214.再考篇:一日に何千字書けますか

 今回は「執筆できる分量」です。

 一回の執筆&投稿で何千字書けるのかで文体も変わってきます。

 六千字書ける人と四千字書ける人では読ませ方が異なるのです。





一日に何千字書けますか


 小説を書いている皆様にお聞きします。

 あなたは「一日に何千字書けますか?」


 本コラムは二千五百から五千字を目安に毎日書いています。土日は他にも書くものがあってそちらは一万二千字ほどですね。私が小説を毎日書くとすれば、一回の投稿にだいたい五千字のシーンは書ける計算になります。もちろん書くことがあらかじめ決まっていれば一日に六千字を超えることも簡単です。書くことを決めるのに時間がかかる。それが私の悪いクセでしょう。

 以上はあくまでも私の話です。私は小説を書くとき毎日五千字ほど書いて投稿することができます。




文体の模索

 では本コラムの読み手である皆様は「一日に何千字」なら毎日投稿できるのでしょうか。

 これを知っておくと、連載するときのシーンの分量を決めることもできますし、それに合わせた文体の確立にもつながります。

 一週間ぶん書きあげてから毎週投稿する手もありますが、小説投稿サイトにおいてはとても目立ちにくい存在になるでしょう。


 できることならストックを持ちながら毎日書いて投稿するペースを身につけるべきです。

 毎日投稿されているから読み手は先が気になって読んでくれるようになります。

 小説投稿サイトに投稿するときどうしても毎日は無理だと思ったら、一週間の投稿作品が少ない『ピクシブ文芸』を主戦場に選んでもよいでしょう。

『小説家になろう』で毎週連載をしても、最悪の場合誰も気づいてくれません。

 書く人の少ないジャンルであればまだなんとかなります。ですが人気の高いファンタジーや恋愛などで勝負しようとするのなら毎日連載にしないと読み手からすぐに見切られてしまうのです。

 ということで以下は毎日連載が当たり前だという前提に立ちます。


 たとえば毎日六千字書ける人と四千字書ける人とでは、小説の書き方が異なってくるのです。

 六千字書ける人はひとシーンに六千字読ませることができるわけですから、より詳細な描写や長いシーンを作ることもできます。

 四千字書ける人はひとシーンは短くなり、テンポのよい展開を畳みかけるような書き方が主体となってくるでしょう。

 あなたが丁寧な描写に向いているのか、テンポよく畳みかける展開に向いているのか。これを知らなければ、「あらすじ」と「箱書き」を綿密に作ったとしても、描ききれなかったり思っていたよりも文字数が足りなくなったりする事態が生じます。

 自分が「一日に何千字」書けるのかを知ることが、あなたの文体を決める最大の要素になるのです。




プロになったら締切がある

 もしあなたが将来的に「紙の書籍」でデビューして商業作家になりたいと思っているのであれば「一日に何千字」書けるのかを今から知っておく必要があります。

 一日に六千字なら原稿用紙十五枚書け、四千字なら十枚書けるということです。

 そして商業作家となれば、出版社の編集さんから「○○月××日までに三百枚の原稿をお願いします」と発注されてそれを受けるところから仕事が始まります。

 そして書き手と編集さんが共同作業で「企画書」を練り上げて「この企画で行きましょう」とGOサインが出るのです。

 合意のない小説を書いても編集さんは受け取りません。

 必ず「企画書」を作り上げてから執筆することになります。

 そして実際に執筆が始まった際、一日に十五枚書ける人は二十日あれば三百枚を書けますが、十枚書ける人は三十日必要だということです。

 二十日や三十日で書けるのならそんなに焦る必要はないな、と思うかもしれません。

 ですが実際の執筆は初稿でそのまま先に進めることがまずないそうです。

 たいてい編集さんが読んで「ここはこうしたほうがいい」とアドバイスをしてきます。

 そこを手直ししてまた編集さんに確認してもらうのです。この往復が何度となく繰り返されます。

 そして最終的に「これで行きましょう」と言ってもらえたらようやく書き手の手から原稿が離れます。

 それでもその後校正さんが誤字脱字や表記の統一の指示をしてくることがあるのです。ですがその手直しにはそれほど時間はかかりません。たいていは校正さんの指示に従えばいいからです。

 編集さんから「原稿を要請され」て最終的に「これで行きます」までにかかる時間がたいてい三か月か四か月になります。

 つまり三百枚を二十日で書ける人ならかなり余裕のある執筆活動ができますけれども、三十日かかる人はギリギリの状態が続くのです。そうなるとストレスがたまって体調を崩し執筆に影響が出ることも考えられます。

 一度スケジュールを破って原稿を落としてしまうと、出版社から寄せられていた信頼が崩れていくことになるのです。

 そうなると「連載は早々に畳んでください」と言われて連載を終え、次シリーズの要請は来なくなります。

 つまり事実上の引退に追い込まれるのです。


 だから商業作家になりたいのなら「一日に何千字」書けるのかをできる限り大きくする必要があります。書くことに専念して土日に一万五千字書くなどのイレギュラーな書き方も合わせてできうるかぎり早く、手元から原稿が離れるようにしましょう。




一日の書ける分量を大きくするには

 では「一日に書ける分量」を大きくするにはどうすればよいのでしょうか。これをすぐに思いつける人は、すでに実行されていると思いますので蛇足かもしれません。


 ですが思いつけない人は「一日に三千字」前後が関の山ではないでしょうか。


「一日にかける分量」を大きくするには「書くべきことを先に決めておく」ことです。

「何を書けばいいのか」を考えながら書くから、途中で何度も筆が止まって少ない分量しか書けなくなります。

 でも書く前から「何を書くか」をすでに決めてあれば、執筆はそれをただ文章にしていくだけなので筆が止まることもないのです。

「書くべきことを先に決めておく」にはどうすればよいでしょうか。

 あなたは通勤や通学の際どのような移動手段を用いていますか。

 電車やバスを用いているのであれば乗車中はいろんなことができますよね。

 多くの方はその時間でスマートフォンでSNSやニュースサイトをチェックするものです。

 ですが小説を本格的に書こうと思っていらっしゃるのなら「今日帰ってから書くぶんの話の展開をどうするか」を考えましょう。

 そしてスマートフォンや携帯電話のメール機能で、また手帳やネタ帳に会話文を書いて話の流れを決めていくのです。


 通勤通学が歩きだったり自転車だったりバイクや自動車だったりするのなら、移動中は周囲に注意を払って事故を起こさないように気をつけましょう。決して小説のことを考えて注意散漫にならないようにしてください。

 電車やバスで移動中以外にもスキマ時間を利用して「話の流れ」を考えていきます。

 学生なら一限目と二限目の間とかお昼休みとかスキマ時間はかなりあるのでそれを最大限に利用してください。

 会社員なら八十分仕事をしたら休憩を十分とるようにしてみましょう。

 「仕事量が多いので休憩をとる暇はない」とおっしゃる方がいます。

 ですが私の経験から言えば「休憩をせずに働き続ける」よりも「適度に休憩を入れた」ほうが仕事の効率ははるかによくなります。

 あなたは仕事中にコーヒーや紅茶を飲みませんか。飲んでいる間は仕事の手を止めて「小説の展開」を考えてみましょう。

 仕事とは別のことを考えることになりますので、気分転換にもなって頭がリフレッシュされます。

 結果として仕事がすこぶる捗るようになるのです。

 仕事人間になってしまうと小説を書く時間がとれなくなってしまいます。

 仕事と趣味を両立している人が結果的に出世も早くなり、さらに仕事と趣味を充実させることができるのです。

 スキマ時間を有効に活用してみましょう。





最後に

 今回は「一日に何千字書けますか」と題して「どうすれば一日に書ける分量を増やせるか」について述べてみました。

 書くべきことを考えながら書くから少量しか書けないのです。

 あらかじめ書くことを考えてあって先に決まっていれば後はそれに従って文章を書くことだけに専念できます。

 効率の差は実に二、三倍ほどにもなるのです。

 あなたも「まず話の展開をあらかじめ決めておく」ようにしてみませんか。



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