144.応用篇:企画を立てる

 今回は「企画を立てる」ことです。

 人気のある二次創作がなぜ「場当たり的」な展開でもランキングの上位にいるのでしょうか。





企画を立てる


 私は基本的に「あらすじ」を創ってから「プロット」を創ります。

 長編小説を書くときは、まず「あらすじ」で面白さが担保されている必要があるからです。

 そうしないとその後のプロットや執筆がいかに巧みでも面白い作品にはならなりません。

 だから皆様にも「あらすじを創ってね」とお願いしているわけですが、この「あらすじ」を創れない人が結構いるみたいなのです。


 とくに『pixiv小説』や『ピクシブ文芸』でランキング入りしている作品を読んでいると、結構「場当たり的」な展開をしている小説が目につきます。


 まぁコラムを書いている私も「場当たり的」なので説得力はありませんが。

 でも私はこの「場当たり的」な創作術には否定的です。

 なぜ人気のある作品の二次創作が「場当たり的」な連載であっても人気が出るのでしょうか。





企画で読み手の心をつかむ

 「場当たり的」な連載なのになぜか読み手には支持される。

 そんな小説に共通しているのは「誰が何をする話」なのかが明確に定まっていている点です。


 「誰が」は物語に登場するメインキャラクターです。

 主人公ひとりの場合もありますし、ヒーロー/ヒロインやライバルや「対になる存在」を含む場合もあります。

 「彼ら彼女らが何をする話なのか」が明確なら読み手は期待してあなたの小説を閲覧してくれるのです。


 二次創作がメインの『pixiv小説』の多くは「シリーズ名」で端的に示されています。

 一次創作オンリーの『小説家になろう』でもタイトルで示している作品がいくつか見られるのです。


 近年のライトノベルにもこのような「誰々が何をする話」という「企画」がタイトルになっているものがいくつもあります。


 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は「俺」つまり男性主人公に関係する「青春ラブコメはまちがっている」という形で明確ですよね。


 丸戸史明氏『冴えない彼女の育てかた』は「誰が」が省かれていますが、省かれる場合はたいてい「主人公が」という場合が多いです。

 そして主人公が「冴えない彼女」加藤恵を誘って同人ゲームを作る過程で「人間関係が成長していく」という意味がわかりやすいと思います。


 大森藤ノ氏『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』も「誰が」が省かれていますが初見でも多くの読み手は「主人公が」なんだろうなと思うはずです。

 主人公が「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」というわけですから、これも「企画」が全面に出たタイトルだと思います。


 伏瀬氏『転生したらスライムだった件』も「主人公が」が省かれたと見て「転生したらスライムだった」という「企画」を表しているのです。


 このようにライトノベルでは「誰が何をする話」という「企画」がわかりやすいのがポイントです。





小説投稿サイトで読み手を増やすには

 小説投稿サイトで読み手を惹きつけて「閲覧数を増やしたい」「評価やいいねを増やしたい」「ブックマークを増やしたい」と思えばタイトルが「誰が何をする話」という「企画」を明確に指し示しているもののほうが有利です。


 『小説家になろう』なら検索した際に表示されるあらすじは500字です。

 タイトルに「企画」を入れなくてもキャプションでじゅうぶんに「企画」や「あらすじ」を示すことができます。

 ジャンルと「キーワード」を組み合わせて検索をかけ、表示された作品の中から、「タイトル」や「あらすじ」に記された「企画」から読みたくなるような小説を選び出します。

 「タイトル」や「あらすじ」で「企画」をしっかりと盛り込んでおけば、後は読み手の感性に引っかかる「タイトル」や「あらすじ」で、読む時間を考慮して閲覧されるのです。


 とくに『pixiv小説』は検索した際に表示されるキャプションが100字もありません。

 よって「タイトル」で「企画」を示していかにして読み手を釣れるかが勝負になります。

 まず「需要のある二次創作」であることが重要です。


 「タグ」にオリジナル作品のタイトルをつけたり、登場人物の名前を入れたり、カップリングを入れたりします。

 そうして検索された作品の中からは、「タイトル」に入れる「企画」勝負になるのです。

 「キャプション」が少ないので致し方ないところかもしれません。

 いずれの場合でも、検索結果画面でいかにして読み手に小説の「企画」を読ませるかが重要になります。





奇抜な企画を創る

 「企画」が大切なのはわかりました。

 では実際に「企画」を考えてみましょう。


 まず「誰が」の部分ですが基本的に主人公とそれに関係する人たちが入ります。

 コラムNo.142「感情移入できる主人公とは」でお話ししたライトノベルの鉄則でいえば「共感」「憧れ」「親しみ」を持てる主人公(たち)ということになるでしょう。

 ではそんな主人公(たち)は「何をする」と面白くなると思いますか。


 ゲームでエニックス(現スクウェア・エニックス)『DRAGON QUEST』なら「勇者ロトの血筋である主人公が竜王を倒して真の勇者になる」お話ですよね。


 近年大ヒットを飛ばしている渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』なら「ひねくれ者の比企谷八幡が強制的に奉仕部へ入部させられる」お話になります。

 まず主人公がひねくれ者としてひとひねりされているのです。

 そして「強制的に奉仕部へ入部させられる」ことで「ひねくれ者だから、部活でどんなことが起こるんだろう」と読み手に先々の展開を期待させます。


 「企画」は意外性があるほうがよく、奇抜であればたとえ文章力が拙くても「面白い」「楽しい」小説になる可能性が高まるのです。

 ただ意外性がありすぎる、奇抜というより突飛すぎる「企画」だと失敗しやすくなります。

 書き手の筆力がじゅうぶんにあれば暴れ馬を乗りこなせますが、初級者が手を出すと落馬するのが関の山です。



 ではどの程度の意外性がよいのでしょうか。

 『DRAGON QUEST』なら「勇者ロトの血筋である主人公が竜王を倒しに行って返り討ちにあった」とか「勇者ロトの血筋である主人公が竜王を倒しに行ったらラスボスが大魔王だった」とかいうのは意外性がありますよね。

 普通の物語なら主人公である勇者が「対になる存在」である竜王に負けるわけがないのです。

 でもゲームだから負けることもあります。

 まぁ負けたらゲームオーバーですよね。「ふっかつのじゅもん」で竜王退治をやり直すことになります。

 また「対になる存在」だった竜王にはさらなる黒幕・大魔王がいてそれとも戦わなければならなくなるというのも現在のゲームとして当たり前でも当時は意外性があったのでしょう。


 ゲームのファルコム(現日本ファルコム)『Ys』『Ys II』を例にとれば『Ys』のラスボスであるダルク・ファクトを倒したら『Ys II』へと話は続きます。

 そこでダルク・ファクトを操っていた魔道士ダレスと魔王ダームが登場してさらに新たな物語が紡がれることになったのです。

 私は当時この展開にかなり衝撃を受けました。

 しかも『Ys』よりも『Ys II』のほうがボリュームもあって魔法も使えるようになり、物語の流れも重視して作られていたため「『Ys』もよかったけど『Ys II』もかなり楽しめるなぁ」という感想を持ちました。


 このようにそのジャンルで定番となっている「企画」のパターンに意外性を持ち込むことで、物語はさらに面白く楽しくなるのです。





どのくらいの意外性がいいのか

 どれくらいの意外性を持ち込めばいいかは、創作過程では判断しかねます。

 だから意外性の種類を出せるだけ出してみてください。

 初めのうちに出てきた意外性はたいてい誰かが思いついて作品にしています。

 さらにネタ出しをしていくとあまり思いつかれていない意外性が出てくるようになるのです。

 もっと無理してネタを出していくと「誰も思いつかないけど、あまりに意外性が強すぎる」ネタが出てきます。

 こうなるとさすがに行きすぎなので、このへんでネタ出しを終えてストックの真ん中あたりを中心に検討していくと、程よい意外性が得られるでしょう。





企画をあらすじに

 「企画」が出来て「これなら自分でも読んでみたくなる作品になる」と思えたなら、そこから「あらすじ」を書いてみましょう。

 どんな「エピソード」や「シーン」を加えていって「主人公がどうなりたい」から「主人公がどうなった」までを穴埋めしていくのです。


 ここから先は「あらすじ」と「プロット」について述べた回を参考にしていただければと存じます。

(コラムNo.17「あらすじを創る」、コラムNo.23「あらすじの復習」、コラムNo.40「あらすじに迷ったら起承転結に」、コラムNo.46「中級篇:箱書きを書く」、コラムNo.73「コラム実践篇:箱書きの書き方」など)。





最後に

 今回は「企画を立てる」ことについて述べてみました。


 「あらすじ」を書こうと思ってもうまく書けない。

 そんなときは「主人公がどうなりたい」から始まって「主人公がどうなった」という「あらすじ」の雛形を用います。


 それでもアイデアが出てこないのなら「誰が何をする話」なのかまで矮小化して考えるのです。


 あなたはどんなキャラクターを読み手に読ませたいのでしょうか。

 どんな出来事を読ませたいのでしょうか。

 どんな結末を読ませたいのでしょうか。

 詰まるところ、それがあなたの書く小説で最大のアピールポイントになるのです。


 もし将来「紙の書籍化」された際、あなたの小説は担当編集さんと二人三脚で作ることになるようです。

 そのときは「企画」を提案して編集者が大衆にウケるかウケないかを判断して「ここを修正できないか」といったアイデアを出してきます。

 それも「企画」段階から一緒に煮詰められればムダが少なくなるのです。


「あらすじ」段階で「ここをああしろこうしろ」と言われれば小手先の変更になってしまって「筋の通らない物語」になりかねません。


 だから編集さんへ先に「企画」を提示しておき「これで行きましょう」といわれた「企画」を「あらすじ」に起こしていったほうが効率がいいのです。



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