656.事典篇:北欧神話:アース神族2:トールの血族

 今回は「北欧神話」において最強の神として恐れられた戦神トールの血族についてまとめました。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』でイゼルローン要塞の主砲として登場する「トールハンマー」で名前をご存知の方も多い神です。

 実は息子もかなり強いのです。





事典【北欧神話:アース神族2:トールの血族】


 今回はアース神族最強の戦神トールの血族についてまとめています。

 トールは巨人殺しで勇名を馳せ、数多くの巨人を「通りがかり」で殺してしまうほど無慈悲です。

 しかし母方は巨人族の血を引いています。

 だからこそ、アスガルトのすべてのアース神族が力を合わせても、トールには敵わないほどの怪力の持ち主なのです。




トールの血族

トール

 父はオーディン、母はヨルズ。妻にシヴ、ヤールンサクサ。息子にモージとマグニ、娘にスルーズ、シヴの連れ子のウル。

 雷の神にして北欧神話最強の戦神。農民階級に信仰された神であり、元来はオーディンと同格以上の地位があったのです。スルーズヴァンガルに所在するビルスキルニルという宮殿を持っています。

 外見は燃えるような目と赤髪を持つ赤髭の大男。

 性格は豪胆あるいは乱暴ですが、なぜならフルングニルの砥石(火打ち石とも)が頭に刺さっているからです。

 武勇を重んじる好漢であるが、その反面少々単純で激しやすく、なにかにつけて「ミョルニル」を使っての脅しに出る傾向があります。しかし怯える弱者に対して怒りを長く持続させことはありません。

 途方もない大食漢でもあります。

 武器は稲妻を象徴する「ミョルニル」と呼ばれる柄の短い鎚。

 雷、天候、農耕などを司り、力はアスガルドの他のすべての神々を合わせたより強いとされます。フルングニル、スリュム、ゲイルロズといった霜の巨人たちを打ち殺し、神々と人間を巨人から守る要となっているのです。

 ヴァン神族との戦いで破壊されたアスガルドの城壁をアース神族が巨人の鍛冶屋(工匠)に修理させたのち、巨人への報酬としてフレイヤを渡されることに怒ったトールが、誓いを破って巨人を殺します。

 エーギルに酒宴の開催を依頼したところ鍋の用意を求められたため、テュールとともに彼の父ヒュミルを訪ねて巨大な鍋を入手したのです。その際、ヒュミルとともに海に出て、牡牛の頭を餌にヨルムンガンドを釣り上げて「ミョルニル」で一撃したものの取り逃しています。

「ミョルニル」をスリュムに盗まれ、スリュムがその返還の条件にフレイヤとの結婚を要求したことから、フレイヤに変装してヨトゥンヘイムに行き、スリュムが花嫁の祝福のためにと持ち出した「ミョルニル」を奪い取って彼とその一族を全滅させています。

 アース神族がことごとくロキにこき下ろされる場面で、トールは最初その場にいなかったがやがて会場に行き、ロキを激しく咎めて退散させます。

 娘のスルーズがドヴェルグのアルヴィースと結婚させられそうになったとき、トールはアルヴィースに朝まで矢継ぎ早に質問を繰り出して答えさせ、朝の光を浴びせて石にしたのです。

「ラグナロク」においては世界蛇ヨルムンガンドに致命傷を与えるが、その勝利と引き換えに毒を受けたために九歩退いて死んだとされています。


ノート

 夜の女神。息子アウズ、娘ヨルズ、息子ダグの母。

 ヨトゥンヘイムに住むナルヴィあるいはネルという名の巨人の娘で、髪も姿も生まれつき黒く暗いとされています。

 彼女は三回結婚しています。最初の夫ナグルファリとの間に息子アウズを、次の夫アンナルとの間に娘ヨルズを、最後の夫でアース神族の男デリングとの間に息子ダグをもうけました。ダグは父親に似て明るく美しかったそうです。

 オーディンはノートとその息子ダグを呼び、それぞれに馬車を与えて世界を周り続けるように命じ、昼と夜が出来あがったとされます。

 ノートはフリームファクシという馬が引く馬車に乗り、十二時間ごとに大地の上を通るように天を駆けるよう定められ、馬銜(はみ)から滴り落ちる泡が大地を濡らすが、これが谷の露であるとされています。


ナグルファリ

 夜の女神ノートの最初の夫となり、アウズの父となる男。


アンナル

 夜の女神ノートの二番目の夫となり、ヨルズの父となる男。


デリング

 夜の女神ノートの三番目の夫となり、昼の神ダグの父となるアース神族の男。


アウズ

 夜の女神ノートと最初の夫ナグルファリの間の息子。


ヨルズ

 オーディンの妻のひとり。トールの母。

 アンナルと夜の女神ノートの娘であり、アウズとダグの異父兄弟とされています。


ダグ

 夜の女神ノートと三番目の夫デリングの間の息子。

 オーディンは、ヨトゥンヘイムに住むナルヴィという巨人の男の娘ノートと、彼女の息子のダグを呼び、それぞれに馬車を与え世界を回り続けるように命じたのです。こうして昼と夜が出来あがりました。

 スキンファクシという馬が引く馬車に乗り、十二時間ごとに大地の上を通るよう天を駆けるといいます。スキンファクシのたてがみが発する光が地上を照らすのです。


美髪の女神シヴ

 トールの妻。ウルの実母。ヤールンサクサのライバルとも。

 美しい金髪を自慢していましたが、ロキに悪戯で刈り取られてしまいます。

 その後トールに脅されたロキが、ドヴェルグの「イーヴァルディの子ら」に、それをかぶると頭にくっついて本物の髪の毛になる黄金製のかつらを作らせました。


ウル

 狩猟、弓術、スキー、決闘の神。オレルスとも。

 シヴの息子でトールの義理の子にあたり、自ら作ったユーダリル(イチイの谷)の館に住んでいます。イチイは弓やスキー板の材料です。

 呪文を刻んだ骨を船とし、海を渡る魔術師とされています。オーディンがロシアの王女リンドを騙して孕ませたことを恥と考えた神々はオーディンを追放し、ウルに引き継がせて汚名をすすごうとしました。彼は十年その地位にあったのですが、オーディンが賄賂で再び地位を買い戻したために王位を追われたのです。

 自分と同じように弓とスキーを得意とする女巨人スカジと出会い、彼女の父が遺した館スリュムヘイムで一緒に暮らしたという伝承もあります。


スルーズ

 トールとシヴの娘。ヴァルハラでエインヘリャルにエールを振る舞うワルキューレの一柱の名前として挙がっていますが、同一人物かは定かでありません。

 トールの項でも語りましたが、ドヴェルグのアルヴィースが「トールの娘を嫁にもらう」という場面があります。トールの娘はスルーズしかいませんから、彼女のことを指しているのでしょう。


マグニ

 トールと巨人ヤールンサクサの間の子。兄弟にモージがいるがヤールンサクサの子かは不明。

 トールと巨人フルングニルの決闘において巨大なフルングニルを倒したものの、倒れてきた体の下敷きになって抜け出せなくなったトールのもとへ生後三日目のマグニが駆け寄り、父の体を押さえつける重い脚を簡単にどかして救出したのです。その際に言ったのは「こんな巨人は僕がゲンコツでやっつけたのに」という趣旨のことだったといいます。トールはフルングニルの自慢の愛馬グルファクシを褒美としてマグニに与えたとされるのです。

 世界樹ユグドラシルがスルトの放った炎に包まれて海中に沈み、再び浮かんできたときに、他の生き残った神々らとともに隠れていた場所から出てきて、父の遺品となったミョルニルを発見します。

 兄弟のモージもまたラグナロクを生き延びています。





最後に

 今回は「北欧神話:アース神族2:トールの血族」についてまとめました。

 トールは霜の巨人族のかたきでありながら、霜の巨人との間に子をもうけています。

 そのあたりも北欧神話の複雑な関係を示しているのです。



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