943.鳳雛篇:執筆は個人競技

 今回は「執筆は個人競技」についてです。

 とくに体操やフィギュアスケートのような「採点競技」です。

 ライバルよりも上のランクを獲りたい、という気持ちもわかります。

 ですが、あなたの本当のライバルは過去のあなた自身です。

 人は常に進化しているからこそ、世界最強の存在となりました。





執筆は個人競技


 小説の執筆をスポーツで例えれば、個人競技です。

 野球やサッカーのように、役割の異なる仲間と一緒にひとつのことに当たるわけではありません。

 柔道やボクシングのように対戦相手との勝ち負けを競うようなものでもないのです。

 ただひたすら己の記録を更新できるかどうか。それだけが求められます。




ひたすら自己鍛錬が必要な小説

 小説を書くのは、読み手に伝わるかどうかを、あなたが読み手になったつもりで推敲することで完成します。これが己の記録との戦いです。

 今投稿した回は、前回よりも反響があるだろうか。今作は、前作よりも評判が高いだろうか。

 つねに比較対象は過去のあなた自身です。

 しかも陸上競技や水泳のようにタイムを競うわけではありません。

 明確な基準がないまま執筆し、読み手によって判定されて順位付けされます。

 そういう意味では採点競技の体操やアーティスティック・スイミング、フィギュアスケート、またスノーボードや東京オリンピックで採用されるスケートボードのようなものです。

 どんな技を実施して、その積み重ねで評価が定まります。

 ひとつの技の難易度であったり技と技のつなぎであったり。

 評価される要素は小説でも同じです。

 個々の技の評価は大事ですが、演技全体の完成度も総得点に占める出来栄え点を左右します。

 ひとつの技に秀でているだけでは、種目別なら優勝できるかもしれませんが、個人総合では入賞すらままならない。そんな方が多いのが小説の世界です。

 小説は、部分部分の技巧にいくら工夫を凝らしても、全体を読んだときの感想によって最終的な評価が決まります。

 だから、誰よりも上に行こうと考えるのではなく、つねに己を鍛え続けなければなりません。




仮想のライバル

 そのために「仮想のライバル」を設定して、鍛錬する目標とするべきです。

「この人はきっと何ポイント獲得するだろうから、私はそれよりも上のポイントを獲りに行こう」

 そんな「仮想のライバル」がいれば、俄然やる気が湧いてきますよね。

「仮想のライバル」はあくまでも「仮想」です。相手から「ライバル視」されないほうがよいでしょう。

 芥川龍之介氏と谷崎潤一郎氏のような、誌面上でも舌戦を繰り広げるようなライバル関係は今の時代には合いません。

 また、今の自分に近い書き手を「仮想のライバル」としましょう。

 実力がかけ離れていると、超えられない理由を「この人、強いからなぁ」で片付けてしまうからです。

「仮想のライバル」を見つけるためにも、今投稿している作品でポイントを稼がなければなりません。たとえば一週間で四ポイントを獲っているなら、五ポイント以上獲れるように頑張ってください。ランキングの最下位に近いポイントまで稼げたら、最下位を「仮想のライバル」として、その作品を抜くつもりで書きましょう。

 つねに自分より少し上の作品を「仮想のライバル」に設定していれば、努力して乗り越えようと思えます。




上位にランクインするために

 じょじょにランキングが上がり始めたら、「なぜランクポイントを稼げているのか」について必ず考察してください。

 閲覧数(PV)が高くなっている。ブックマークが増えている。評価が数多く付いている。感想をたくさんもらえている。などが考えられます。

「なぜランクポイントを稼げているのか」がわからないと、これまでの努力が徒労に終わる可能性があるのです。

 主人公が大活躍している。ヒロインが華を添えている。魅力的な仲間が増える。親友との別れ。強敵が策動している。「対になる存在」がついに動き始める。

 物語ストーリーの進め方がランクポイントを大きく変動させます。

 どのような展開でランクポイントが稼げているのか。

 そこまで深く考えなければ、人気のある小説は書きようがないのです。

 どんな物語も展開次第で名作にも駄作にもなります。

 名作に仕上げるには、なにをするべきなのか。駄作になりそうなら早めに軌道修正しなければなりません。




狙いを持って執筆する

 並みの作品で終わっているかぎり、あなたの執筆スキルは上昇も下降もしないのです。

 平凡に陥ることなく、つねに「狙い」を持って物語の展開を考えてください。

「今回は主人公が大活躍するから、主人公の魅力を前面に押し出そう」とか「今回は強敵が主人公たちの前に立ちはだかるから、できるだけ手強くしよう」とか。

 あらかじめ「狙い」を持って執筆していれば、「なぜランクポイントが稼げているのか」は自明でしょう。あなたの「狙い」が的を射たから、ランクポイントが稼げたのです。

 後から「どのような展開がウケたのか」を精査する時間よりも、始めから「狙い」を持って執筆したほうが時短につながります。

 ぜひ「狙い」を持って執筆するようにしましょう。





最後に

 今回は「執筆は個人競技」について述べました。

 たとえば体操の内村航平氏は「美しい体操」を目標にしたので「出来栄え点」が高くなり、オリンピック個人総合連覇の偉業を達成しました。

 またフィギュアスケートの羽生結弦氏はただでさえ難しいジャンプの前と後に細かなテクニックを混ぜることで、「技術点」と「出来栄え点」の双方が高まり、こちらもオリンピック連覇を成し遂げたのです。

 ふたりとも「狙い」を持ってトレーニングに励んだから結果が出ました。

 小説もつねに「狙い」を持って執筆しましょう。

 金メダル級の作品が書けるかどうかは、小説を書く際に「狙い」を持っているかどうか。

 個人競技でもじゅうぶん高ランクを獲れるはずですよ。



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