348.不調篇:書けるものを書く
今回は「書けるものを書く」ことです。
二つ前の「興味のあるものなら必ず書ける」のうち、とくに「書き手が情熱を持っているものを書くべき」だと述べています。
書けるものを書く
小説は「読み手が読みたいもの」を書きます。
「読み手が読みたいもの」とは「書き手が読みたいもの」でもあるのです。
そして「書き手が読みたいもの」とは「書き手が書けるものを書く」こと。
あれ? 少し矛盾していますね。
書けるもの
ラブレターを書いたことのある人は、現在では少数派になったのではないでしょうか。
今はたいていの方が対面以外では携帯電話のメールやスマートフォンのアプリなどで恋心を告白しているはずです。
それでもいちおう文章として書いています。
手段が変わっただけで、ラブレターは今も存在していると言っていいでしょう。
ラブレターが『ラブメール』や『ラブツイート』や『ラブLINE』といった形に変化しただけ。
恋心の告白文は誰にでも書けます。
いつの間にか時間が経って真夜中になっていたとしても、何度でも手を入れることができるからです。
あふれ出て止まらない情熱や熱意がある。
書きたいことがありすぎて、ついつい文面が長くなってしまうのです。
そして何度も推敲を重ねて、相手に間違った気持ちが伝わらないよう、相手にどう読まれるかを意識しながら書きます。
問題は勇気を持って相手に渡せるかどうかです。
ラブレターを書くには情熱や熱意が要ります。
いくら書いても書ききれない。
そんな熱意にあふれているのです。
ですが相手に渡すには勇気が必要になります。
小説投稿サイトに言い換えると「情熱や熱意を持って作品を書いたけど、これを小説投稿サイトに投稿するのは勇気が要る」ということになるでしょう。
ラブレターも小説も相手に見せるときがいちばん勇気が要ります。
でも、相手に見せなければラブレターも小説も「書いた意味」がありません。
だから恥ずかしくても相手に見せてください。
学校の作文や大学の小論文などには必ず「テーマ」が設定されています。
あなたが熱意を持っている「テーマ」であれば苦労せずに完成するものです。
しかし熱意を持てない「テーマ」だと、いくら頑張っても満足に書きあげられません。
だからといって文章が書けないとは思わないでください。
実際には「テーマ」があなたに合っていないだけなのです。
小説にも同じことが言えます。
書きたいものに対してどれだけ熱意を持てるか。
いくら書いても書ききれない。
それほど熱意にあふれていたら、小説で書ききれなかったことなんてなくなります。
熱意を持っているから「小説が書ける」のです。
自分が熱意を持てる「テーマ」なら、必ず小説は書きあげられます。
逆にいうと、熱意を持てない「テーマ」では小説は書けないのです。
小説投稿サイトでは数多くの「小説賞・新人賞」が企画・開催されています。
その中であなたにとって熱意を持てる「テーマ」がお題のときは必ず書きあげて応募するようにしましょう。
あなたに合った「テーマ」であれば小説は「書けるもの」なのです。
もしあまり気が向かない「テーマ」であれば、まず「書けない」と思ってください。
書けたとしてもテンプレートを用いただけの「拙い小説」にしか仕上がりません。
熱意のあるものだけ書けばいい
小説投稿サイトの「小説賞・新人賞」に応募したいとします。
そのとき「テーマ」があなたにとって熱意を持てれば、きっと傑作が書けます。
もしこの「テーマ」では気が進まないなと感じているのに無理やり書けば、駄作よくて並レベルの小説しか書けません。
それでは受賞することは難しいでしょう。
受賞するのが難しいとわかっているのに、ツラい思いをしてなんとか書きあげた。
でも結果は受賞できません。
あなたは自分でわかっていて「ムダなこと」をしたのです。
誰を責めることもできません。
すべてあなたが自分で選択した苦難なのですから。
もちろん「向いていない」とわかっていても、書き続けることで慣れてくることはあります。
ですが、それを「小説賞・新人賞」また執筆依頼された作品で試すようなことはしないでください。
あなたの「ネームバリュー」が目減りしてしまいます。
習作はあくまでも自分で楽しむだけか、別アカウントや他の小説投稿サイトで投稿すべきです。
「駄作を書いた」という負の「ネームバリュー」がつくことだけはなんとしてでも避けなければなりません。
「書けない」のはその「テーマ」に熱意を感じないからです。
それ以上でもそれ以下でもありません。
見栄を張ってはいけない
「日常」ジャンルの青春小説が書きたいんだけど、ちょっと軽薄に見られるかなと思ってしまい、「やはり『ファンタジー』ジャンルで勝負しないと評価されないんだろうな」と考えてしまう人がいます。
つい「見栄を張って」しまうのです。
下ネタが持ち味なのに、崇高なテーマで小説を書こうとする人もいます。
こちらも「見栄っ張り」ですね。
もしベストセラー作家の村上春樹氏が芥川龍之介賞(芥川賞)や直木三十五賞(直木賞)を獲れるような「テーマ」と「語り口」で今から小説を書いたとしてなんになるのでしょうか。
芥川賞作家・直木賞作家という肩書は手に入ります。
でも彼に今さらそんな肩書が必要なのでしょうか。
当人はノーベル文学賞が欲しいのかもしれませんが、それは今の得意な「テーマ」と「語り口」を捨ててまで挑戦すべきことだとは思えませんよね。
とくに熱狂的なファンである「ハルキスト」は、そんな「賞に迎合したような作品」を今までどおり支持してくれるものでしょうか。
良くも悪くも村上春樹氏は今の「テーマ」と「語り口」だからこそ「彼にしか書けない小説」だと誰もが認める作品が書けるです。
つまり「見栄」を張らずに、自分で書きたい「テーマ」と「語り口」で書きましょう。
それが最も成長できる執筆法です。
最後に
今回は「書けるものを書く」ことについて述べてみました。
見栄を張らず、熱意を持てない「テーマ」の小説を書かないこと。
自分が書きたい、熱意を持っている「テーマ」をあなたの「語り口」で書きましょう。
それが「小説が書けない」と思わせているブレーキを解除する手段のひとつです。
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