事になるんだろう? 


 うーん……、今の段階じゃあ情報が少な過ぎてサッパリ分からんな……。

 それに何であのタイミングだけ、答えたのがエルネストさんだったんだろう?


 分からない事といえば他にもある。

 二人は一体どんな関係で、なんで二人だけでコンナ山の中の――いくら居心地がイイとはいえだ――洞窟なんかで暮らしてるんだろう? 

 他に人は居ないのか? 


 さすがにソレはないだろうが、とにかく今は連続で突き付けられた衝撃の事実と分からない事ダラケで頭も身体も完全に容量オーバーだった。


 外に出てみると、辺りはもう暗くなっていた。

 オレは昼間、外に出た時に見つけた丘のテッペンに登った。

 大の字になって、夜空を見上げた。

 そこには、今まで見た事がないぐらい大量の星達が瞬き、そしてコレまた大きな月が二つも夜空を照らしていた。


 とても幻想的で、そして美しくまるで夢の中に居る様な感覚だった。

 もう少しの間この夜空を鑑賞していたかったが、もう何も考えられなかったし手足の指一本さえ動かすだけの元気も無くなっていた。

 そして、いつの間にかそのまま深い眠りにおちていた……。



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