312.執筆篇:読み手が読みたいことを書く
今回は「読み手が読みたいことを書く」ことについてです。
いくら書き手が気張って執筆しても、読み手がいなければまったくの徒労に終わります。
では「読み手が読みたいこと」はどのように知ればいいのでしょうか。
ランキングが頼りになります。
読み手が読みたいことを書く
小説は書き手が書くだけ書いて投稿すれば読み手に読まれて反応が得られる、というほど単純なものではありません。
読み手は「自分が読みたいもの」を検索機能で調べて、検索一覧の上から順にあらすじを読み、「これは面白そうだ」と思ったものを読みます。
書き手が「書きたいもの」と読み手が「読みたいもの」が一致している人は、苦労せずに自然と読み手が増えていくのです。
ですがたいていは「書きたいもの」と「読みたいもの」は一致しません。
読みたいものを分析する
読み手に読んでもらうには、
「読み手が読みたいもの」がわからないという方もいらっしゃると思います。
そんなときは小説投稿サイトの各種ランキングをチェックしましょう。
ランキングはただ漠然と見てはいけません。
あらすじ(キャプション)とキーワード(タグ)を意識してチェックしてください。
今どんなキーワードが読まれているのか。
それを読み解くのです。
たとえば『小説家になろう』の「ハイファンタジー」2018年2月8日付け日間TOP10を調べてみます。
まず10位までに必ず「R15」キーワードが付いているのが目を引くでしょう。
そして「残酷な描写あり」も9作品に付けられています。
「勇者」を含むキーワードたとえば「勇者パーティー」「勇者追放」「勇者パーティー追放」は合わせて7作品が用いているのです。
「魔王」「魔法」は5作品、「冒険」を含むキーワードは4作品で使われていました。
1月の段階では「男主人公」「最強」が多かったのですが、ちょっと様変わりしていますね。
このような時流を読む力が書き手には求められるのです。
もちろん「自分の書きたいもの」を書いて認められるのが一番でしょう。
ですが、たいていの方は「読み手が読みたいもの」とは異なるものを書きたいはずです。
そのズレを認識するために「今なにが流行っているのか」について絶えずアンテナを張ってください。
読まれる要素を取り込む
現在の「読み手が読みたいもの」がわかりました。
ではそれをあなたの小説に取り込みましょう。
とりあえず「勇者」「魔王」「魔法」というキーワードを使うとします。
「魔王と魔法で戦う勇者の物語」ベタですね。
J.K.ローリング氏『ハリー・ポッター』シリーズとなんら変わりがありません。
ただし『小説家になろう』で現在最も読まれているとなれば、そこにはそれ相応の理由があるはずなのです。
なにかなと考えてみてください。
「ハイファンタジー」は「勇者と魔王が戦う物語」だという共通認識があるからです。
戦い方が変わっていたり実は勇者のほうが鬼畜だったりするケースもあります。
でも基本的には主人公が「勇者」で「対になる存在」が「魔王」であることが多い。
このベタな設定こそ読み手が安心して「ハイファンタジー」小説を読むために必要なことなのです。
主人公の「勇者」と「対になる存在」の「魔王」が「魔法」でバトルしている姿。
ゲームのエニックス(現スクウェア・エニックス)『DRAGON QUEST』を彷彿とさせますね。
小説投稿サイトで小説を読んているのは主に中高生ですが、中年以上の人もかなり読んでいます。
そして作品を評価してくれるのはたいていが中年以上の方です。
中年以上の方には仕事の合間ならある程度時間に余裕があります。
中高生は学校の授業や部活動、学習塾など行なうことがたくさんありますので、読んだ作品にいちいち評価していく時間はないのです。
「読み手が読みたいもの」は広く考えればメインの中高生を狙うべきなのですが、評価を逸早く高めたければ時間に余裕のある中年以上を狙い撃ちましょう。
そう考えたとき小説が『DRAGON QUEST』のような勇者譚であれば、中年以上のゲーマー心に火が着くのです。
『DRAGON QUEST』シリーズの累計販売数は6,400万本とも言われています。つまり日本人の半分はプレイしています(同じユーザーがプレイしていますので実際にはゲーマーのうち半分くらいといったところでしょうか)。
またゲームを未プレイでもさまざまな二次創作(アニメ『ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説』やマンガ『DRAGON QUEST ダイの大冒険』といった)などでその仕組みは広く知られていますから、それを踏襲するのは至極当然なのかもしれません。
もちろんオリジナルなシステムが考えつくのであれば、それをベースにしましょう。
オリジナルなら「どこかで読んだような」作品にはなりません。
前述の『DRAGON QUEST』システムの小説はどうしても「どこかで読んだような」作品を生み出す要因となってしまいます。
冒険パーティーになぜ盗賊が?
『DRAGON QUEST』に直接影響を与えたのは二つのゲーム『Wizardry』と『Ultima』です。
パーティーを組むことと戦闘シーンは『Wizardry』、野外の2Dマップは『Ultima』の影響を受けています。
『Wizardry』は
だからパーティーに「盗賊」という職業が存在します。
普通に考えて「盗賊」は一般社会で生活できるものなのでしょうか。
もっと単純化すれば「ルパン三世はなぜ捕まらずに日本で暮らしているのか」です。
これに対して明確な理屈をつけられる人は少ないと思います。
ルパン三世なら変装の名手ですから、宿を借りるときはニセの顔でニセのパスポートを使うくらいはやるでしょう。
ではファンタジー世界で盗賊はどうして治安組織に捕まらないで生活できているのでしょうか。
「盗賊ギルドがあるから」というのは理由になりません。
「暴力団があるから」チンピラが警察に捕まらないと言うのと大差ないからです。
「盗賊ギルド」が存在する明確なメリットが為政者や市民の側になければなりません。
「暴力団」は為政者にも市民にもメリットがありませんから、存在意義はないですよね。
異世界において「盗賊ギルド」がなぜ存在するのか。メリットはなにか。
一度よく考えてみてください。
読み手の立場から読み手のために書く
読み手の立場から見て読み手の気持ちに寄り添った文章を書けば、書き手が望む結果が出やすいのです。
対して読み手の立場にも立たず気持ちにも寄り添わない文章を書けば、書き手が望む結果は出にくいと思います。
その最たる例がラブレターです。
ラブレターは書き手が独りよがりな文章を綴って渡しても、相手から良い返事が来ることはまずありません。
読み手の立場に立って、読み手の気持ちに寄り添い、共通の話題にも触れて親近感(シンパシー)を抱くような文章で綴るから、相手から良い返事が返ってくることがあるのです。
もし読み手が「書き手と付き合いたい」と思っていたとすれば、素直に「付き合ってください」と書くだけで結ばれます。
ですがたいていの読み手は書き手の存在をラブレターを受け取った段階で初めて認識するのです。
だから「付き合ってください」とだけ書いても読み手には響きません。
最後に
今回は「読み手が読みたいことを書く」ことについて述べてみました。
まず人気作の分析をして、その要素を取り入れてください。
しかしただ取り入れればいいわけではありません。
あなたの小説の世界観に沿うような取り入れ方をしてください。
なんの考えもなしに盗賊が職業として普通に暮らしている社会を書かないことです。
冒険パーティーに盗賊が必要なのであれば、世の中における盗賊の立ち位置を明確にしましょう。
これだけ読み手の立場から読み手のために書けば、必ず反響が返ってきます。
返ってくるまで何本でも書いて投稿してください。
一度や二度反響が得られなかったからといってそこで執筆を断念するのではあきらめがよすぎます。
もっと悪あがきしましょう。
反響が返ってくるまで粘り強く投稿し続けるのです。
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